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出会い

「鍵雑魚、そっちいった。」

広い草地が見下ろせる小高い丘に到着した時、チャットが飛んできた。

「了解、もう着いてまっす。」

私は軽快に答えた。こういうチャットをしてくれるのは初めてで、一瞬その気遣いに驚いたが、やる事は変わらない。

空が見えていてこのダンジョンは気持ちがいい。風に草が揺れる。自分の長い髪も揺れている。グラフィックの細かさに感心する。

霊狐の洞窟は、綺麗な清流が流れる谷の奥にある。滝の中に飛び込むとダンジョンマップに切り替わり、細長い洞窟を進む。敵の居ない静かな道を少し進むと、いきなり開けた草地が広がる。中央の広場から、四方に迷路の様に入り組んだ道が続いている。

「道中の処理はやw」

フレンドのタキさんが笑った。

鍵雑魚とは、ダンジョン内の、ボスへ通じる扉を開ける鍵を持っているモンスターだ。パーティーメンバーは6人。本来は6人で同じルートを進行し、このモンスターを倒してから鍵を取ってボスの待つ部屋へと進行するのだが、鍵雑魚が居る場所とボスの居る部屋は逆方向だ。しかも所々に敵が沸くので、倒しながら進むと時間もかかる。

ボスまでの行程を最短時間で進む為に、本陣は正規ルートの雑魚を倒しながら進行し、私は弓を使えるクレフ(盗賊)という職業で、別行動をしながら進行中。単独で鍵雑魚がいる場所までに続く道の雑魚処理しながら進み、「鍵」を取りに行っている最中だった。といっても盗賊固有のハイディングスキルを駆使してほぼ倒さず逃げ、逃げ切れない所だけ倒す。先人達が試行錯誤して最適化した方法である。なんといったってこの鍵がないと、ボスにはたどり着けない。責任重大な役割だ。

「きた」

鹿のような形をした、白いモンスターが走ってくる。雑魚モンスターにはマップ上に固定で居て、人が近づくと動くタイプと、うろうろと決まったコースを巡回しているものがいる。今回の鍵雑魚は後者だ。正式名称はハクロク。光の尾を引いて走る姿は優雅で綺麗だ。その見た目と反して、攻撃は痛いのだが。

古城の跡地に残った石塀に隠れるようにして弓を引き絞る。万が一追いつかれた時はこの塀を盾にして逃げる。

相手は近接の物理型。こちらに到着する前にHPを削りきる。削り切れなければ単独で、回復職の居ない状況ではこちらがやられる。スピードも速いので、射的の精度も求められるが、もう何度もこなして来た作業だ。私は何回やってもこの瞬間が好きだ。コマンドを入力すると、光のような速さで金色に光る矢が飛んで行った。

全弾命中。この爽快感がたまらない。

ハクロクの首に下がっていた鎖が切れて、鍵が飛んだ。私は小高い丘から勢いよく飛び降りて、光る鍵に触れた。

「鍵回収完了、そっち向かうね~」

私は踵を返し、仲間達の元へ向かった。


「お疲れ様ー。」

「いやー安定してたね。」

「素材いっぱい出たし、ほくほく。」

無事ボス戦を終えて、今回一緒にパーティーを組んだ仲間達と、討伐後の団欒。この時間はとても楽しい。達成感もあるし、同じ喜びを共有出来る。

「ねえねえ、フレンドいい?」

今回は、もともと私のフレンドであるタキさんが集めたメンバーだったので、私とフレンドになっていなかったライムさんからお誘いが来た。

「ぜひぜひ!ありがと~!」

女フォーマ(戦士)のライムさん、火力と防御力のバランスがとれていてる。そして何よりも、周りを見て攻撃を合わせるのがとても上手だった。ライムさんも上手なのだが、それにも増して存在感があった人がもう1人。全身黒衣のフォーマ(戦士)。名前はFUMI。戦士の固有スキルでボスの攻撃をカットするのがとても上手だった。これだけ上手なら、その中二病丸出しの出で立ちも様になる。戦士はステータスの為に私も選択しているので一応出来る職業だが、タイミングがシビアだから私はやらない。上手すぎて、自分からフレンドに誘うのは気が引けた。普通は壁をするだけで手いっぱいのはずのボスで、あれだけ、ダメージが稼げるものだろうか。そんな風に戦っている人を見るのは初めてだった。ちらっと装備も覗いたが、パラメータがすごい。装備の完成度がえぐかった。私もこんな風に強くなりたいな。タキさんのフレンドなら、またいつか組めるだろうか…。

「よかったらまたこのメンバーで行こう!」

「ぜひぜひ。」

「私も声かけるねー。」

「ありがとー!んじゃ解散!」

タキさんが仕切って、このパーティーはお開きになった。タキさんは回復職の僧侶で参加していた。タキさんとの付き合いもだいぶ長くなる。同じギルド所属で、魔法職や回復職などの後衛を好んでやるので、PTに欠かせない存在としてもありがたい。レベルが同じという事もあって、ここの所ほぼ毎日遊んでいるのではないだろうか。所謂コミュ力も高いので、ギルド以外のフレンドも多く、いつもPTメンバーをさくっと集めてくれる。

「いつもありがとねー。」

私はタキさんに個人的にフレンドチャットを送った。

「こちらこそー。合流する時、さとーが雑魚引っかけてて笑ったw」

「うるさいなーあんなとこに残ってると思わなかったんだもんw」

「きゃー!とか言いながらw雑魚引き連れてパーティーに突っ込んできたのおもろかったw」

「鍵守るのに必死だよ!」

「ふーみんとライムちゃんがが雑魚キャッチしてくれて良かったなw」

「まじで助かったwあの二人上手すぎ!」

「二人とも良い人でしょー」

「うん!どこであんな良い人達捕まえたの?」

「俺のコミュ力の賜物だよな~」

「それはほんとそうw」

「え、どしたん?さとーいつになく素直じゃん?」

「はい、今の無し!」

タキさんとのやりとりは楽しい。パーティーが上手くいかず討伐出来なくても怒らず前向きだし、もっとこうしようとアドバイスもくれる。何よりこの軽いノリに救われる。普段は忙しい会社員として働く毎日の中で、何も考えずにただ笑える時間は貴重だ。

「で、次何行く?」

時計の針はすでに24:32を回るところ。こっからもう1PTとなると、軽く1時は超えてくる。そして明日も朝から仕事だが・・・

「白亜地区のフィールドボスの素材が欲しいんだよなー・・・なんて」

「また難しい事いうねえー」

「新しい弓を作りたくてですね・・・」

「おっけー発で仕留めるぞ!メンバー集めるわ」

「やったー!さっすがタキにいさん」

「にいさん言うのやめてww」

欲求に負ける毎日。こうして、明日も寝不足確定である。



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