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真野さんを好きになったのは、ラボに入って半年くらい経った頃だった。
真野さんは当時、同じラボの博士課程1年目だった。
暗くてとっつきにくい先輩。
それが、私の真野さんに対する第一印象だった。
研究テーマも被っていなかったし、真野さんはラボの飲み会にも一切参加しなかったから、話す機会はほとんどなかった。
こちらからがんばって話しかけても、「ああ」とか「いや」で済まされて、会話にならなかった。
だから、私は真野さんのことが、どちらかというと苦手だった。
それがどうして好きになったかというと、助けてくれたからだった。
当時、私は本郷という1学年上の先輩と付き合っていた。
本郷とはサークルで知り合って、顔がタイプだった。
今思えば、独占欲の強い男だったのだと思う。私が自分のいるラボに入るものだと思っていたようで、私が別のラボを選んだ時、ネチネチと嫌味を言った。
そんな人だったから、ラボに入ってしばらくした頃、私が准教授と浮気しているのではないかと疑い出した。
当時の准教授は、谷川先生という40代前半の男だった。
素晴らしい研究成果をいくつも発表していて、私は谷川先生のことを、研究者として純粋に尊敬していた。
確かに、ボディタッチの多い人だなとは思っていた。でも、単に他人との距離感が近い人なのだろうくらいに考えていた。
2人だけで飲みに行くこともあったけど、谷川先生から直接指導を受けていたこともあって、特に変だとは思っていなかった。
だから、本郷に浮気を疑われたのが悲しくて、必死に否定したけど、信じてもらえなかった。




