表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/32

王宮裏西庭園

今日は定時で上がれたので、晩御飯は丁寧に作った。料理は嫌いではないが、一人分作るのが面倒くさい。根がズボラなのだ。そんなあなたでも大丈夫!題して、さとーさんの簡単クッキング!まずは、トマトと塩昆布を和えてマリネにした。この和風マリネは好物なので、作り置きにする。メインは卵黄に絡めて食べる鶏つくね。こちらはスーパーで丸めてあるミンチを買って来ました!私がやったのは、フライパンでミンチを焼いて、卵黄と卵白を分けただけ。余った卵白はレンチンして、明日の朝、サラダに乗せて食べようっと。ご飯は雑穀を入れて軽めにして、ブロッコリーのきんぴらを追加で作る。物珍しくて買ったアウトドアスパイスで炒めたら、めちゃくちゃ美味しく出来た。

お風呂にゆっくり浸かって半身浴。最近ジムに通うようになったからか、発汗するまでの時間が短くなって来たように思う。お腹のぷよぷよは全然落ちないな~筋トレも良いけど、もっと有酸素運動に切替ようかな。お風呂を上がってから、たっぷりお肌を保湿。冬の乾燥でかさつく顔に、ちょっぴりお高いマスクを貼った。もっともちもちつるつるの肌になればいいのに。乳液を変えてみようかな。それともスチーマーを買って自分に課金するか・・・先輩がおすすめしていたけど、悩ましい。

 お次はYoutubeでヨガ動画を見ながら、丁寧にストレッチした。最近のYoutubeは何でも教えてくれる。お気に入りはCocco先生のヨガ教室だ。10分から出来るお手軽なものもあれば、結構ハードなポーズを教えてくれる動画もある。他にもハンドメイドやレシピ紹介動画等、おすすめされるままに見ているとあっという間に時間が経つ。一人で過ごす時間が苦でない。むしろ好きだ。仕事から帰って来て、一刻も早くゲームをしたいが、こういう風に自分に時間をかけるのも至福の時だと思う。

 最近ハマっているのは、先程も話題に挙げたジム通いだ。先月、初回の体験コースに行ってみたら、思いのほか筋肉痛になってしまった。でもこの痛みが、筋肉に届いている感じがして嬉しい。綺麗なインストラクターのおねえさんに導かれるまま入会し、週2~3のペースで通っている。今までが何もしていなさすぎだったので、体重もすこーーーしずつだけど順調に落ちて来て、筋トレが楽しくなってきた。明日も早く上がれたら、会社帰りに寄りたい。私は元来身体を動かすのが好きだ。高校の時に、陸上競技でしごかれた。朝からランニングとか憧れるけど、早起きは苦手。インドアな趣味も多いが、身体を動かした後のスッキリ感が好き。最近は引きこもりのインドアゲーマーだが・・・。そういえばインドアな趣味の方では、読みたくて買った小説をまだ読んでない。読書も好き。最近はお手軽なWeb小説ばかり読んでいるが、学生の時から好きだった作者の新刊は、今でも紙で購入している。あ~久々に近所のカフェで、美味しいコーヒーを飲みながらゆっくり読書したいな。自分一人の為に贅沢に時間を使っているのに、時間は足りない。やりたい事は他にもたくさんあるのに。

「有給取っちゃおうかなー・・・」

 丈夫が取り柄の私は特に風邪をひく事もなく、有給は順調に溜まっていく一方だ。でも結局休みを取ったら、そういった丁寧な生活そっちのけで、ゲームで1日瞑れるだろう。それはそれで最高だし、私にはそういう時間も必要だと思うが、何となく今はどこか外へ遊びに行きたい気分だった。あーあ、こんな時、彼氏の一人でもいれば一緒に遊ぶ相手もいるのに、悲しいかな一人。一人遊びも好きだが、何だか「誰かと一緒に居たいスイッチ」が入ってしまった。誰かと一緒に居たい。くっつきたい。最近寒いから、人肌が恋しくなってしまった。

「この間の領土戦、凄かったなー・・・」

ごろりとベッドに転がると、先日の領土戦が思い起こされた。かっこよかった。今でも思い出すと胸が熱くなる。皆で戦場を駆け回って、協力して戦って、勝利する姿。そしてFUMIさんの戦闘姿ー。あの逞しい腕の中でいつも黒トラに揺られてるのか・・・想像したら、恥ずかしくなってきた。

子どもっぽいかもしれないが、私だって黒づくめで大きな武器を担いでいて、バトルが上手い人をカッコいいと思ってしまう。どうせ中二病だ。脳内「第一回FUMIさんのどこが好き」選手権開催中。アバターも良いけど、話していて楽しい。ほとんどゲーム内の話ししかしていないのに、会話が尽きない。聞いて欲しい時は私の話しを聞いてくれるけど、受け身ばかりでもないし、冗談も言う。しかも声がめっちゃ好きだ・・・ああ、私恋愛してるな。ゲームの中だけの曖昧な関係だが、この曖昧な関係で、だらだらと恋愛をしているだけの空気も、私は嫌いじゃない。ただ、それだけじゃあ満たされない。

私は抱き枕に顔を埋めた。シンプルで使いやすさ抜群の雑貨が並ぶ、赤いロゴが有名なお店で買った。「癖になるもちもち素材」が私の羞恥心を受け止めてくれる。シンプルで手触りが最高でお気に入りのクッションに、顔を埋めながら私は想像した。FUMIさんはどんな風に女の人に触るんだろう。FUMIさんの定位置である、王宮裏西庭園に佇む彼の姿を思い浮かべると、だらだらと水が地面を這うかのように考え事が流れてくる。

FUMIさんとの関係は、これからどうなるのだろうか。私はどうしたいのだろう?漠然とした不安が広がった。大体こういう時の思考は碌でも無い。考えたって答えは出ないのに、考える事を止められない。メンタルがこんな調子じゃきっと明日の職場まで引きずってしまう。ただ何か楽しくなりたい。誰かと話がしたい。繋がっていたい。こんな事している場合じゃない。私はのそりと起き上がると、PCの電源を入れた。


FUMIの定位置でもある王宮裏西庭園には、沢山の花が植えられている。ガラスドームや東屋、豊かさを象徴する噴水、ミストワールド固有の植物に彩られている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ