第31話 壊れたあかり
「……灯火あかりです。よろしくお願いします。」
「じゃあ灯火さんには紫源君の横に座ってもらうわね。」
あかりは葵の隣に座る。
「朝会ったよね。」
「はい、ボク紫源葵です。よろしくお願いします。」
「よろしく。」
もう何度目だろう。何度よろしくと言えばいいんだろう?沈んだ雰囲気のあかりに葵は優しく接した。転校生の周りにはたくさんの人がよってきた。最初のループの時は友達も少しいた。でも、ループを繰り返す事にあかりは暗い表情でクラスに馴染めなくなっていた。そんなあかりに葵は声をかけてくれた。
「あかりさん。もしよかったらボクとお弁当たべませんか?あ、えーと、いやなら別に無理に言いませんので……」
「……ありがとう葵君。でも、お弁当、忘れちゃって…」
毎回翡翠が最初のお弁当をくれていた。だが、今回は渡し忘れたらしい。
「あ!それで暗い表情をしていたんですね!購買にお連れします!」
「へ?」
葵は笑顔であかりを購買へと連れてきた。人だかりになっている。
「あかりさん、何食べますか?」
「……お金もないの……。」
「!」
それを聞いた葵は購買でおにぎりを買ってきた。
「あの!よかったらこれ!どうぞ!」
ツナマヨのおにぎりを手渡される。
「え、でも……」
「気にしないでください!誰しも忘れてしまう事はある事です!」
「……忘れる?」
「はい。」
忘れたい事なんてたくさんある。たくさん、たくさんの、2人の死体……。
「おえっ…」
あかりは思い出してえづいた。
「大丈夫ですか?人酔いかな?人の少ない所に行きましょう!」
葵はあかりを中庭のベンチに連れてきた。
「……どうして私に優しくしてくれるの?」
「どうして……でしょう…自分でもわからないんです。貴方を見ていると何か、大切なことを忘れているような気持ちになります。」
「……そっか、ありがとう。」
あかりはなんとかおにぎりを食べる。葵は隣でお弁当を食べていた。放課後、いつものように葵と薫の家にお邪魔することになった。もう、何度目だかわからない。部屋に案内されて夕食に呼ばれた。あかりは暗い表情のままだった。そんなあかりを見て2人は優しく声をかけることしかできなかった。あかり自身心を閉ざしてしまったのだ。
学校でも暗い表情のままでいた。あかりがトイレから教室へ戻ろうとした時だった。曲がり角で灯籠とぶつかった。
「痛っ!どこ見て歩いてっ……?!」
あかりは灯籠の顔を見て泣き出した。
「お、おい!な、なんだよ。急に……泣くな!」
「ごめんなさい!」
そう言って教室へと走った。もう限界だった。あかりの心は壊れる寸前だった。灯籠はハンカチが落ちている事に気づくとそれを拾った。
「これ……」
放課後の事である。葵と一緒に帰ることになる。家に帰って直ぐにあかりは部屋へ引きこもった。あかりの心は限界に達していた。薫と葵はそれを黙って見ているしかなかった。葵は異変に気付き始めていた。
「翡翠様!教えてください!」
「何をだ?葵?」
「ボク、何か重要なことを忘れているみたいなんです。それが何か分からなくて……」
「わからないなら何も忘れてなどないのだろう?」
「……ボク、あかりさんを見ると胸が苦しくなるんです。」
「……なんだ、また惚れたのか?」
「え?」
「いや、気にするな。じゃあな。」
「あっ!待ってくださ…」
葵の言葉を無視して翡翠は祠の方へと飛んでいった。
「葵、どうかしたのか?」
「兄さん。あかりさんの事だけど…」
「……。」
その時、インターフォンがなった。扉をあけて双子は驚いた。
「灯火?!なんの用だ?!」
「あ、いや、その、あいついるか?」
「あかりさんのことですか?」
「ああ、これ、落としてたから…」
「灯火、自分で渡せ。上がっていけ。」
灯籠はハンカチを手に家にあがった。3人はあかりの部屋へと行く。
葵がノックした。
「あかりさん。失礼します。」
「あかり…」
「ブス女……これ…」
「「「?!」」」
3人は部屋に入って仰天した。
「あか、あかりさん!?」
「あかり!?」
「!?」
あかりは自殺しようと、リストカットして水の入った、たらいに手をつけて倒れていた。
薫と葵はすぐにあかりに駆け寄り、たらいから手を出した。
「おいっ!あかり!しっかりしろ!!」
「あかりさん!今救急車呼びますから!」
葵はすぐに電話まで走った。
灯籠はショックで手に持っていたハンカチを落とした。
「灯火あかり、なんで……」
薫はリストカットの傷を止血する。
灯籠はあかりを姫抱きしてベッドに運んだ。
3人はそれぞれあかりの為に動いた。その甲斐あってあかりは一命を取り留めた。だがあかりは目覚めない。
「あかりさん。なんで、こんな…」
「あかり……」
「灯火あかり……」
「おい、灯火。お前葵だけじゃ飽き足らずこいつまでいじめたんじゃないだろうな?」
「僕のせいにしないでほしい。僕とは無関係だ。」
そう言ってハンカチを握った。
「灯火君、もし、あかりさんに何かしたんだったら、ボクは君を許さない。」
葵が灯籠を睨んだ。
「っ!なんだよ!葵のくせに!僕はハンカチを届けにきただけだ!」
そう言うとハンカチをあかりの手に無理に握らせる。
「用はすんだ!僕は帰らせてもらう!」
灯籠は冷たくそう言い放った。
するとあかりの手が僅かに動いた。
「「「!!」」」
3人はすぐにあかりの手をとった。
「あかり!しっかりしろ!眼をあけてくれ!」
「あかりさん!お願いです!もう一度貴方とお話したい!」
「っ!起きろよ!起きて、僕のせいじゃないって事を証明しろ!」
だが、あかりは目覚めない。葵は翡翠の方を見た。翡翠は何も言わない。だが、翡翠なら何か知っているのでは無いかと思って聞いて見る事にした。
「翡翠様!あかりさんがどうしてこんな事をしたか、わかりませんか?!」
「……」
翡翠は黙ったままだった。
「葵、何言ってるんだ?翡翠様?」
「灯火、葵には翡翠様が見えるんだ。」
「はっ!そんなわけ……」
「教えてください!翡翠様!お願いします!」
翡翠はついに仕方ないなと言う顔で話しだした。
「………では、条件がある。」
「なんでしょうか?」
「例え記憶を思い出しても決して灯籠を憎まず、薫と葵は灯籠を許すことが条件だ!」
「っ!」
「翡翠様はなんて?」
「わかりました!ボクは灯籠君を、許します!」
「「?」」
「兄さん、灯火君を許してあげて?」
「……それは…」
「それがボク達の知らないあかりさんの闇を知る条件なんだ!」
「……わかった。許す!」
翡翠は決まったなと言うと力を使った。光が病室に溢れる。
「これがお前達が忘れたそれぞれの未来……いや、もう過去か。」
「「「?!」」」




