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雪山登山

「寒いねー」

「来週雪降るらしいじゃん?」

「うわ、絶対電車止まるやつじゃん」

「金決なのに新しい冬コス作っちゃっいましたw」

「あ!新しく出たやつ?あれ可愛いよね!」

ギルドでは季節の話題で盛り上がっていた。ギルドチャットが盛り上がると、それだけで楽しい。結構チャットでは発言する方なので、みんなで雑談をしていると、

「よし、じゃあ雪山行こうか」

Soraさんが提案した。

「ええー、今の流れで寒そうなフィールドボス選ぶ!?」

思わずツッコミを入れると、

「はい、さとー拉致決定」

「!?」

Soraさんの強引なお誘い。でもSoraさんが前衛して、自分が回復をすれば、他4人はどんなメンバーが来てもある程度は形になるだろう。他4人が好きな職も選べるようになる。

雪山というのは、以前イベントがあった青天城がある場所よりも、更に北側のマップ全体の事を指し、雪山を登るとはその中でも、克雪街道というダンジョンにいるボスを討伐しに行こうという事だ。経験値が美味しいボスがいる。

「@4いない~?職何でもいいよ」

「じゃあ行きたいでーす!」

「ノ」

「ノ」は手を挙げる事を表した簡単なアスキーアートだ。大体ボスの難易度は90代クラス。80代がいてもまあなんとかなりそう。Kaiさんは99、サクラコさんは85、その2人が手を挙げた。引き続きSoraさんが募集を続ける。

「@2」

後二人いないか、Soraさんが探す。

「今職人中で行けない~><」

「自分もPT中だ」

「行きたい人いなければ自分も行くよ~」

枠を他メンバーに譲っていたタキさんも手を挙げた。これで後1人は誰が来ても大丈夫だろう。

「まだレベル77だけど、行ってみてもいい?」

最近レベル上げを頑張っている、ヤマトさんも手を挙げた。人魚クエ以来、久々に組む。

「おkおk、他いなさそうなら〆とく~」

Soraさんが募集を締め切り、パーティーを飛ばしてくれた。メンバーが揃い、克雪街道のワープポイントに集まる。

「ヤマト初だよね?」

「です!」

「んじゃあ雑魚集める数少なめに行こう」

「はーい」

こうして改めて見ると、SoraさんのチャットってFUMIさんと似ているかも。ふわふわの女の子キャラなのに、指示が的確で淡々としている。つくづく良いリーダーに恵まれたなあと思う。

「タキ、召喚でおいで」

「うぃっすー」

タキさんが召喚士に転職した。

「お、サクラコ装備頑張ってるじゃん~」

いつの間にチェックしたのか、Soraさんが褒める。私もステータスを見てみたが、本当に結構良い装備を着ていた。金決といいながら、このクラスの装備が揃えられるのは、職人を頑張っているのだろう。

「えへへ、レベルも早く上げなきゃなんですどね」

「よし、がっつり経験値食べよう!」

タキさんが茶々を入れた。

「わーい」

「魔法職好きだよね?」

「はい!」

「じゃあサクラコ魔法で、ヤマトは戦士ね」

Soraさん仕切りでどんどん職が決まる。メンバーの出来る職や好みをしっかり把握していて、さすがギルドマスターって感じだ。

「カイは戦士?」

「うん」

「おk-じゃあ私重騎士でさとーは僧侶」

「はーい」

「雪山は経験値美味しいし、レベル上げしたい子いたら、このまままた後で別Dに範囲狩り行こうか」

経験値が美味しいダンジョンはいくつかある。素材だけでなく、こういうダンジョンでレベル上げをするのも、他人と組まないと出来ない事なので、ギルドに入る醍醐味かもしれない。

「お、自分も行きたいです~」

「わーい行きたい」

ヤマトさんとサクラコさんが元気に答えた。サクラコさんは2習慣前にうちのギルドに入って来た子で、新参ながらこの明るい感じのチャットであっという間にギルドに馴染んだ。特にタキさんに良く付いて回っているようで、ギルドチャットでもよくお喋りしている。

「メンバー足りなかったら俺も行くよ~」

タキさんがSoraさんのチャットに答えた。タキさんのレベル的には旨味が少ないだろうに、本当、タキさんは面倒見がいい。だが、この面倒見の良さが、後々の火種になるとは、この時は誰も予想もしなかった。

雪山登山が始った。集める数を少なくしても、火力が申し分ないのであっという間にボス前に到着。

「ヤマト、そこでカット」

「はい!」

「ボスの足元で雪ぐるぐるし始めたらスキルのボタン押すといいよ」

「了解っす!」

Soraさんの前衛指導は、私が見ていても凄く分かりやすくて参考になる。私はHPや防御力を上げる為に戦士のスキルも選択しているが、普段盗賊(中衛)か僧侶(後衛)しかしない。同じ動きをする事はないが、前衛がどういう動きをしているか分かると、後衛職はそれに合わせて動く事が出来る。

「そこは自己バフ優先して」

「はい!」

「召喚CT溜まったよ~」

「雷系」

「うぃっすーセトちゃんかもーん」

タキさんが雷系の召喚獣、セトを呼んだ。バリバリとしたエフェクトが辺りに散る。長い杖を口に咥えた黒い犬の様な召喚獣が現れる。

「セトちゃんかわいいい」

「サクラコちゃん犬好き?」

「好きです!犬か猫なら犬派です!」

パーティーが安定していたお陰で、チャットする余裕もあった。セトの火力に合わせて、タキさんとサクラコさんの魔法が炸裂する。

「タキ、ストームバフかけといて!」

「アイアイサー、ボス!」

Soraさんの指示にタキさんが応えた。

「ストーム半減してくれるのありがたいですね~」

「ヤマトも召喚のレベル上げたら出来るようになるよ!」

「今のうちにスキル買うお金貯めとかなきゃですねw」

「そうそうw」

 Kaiさんは黙々と敵にダメージを稼いでいた。いつもはもっと賑やかな人なのだが、今日は他にもっと賑やかな二人がいるからか、あまりチャットが目立たない。元々聞き上手なのだろう。Soraさんと同じ聖獣族で、男性キャラにしては可愛い作りをしている。青みがかった薄紫の髪色から続く大きめの猫耳や、殴る度に揺れる尻尾が可愛い。私としては美男子を拝めて目が幸せである。Soraさんよりレベルは低いが、Kaiさんも大概上手いなと思う。装備作りにも熱心なので、今度100にレベルアップしたら、冥界ツアーに誘ってみようかな。ギルドだけで行こうとすると、まだ100代の人口が少ないので、なかなかメンツが揃わないのがネックだ。

「カイ殴りすぎwタゲ取られるw」

「それはソラの仕事でしょwちゃんと維持してーw」

「生意気め!」

SoraさんとKaiさんは仲が良い。確かギルドを一緒に立ち上げた時からの付き合いだと聞いた事がある。

一定以上のダメージを与えると、たくさんダメージを与えた人にターゲットが移る事がある。重騎士には、そのターゲットを自分に戻すスキルがあるので、なるべく硬い重騎士が一人でダメージを負い続けるのが理想だ。範囲回復の呪文は詠唱時間が単体の回復魔法よりも長いので、なるべく単体回復の呪文を使いたいからだ。

「タゲ取り合うの仲良しかw」

タキさんがつっこんだ。

「やったー!撃破~!」

サクラコさんが楽しそうに叫んだ。ボスを倒して、雪山登頂は無事完了した。

「まあまあ素材出たね」

「経験値も結構入るし、この素材のダンジョンお手頃よね~」

素材を分配して、一応中締め。

 丁度FUMIさんからフレンドチャットが来たので、私はここまででパーティーを抜けようと思った。

「お付き合いありがと~、このままレベル上げ行く人は残って~」

「ごめん、フレから誘われたから抜けるねー」

「はいはい、さとーありがと~」

「じゃあ@1誰かいないか探してみるね」

タキさんがメンバー集めを引き受けてくれたので、安心して抜けられる。

「ありがとうございました!お疲れさまー!」

私はそう言ってパーティーを抜けた。名残惜しい気もしたが、気持ちはFUMIさんに向かっていた。


FUMIさんからのチャットはレアなモンスターが沸いているのを見つけたから、狩りに来ないかとの事だった。場所も雪山から少し南に降りた辺りだったので、すぐに駆け付けられた。兎の様な形の可愛らしいモンスターでスクリーンショットを撮ったりして遊んだ

「やばい可愛い!」

「時々見かけるんだけどすぐ他の人に倒されるんだよなーw」

「だってこれレアコス落とすやつでしょ?」

「あーそうなんだ、なるほどね」

珍しいが強いモンスターではない為、さくっと倒すと、うさ耳のコスチュームをドロップした。

「これこれー!可愛い~!」

「うさ耳コス作ってよw」

「飛霊だと頭に羽生えてるけど似合うかなー?w」

「見てみたいw」

「私もふーみんがうさ耳つけてるの見たいw」

「いあw絶対に合わんだろwww」

「www」

そんな感じでチャットを楽しみながら都まで一緒に帰っていると、なんだかFUMIさんの挙動がおかしい。進んだり、止まったりを繰り返している。

「なんか動作重いかも」

「ああ~確かに今日ちょっと挙動おかしいかも」

「再起動してくる」

「うん、じゃあここで待ってるね」

「ごめんね、ちょっと待ってて」

「はーい」

FUMIさんの回線が重いなんて珍しい。私は近くの木陰に座って、ぼんやりと空を眺めていた。ここならモンスターも来ないし安全だ。あー、リアルでもこれくらいのんびりと日向ぼっこがしたい。まあ、まだ寒いから外に出るのも億劫だけど・・・。そんな事を考えながらFUMIさんを待っていると、レベル上げのお手伝いに行ったタキさんからフレンドチャットが飛んできた。

「ねえやばいwギスったw」

ギスった!?ギスギスとして空気が重たくなってしまった事を差す言葉だが、タキさん程のコミュ力の持ち主が、なぜ?それもSoraさんも居て、何度もPTを組んでいるギルドのフレンド同士で行くのに、そんなにギスギスする事はあまり無い。何があったのか、私には想像もつかなかった。

「え、何で?!」

どうやらパーティー中に何かトラブルがあった様で、タキさんから泣き言が飛んでくる。

「超空気重いよwどうしようww」

「ちょ、詳しく!」

フレンド欄を確認したが、まだタキさん達もパーティー中だった。

「うんw後で」

今はあまりチャットする余裕はないだろう。そう思っての配慮だったのだが、ほぼ同じタイミングでライムさんからもチャットが飛んできた。

「さとちゃん・・・後でお話し聞いてくれる・・・?」

「え、何々どうしたの?!」

「また後でタイミング合いそうな時にチャットするね」

「うん!いつでもいいから!待ってるね~」

とりあえず返信して、ライムさんの所在も確認すると、どうやら私が抜けた後のPTに合流したようだった。やはり、あのパーティーで何か問題が起きたようだ。

 丁度FUMIさんが再起動から戻って来た。すぐに同情のお誘いが来る。黒トラに揺られながら、波乱の予感がした。




2週間に1回、新しいコスチュームが追加される。男女2タイプあるが、キャラクターの性別を問わず着用出来る。パーツは防具と同じで、頭、上半身、下半身、腕、靴、アクセサリーの6箇所に分かれている。服のシリーズによっては、例えばワンピースの場合は下半身パーツがないものもある。

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