第37話 喧嘩の行く先
薫と仲直りできないまま夏祭りの前日となった。食事中のことである。
「兄さん、兄さんは夏祭りどうしますか?」
「……ああ、浮舟と行く事になってる。」
「え?!兄さん、あかりさんの事……」
「穀潰しは諦めた。浮舟と付き合う事にした。」
「っ!兄さん、それでいいんですか?」
「お前としてはライバルが減ってよかっただろ?」
「兄さん、もしかしてボクの為に?」
「いや、違う。ただ飯食らいに愛想がつきたんだよ!」
あかりの眼の前でそう言う薫。あかりの顔は曇った。
「兄さん、言い過ぎですよ。」
薫はあかりとは眼を合わさずに流しに食器をおいて部屋へいく。
「あかりさん。兄さんは素直じゃないんです。本当はたぶん……」
「いいよ。わかってる。薫君にとって私はタダ飯食らいの居候だよ!」
「いや、そんな事は……」
「ありがとう、葵君。」
夏祭り当日となる。薫は浮舟と一緒に夏祭りへといく。あかりは灯籠と葵と共に行くことになった。
「あかり、何かほしいものがあったらなんでも言えよ!」
「あかりさん、迷子にならないように手を繋ぎましょう!」
「っ?!葵のくせに生意気だぞ!」
2人と手を繋いで夏祭りへとゆく。あかりにとって誰も失わない夏祭りは楽しかった。途中、薫達と出会う。緑の浴衣姿は綺麗なものだった。あかりは我が母ながら本当に美人だなぁと思った。薫と緑は仲よく店を周っていた。すれ違いざまに薫と眼が合う。葵と灯籠が声をかけた。だが、薫は何もあかりには言わなかった。しばらくして人混みがより混雑する。人に押されて、あかりの手は、灯籠と葵から離れてしまった。
「あかりさーん!」「あかり!」
どんどん流されていく。あかりはなんとか脱出しようと雑木林の方へと行った。薫の目にあかりが映る。
「薫君どうかした?」
「いや、別に…」
あかりは雑木林の中で1人思う。ここで、何度死を乗り越えただろう?もう誰も死なない!なんて素晴らしいんだろ?そう思っていると酔っ払いに絡まれた。
「お姉ちゃん、ちょっと遊ばねーか?」
「へ?いや、あの……」
酔っ払いはあかりの方へと近寄ってくる。するとあかりを押し倒した。
「きゃっ?!」
「へへ、こりゃ、上玉だ。」
抵抗するが振り解けない!
「いやっ!助けて!!」
誰も来ない。誰か!誰か!叫ぶが祭囃子で聞こえないみたいだった。
「うるせぇガキだっ!」
あかりは殴られそうになった。
「いやっ!助けて!薫君!!」
どんっ。
「へ?」
気がつくと酔っ払いは投げ飛ばされていた。そこにいたのは紛れもなく彼だった。
「薫君?!」
「くそ、男がいたのかよ。めんどくせぇ。」
酔っ払いはそのまま逃げて行った。
「大丈夫か?あかり!」
「う、うぁああんっ!」
あかりは薫に抱きつき号泣する。
「もう大丈夫、大丈夫だから。」
薫から優しく頭を撫でられた。薫と共に雑木林から出て公園のベンチに座った。
「なんで1人であんな所行ったんだ?」
「……あそこで薫君と葵君は、何度も死んだの。もう誰も傷つかないんだと思って、気が緩んでた見たい。」
「……そうか。」
「……あの、緑さんは?」
「あー、帰ったかな?お前が雑木林に入って行くのをみて、気になったから悪い先に帰ってくれって言って走って来たから……」
「……ありがとう。」
「お前が無事で何よりだ。」
偶然、2人の手が重なる。
「「!」」
2人は恥ずかしそうに手を退けた。
「あかり!」「薫君!」
2人同時に何か言おうとする。
「あ、先にどうぞ…」
「いや、お前からでいい…」
「その、この前はごめんなさい。」
「っ!なんでお前が謝る?俺も、今、すまないと言おうとしてたんだ。」
「え?だって、薫君を怒らせちゃったし……」
「……お、俺の方こそ、その、酷い事をした。」
「……私、薫君の事……」
「っ!あかり?」
「薫君が、好きなの……」
「?!」




