第35話 愛の告白
部屋を出た薫を待っていたのは葵だった。
「兄さん嘘つきですね。」
「……悪い。どうしても聞きたかったんだ。急にいなくなるより前にな。」
「ボクにトイレって言ったのも嘘ですけど、それよりもっと酷い嘘をつきましたね?」
「……なんの事だ?」
「さっき、あかりさんに言った事、全部嘘です!」
「は?そんなわけないだろ?」
「嘘ですよ。あかりさんが帰るべき場所に帰れるように、嘘ついたんです。」
「さあ、なんの事か……。俺は思ったままを言っただけだぞ?俺や灯火、お前を騙した女だ。」
「兄さん……。」
次の日から退院の日まで、薫は来なくなった。退院の日、あかりは葵達の家に帰る。あかりが真っ先に向かったのは薫の部屋だった。
「か、薫君……」
部屋で薫は勉強していた。
「……なんだ?穀潰し、お前と話す事なんてないぞ?」
「あの、ごめんなさい!私、その……」
薫の手が止まる。
「何に対してだ?俺達を騙した事か?」
「……騙したつもりはなかったの。ごめんなさい。仲直りしたくて……」
「………はぁ。」
薫はため息をついた。いきなり立ち上がったかと思うとあかりを壁に抑えつける。
「?!薫、くん?!」
「いい加減にしろよ。穀潰し。そうやって葵も誘ったのか?男に気をもたせるように思わせるのがずいぶん上手なんだな?」
「ちがっ、痛っ!」
壁に抑え付けられた手が痛む。そのまま床に押し倒される。
「薫君?!」
「誘っておいて、そんなつもりないとか言うなよ?」
薫はあかりの服のボタンに手をかけた。抵抗するが無意味だった。ボタンが外されて胸元が露になる。
「きゃっ?!やだ!やめて!?」
そのまま下着に手をかけられそうになった。
「いやっ!」
その一瞬、薫の手の力が緩くなった。あかりはその隙に走って逃げた。
「はぁ、これでこりただろ……。」
☆☆☆☆
「はあはあ。」
あかりは部屋へ帰ろうと走っていると葵とぶつかった。
「いっ?!」
「?!あかりさん?!どうして泣いてるんですか?!」
「……な、なんでも、ない。」
「ボクで良ければ聞きます!話して見てください。」
「……本当になんでもないの!」
そう言うが、あかりは泣き止まなかった。葵はあかりを抱きしめた。
「あかりさん。大丈夫、もう大丈夫ですから。」
あかりの背中を葵は優しく撫でた。しばらくしてあかりは落ち着いたようで、泣き止んだ。
「ありがとう、葵君。ごめんね。」
「いえ、あかりさんが泣いているのを見て見ぬふりなんてできませんから。」
「ありがとう。」
それを薫は柱の影から見ていた。
翌日、学校へ行く事になったあかり、いつも通りの日常である。放課後、葵と共に家に帰る。エプロンをして夕飯の準備をしていると薫が帰ってきた。
「か、薫君。お、おかえ…」
薫はあかりを無視して部屋に帰ってゆく。
「待って!」
あかりは薫の服の裾を掴んだ。
「……なんだよ。」
「薫君、この間はその……」
薫はあかりの手を振り払う。
「お前に用はない!」
「薫君!」
追いかけようとしたあかりは薫に壁に押しやられた。
「……それともまた襲われたいのか?」
「っ?!ちがっ……」
「じゃあ、なんだよ?キスの1つでもしてくれるのか?」
「え、そ、そんな事……」
「惑わせに来たんだろ?」
「違う……!ただ仲直りしたいだけでっ」
「俺はそのつもりはない。じゃあな!」
薫は不機嫌そうに部屋に帰っていった。あかりは背中を、見送ることしかできなかった。
夕飯の時間になると薫は居間にきた。
「か、薫君。あの……おいしい?」
薫は何も答えずに食事を食べていた。何も言わずに食べ終わると食器を流しに置いて部屋へ帰る。
「あかりさん、もしかして兄さんと喧嘩でもしました?」
「……うん。」
「兄さん素直じゃないからなぁ。機嫌がなおるまで待つしかないですね。」
薫と仲直りできないまま数日がたった。あかりは薫と仲直りしようとして放課後、葵に先に帰ってもらい、生徒会室へと向かう。
「薫君。」
「……なんだ?部外者は立ち入り禁止だぞ?」
「え、そうなの?」
「葵はどうした?」
「先に帰ってもらったの。薫君と帰ろうと思って……」
話していると緑が割って入る。
「薫君は私と帰るわよね?」
「……そうだな。浮舟と一緒に帰るからお前は1人で帰れ。」
その言葉にあかりはショックを受けた。そこに灯籠が来て、あかりに一緒に帰ろうと言ったのであかりは灯籠と帰った。あかりと一緒に長くいたい灯籠は家に帰るまでの道にある公園に寄ることにした。ブランコに乗って話していると公園の前を緑と薫が通った。あかりもそろそろ帰ろうと灯籠に言って帰路につく。あかりは緑と薫が気になってしかたなかった。家につくと玄関には緑と薫がいた。別れて明日また会おうと言っていた。緑は一緒に帰れたのが嬉しくて勢いに任せて口を開いた。
「薫君!私、薫君が好き!!付き合ってほしいの!」
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