第5話 平穏な日々
翌日は土曜日だった。やっと休みーと、思ったのもつかの間。部屋の扉がノックされる。
「あかりさん。学校へいきますよー。」
「へ?」
翡翠はあかりへ耳打ちした。
「そう言えばお前の時代には土曜日は休みだったか。だが、ここは20年前、土曜日も学校だぞ。」
「ええー!?」
葵が出ていくと、慌てて着替えるあかり。食事も流し込み、なんとか間に合った。
「はぁ、はぁ。」
「あかりさん、大丈夫ですか?」
「うん。」
薫が出て行った後にあかりと葵も学校へと向かった。校門の前には薫と緑、灯籠叔父さんが立っていた。
「おはようございます!」
「おはようございます!」
「おはようございます。」
葵もあかりも挨拶する。灯籠が葵を睨む。葵は臆しながらも下駄箱へ向かった。いつも通りの画鋲。
「むー!叔父さんのバカっ!」
あかりがぼやくと葵は悲しそうに微笑んだ。
「あかりさん、怒らないでください。ボクは平気なので……」
教室へと辿り着く。今日も一日が始まった。お昼になるとそのまま帰る事になった。
「今日は半日授業なの?」
「そうですけど?」
「へー。昔の人は大変だったんだね。」
「???」
「2人共、昼食は何がいい?」
普段一緒に帰る事が少ない薫もこの日は一緒に帰路についた。
「オムライス!」
あかりが元気にそう言うと2人は顔を見合わせた。
「レストランで食べた事はあるけど、作った事はないね、兄さん。」
「そうだな。お前、作れるか?」
「うん!作れるよ!まっかせて!」
あかりは元気にそう言った。家に帰るとさっそくオムライスを作り始める。
「まずはチキンライス……」
あかりは順調にオムライスを作る。最後にオムレツを乗せてたんぽぽオムライスにした。
「完成だよー!」
出来たオムライスをちゃぶ台へと持っていく。そしてナイフでオムレツを切り裂いた。中から半熟の卵液が溢れだす。
「あかりさん料理上手ですね!」
「まあ、穀潰しにしてはやるな!」
「だーれがー!穀潰しだ!!」
怒るあかりを葵が宥める。あかり特製オムライスを食べた2人の眼は輝いた。
「美味しい!」
「うん、なかなかだな!」
2人に喜んで貰えて喜ぶあかりだった。
部屋へと戻るあかり。そこに翡翠が現れる。
「我の分は無いのか?あの、おむ、らいぃすと言うもの。」
「ないです!」
ショックを受ける翡翠だった。余程食べたかったらしい。後の1時間ずっと食べたいー、食べたいなぁと、ぼやいていた。しばらくすると薫が部屋をノックした。
「おい、穀潰し。」
「は?何?!」
「ちょっとこい。」
薫に連れて行かれるまま庭へと出る。そこにあったのはバケツと軍手、鎌などがあった。
「ええと?コレは?」
「庭の草むしりをするから手伝え。」
「はいはい、やりますやります。」
あかりはちょっと不貞腐れた顔で薫にそう言って軍手をはめた。草むしりを始めてから1時間がたった頃だった。薫はどこかへ行っていた。
「もー、私一人でしろってこと?」
ぶつくさいいながら草むしりしていると薫が何か持って屋敷から出てきた。
「おい、今日はもう終わりにしよう。これ飲め。」
「へ?」
葵が入れてきてくれたのは炭酸水だった。
「ありがとう!」
「ふんっ。」
翡翠の言うように薫は優しいのかもしれないなんてちょっと思うあかりだった。氷の入ったそれは傾けるとカラッと音がなる。シュワシュワとした感触が口中に溢れ、喉を通る。タイムスリップも悪くないかもなんてあかりは思った。




