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目を覚ました時、状況が一瞬理解できなかった。
寝返りを打ったら真野さんの裸の背中が見えて、そこで全てを思いだした。
真野さんが私に気づいてこちらを向いたのと、私が布団を胸に貼り付けながら身を起こしたのは、ほとんど同時だった。
羞恥心がとめどもなく湧き起こって、できることならこの場から逃げ出したい。
「あの、私……」
真野さんは、無言のまま、感情を見せない表情をしている。
「私、いつもは、こんなんじゃないです」
泣きたくなった。
今度こそ絶対、嫌われた。淫乱だと思われた。
「真野さんの声を聞いた途端、その……」
「ムラムラしたか」
私が言い淀んだのを引き取るように、真野さんがやっと口を開く。
頷くのも恥ずかしくて目を伏せた。
「今は?」
真野さんもベッドの上で起き上がって、私に尋ねてきた。
「今は、俺の声を聞いてもムラムラしないのか」
小さく頷く。
こんな状況なのに、真野さんの声がたくさん聞けて嬉しいと思ってしまう。
いつもは寡黙で、必要最低限のことしか喋ってくれないから。
「なるほど。一回ヤったら落ち着くんだな」
真野さんは独り言のようにそう呟いた。
「え?」
「何でもない。シャワー借りるぞ」
「あ、はい」
真野さんが洗面所に行った後、急いで服を身につける。
床に散らばっている真野さんの服を拾い集めて、洗面所の前に置いた。
ベッドに腰掛けて、ひとつ大きく息をつく。
そこで私は、真野さん以外の男の言葉が聞き取れなくなったことを思い出した。途端に、現実に引き戻される。
大学を辞めなければいけないだろうか、とか。
この先ずっとこのままだったらどうしよう、とか。
真野さんに迷惑をかけたくない、とか。




