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その後に何が起きたのか、私は知らない。
1週間ほどラボを休んだ私は、教授と谷川先生が揃って大学を去ること、ラボに所属していた私たち学生は、近い研究分野を扱っているラボに統合されることを、人づてに聞いた。
翌週、大学に行くと、教授らは既に去った後だった。
私たち学生は新しいラボにすぐに馴染んで、それが日常になっていった。
それからというもの、真野さんのことが頭から離れなくなった。
いつもその姿を探した。
見つけたら話しかけるチャンスを伺った。
何が好きなんだろうとか、どんな顔で笑うんだろうとか、そんなことばかり考えた。
でも、私の想いに反比例するように、真野さんは私を鬱陶しがるようになった。
元から塩対応だったけど、それまで以上に「うるさい」とか「知るか」とか、突き放す言葉を口にして、私を遠ざけようとするようになった。
だから私は片想いを拗らせたまま、1年以上、真野さんをただ見つめているだけだった。
見てるだけでいい。
そう思っていたのに。
春休みが明けてこの1週間、真野さんの態度はすっかり軟化した。
元々そんなに愛想がいい人ではないから、話が弾むようなことはないけど、近づいても鬱陶しがられなくて、話しかけても無視されなくて、新人歓迎会にも参加するし、まるで真野さんじゃないみたいだった。
そういうわけで、私は浮かれてしまったのだ。
酔った勢いで告白するくらいに。
まさか真野さんから『俺も、橋本さんのこと、ずっと好きだった』なんて、返ってくるとは思わなかった。




