第4話 薫の優しさ
夕方、家へと帰ると先に薫が帰っていた。
「おかえり。」
「「ただいまー。」」
薫は夕食の準備をしていたらしく、割烹着を着てお玉を持って玄関まで来てくれていた。
「兄さん夕食の準備ありがとう。」
「気にするな。さ、早く入れ。」
「うん。行こう、あかりさん。」
「うん!」
その様子を薫は少し不機嫌そうに見ていた。
あかりと葵は各自部屋へ荷物を置くと居間へと向かった。ちゃぶ台には温かな和風の食事が用意されている。
「美味しそう!」
あかりが喜んで食卓につく。葵も座った。
「葵君もだけど薫君も料理上手なんだね!」
「当たり前だろ。これぐらいできないとな。」
「ボクより兄さんの方が上手なんだよ!」
2人は本当に仲がいい。いただきますと3人で言って食事を食べ始める。
「このお味噌汁美味しい!」
「兄さんはなんでも上手にできるんです。」
「葵、そんな事はない。葵だって料理ぐらいできるだろ?」
「兄さん程じゃないよ。」
なんて言って微笑みあっていた。この時はこの平和な日常が続くと思っていた。
「……ただで泊めて貰ってるし、私も料理とか家の掃除とか手伝っていいかな?」
あかりが恐る恐るそう言うと葵と薫は顔を見合わせた。
「せっかくの申し出だからな。手伝ってもらうか!」
「そうだね。兄さん。」
2人は笑顔でそう言った。
「じゃあ、さっそく食後の食器洗いを頼む、穀潰し!」
「なっ!?ごく、つ?!」
「兄さんそんな言い方しちゃダメだよ。」
「オレはあるがままを言ったつもりだが?」
「そこまで言わなくていいじゃん!」
「葵と翡翠様からの頼みで仕方なくおいてやってるだけだろ?穀潰し以外の何でもない!」
「だから手伝おうと……!」
「ふんっ!」
「ぐぬぬぬっ!!」
薫とあかりが言い合っていると葵は少し寂しそうに笑った。
「2人共仲良しだね。」
「「違うっ!!」」
☆☆☆☆☆
食事後の食器洗いを終え、お風呂に入り、与えられた部屋のベッドで寝転んでいるとどこからともなく翡翠が出てきた。
「あ!翡翠様!どこ行ってたの?」
「祠で寝ていた。」
「あっそ。それより、薫君が酷いの!私の事穀潰しとか言ってきて……」
「言葉のままだろ。」
「なっ!?」
「まあ、気にするな。それにしてもあの薫が素で話すとはな。」
「はい?」
「薫は誰に対しても優しく、非の打ち所がない。そんな薫が、葵とお前を見て嫉妬しているのだろう。葵が薫以外に心を開くのは珍しい事なんだ。」
「へー。」
あかりは話しを聞きながら宿題をする。
「むー、ここ難しい…」
「じゃあ薫に聞きにでも行くか?」
「は?薫君に?!いやだよ!」
「薫は成績トップだ。きっと上手く教えてくれ……」
「お断り!自分でします!」
「ふむ。後で泣いても知らんぞ。」
1時間後、あかりは薫の部屋を訪ねた。ノックをすると中から入っていいと声が聞こえた。
「なんだ、お前か。」
「なんだって何よ!」
「いや、葵かと思っただけだ。で、なんのようだ?」
「えーと、その……」
薫はあかりの手元を見る。
「なるほど、宿題がわからないんだろ?」
「……」
あかりは赤面しながら宿題のわからないページを指さした。
「ここがわからなくて……」
「ふんっ。こんな問題も解けないのか?バカなんだな。」
「なっ!何よ!そんな言い方しなくても……」
「いいからかせ、ここは……」
薫は少しぶっきらぼうだが分かりやすく丁寧に教えてくれた。
「だから、ここはXの3乗になって……」
「なるほど!」
「わかったか?」
「うん!わかったよ!ありがとう!薫君!」
「わかったらさっさとかえれ。オレはもう寝る。」
そう言うとあかりは部屋の外へとつまみ出された。
「むー!何よ!本当に!」
翡翠があかりの顔を覗きこんだ。
「優しいだろ?薫も。」
「……優しいけど優しくない!」
評価、感想お待ちしております。よろしくお願いします。




