第29話 雨の試練
目覚めるとそこはあの日だった。葵とぶつかる。そして葵が去ってゆく。あかりはただただ不思議で仕方なかった。
「なんで?なんでお母さんが?!」
「あかり、緑はお前が邪魔になったんだよ。」
「え?だって私が灯籠君と付き合えば、お母さんだって薫君と付き合えるんじゃ?」
「お前が灯籠と付き合うのと薫が緑と付き合うのは別の問題だろ?」
「……だとしても、私が殺される理由がわからないよ?!」
「緑は緑で薫に告白したんだよ。」
「へ?」
「で、薫は断った。それで、緑はお前のせいだと思い込んだ。まあ、好感度あげないといけない人間がもう1人いたっただけだ。」
「そ、そんな……。」
「2人が助かってもお前が救われ無ければ意味がない。」
「もうどうすればいいのー!?こんな短期間に皆の好感度あげるなんて無理だよー!ゲームじゃあるまいし!……疲れたよ。」
「あかり、お前ならできる!2人を救ってくれ!頼む!」
「……なんで翡翠様はなにもしないの!?」
「神が人の営みに干渉する事は本来は禁じられて……」
「じゃあ、どうして私をタイムスリップさせたの?これは干渉してるよね?」
「……最低限の干渉だ。」
「……わかった。頑張る。」
翡翠はニヤリと笑った。あかりはそれに気づかない。
また、転校して同居生活である。
「あかりさん。ご飯これぐらいでいいですか?」
「あ、うん。」
いつも通りの日々。あかりは考えた。双子のどちらかと仲良くすれば片方しか助からない。灯籠と仲良くなれば2人は助かり私は母に殺される。…………つまり?
灯籠の機嫌をとりつつ母とも仲良くする?
「いや、待って。もし、そうしたとしたらきっとお母さんの恋を応援しなきゃいけなくなる。と、なると私が生まれなく……あれ?でももしそうなったら私がここにいることさえも消えてしまう?」
「その通りだな。」と、翡翠に言われてしまった。
「うーん」
「あかりさん。大丈夫ですか?」
「さっきからぶつぶつうるさいぞ。穀潰し。」
「あ、ごめん。あの、薫君は好きな人とかいないの?」
「は?そんなの葵に決まってるだろ?」
「違うよ!恋愛対象だよ!」
「……いないな。」
「そっかぁ。じゃあ、うきふ……」
うーん、でもこれすると私が消えちゃうのか。
「うーん。」
「何か悩み事ですか?」
「……俺達で良ければ聞くぞ?」
「2人には関係ないから……」
言ってはいけない。私がループしてるなんて言えない。信じて貰えないだろうし、言わないように言われてるし……。あれ?だとするともう1人好感度あげておかないといけない人物がいるのでは?あの人の好感度をあげればうまくいくのでは?
「2人共ありがとう!いい事思い付いた!」
部屋に戻ったあかりは翡翠をよんだ。
「翡翠様!」
「なんだ?」
「翡翠様の好きな食べ物って何?」
「酒だが」
「お酒かぁ。料理酒でいい?」
「アルコールならなんでも…」
「じゃあ消毒液で……」
あかりは消毒液を棚からとり、差し出す。
「流石にそれは呑めないだろ!急にどうした?」
「翡翠様にお願いがあるの!」
「願い?」
「台風を呼んでほしいの!」
「……我に干渉しろと?」
「もうそれしか思いつかない!お祭りを中止させるの!」
「……なるほど。台風なぁ。」
「お願いします!」
「……では、祈れ!」
「祈る?」
「雨乞いしろ。」
「し、した事ないです。」
あかりは顔を引き攣らせる。
「台風ぐらい自分で呼んでみろ!」
「っ!そんな……」
その時、コンコンと扉をノックされた。
「あかりさん。」
「葵君?どうしたの?」
「さっきのあかりさんの事が気になったので、何か悩んでいらっしゃるんですよね?」
あかりは翡翠の顔を見た。翡翠は少し悩んだが、首を縦に振った。
「……葵君!台風を呼びたいの!」
「台風?ですか?召喚すればなんとか……」
「召喚の仕方教えて!」
あかりはこの日から雨乞いの練習をした。何度も何度も練習するがうまくいかない。
「あかりさん!もう少し力を込めてください!」
「うん!」
力を込める。だが、全く雨は降らない。何度も何度も練習するがうまくいかない。
「あかりさん。少し休憩しましょう。」
「うん。」
葵からコツを教わるがうまくいかない。
「雨も呼べないのか。全く、才能はあるほうなのになぁ。」
翡翠が皮肉る。
「あかりさんどうして台風を呼びたいんですか?」
「……大切な人達を守る為なの!」
「っ!……なるほど、それは絶対成功させないといけませんね!」
「ありがとう!葵君!」
毎日毎日練習するがうまくいかなかった。そして、夏祭り前日を迎えてしまう。
「このままじゃ……」
「ゲームオーバーだな。あかり。」
翡翠の言う事なんて耳に入らないぐらいあかりは祈った。祈って祈って、祈った。
気がつくと日が沈んでいた。
「もうだめだ。」
あかりはその場にへたり込んだ。でも、諦めたくない!
あかりは更に祈る。祈った。でも、ダメだった。あかりはついに泣き始めた。
「なんでっ!?なんで……」
すると天から1つの雫が零れ落ちた。空からは雨が降り注ぐ。
「え?なん、で……」
「空が、泣いています。」
葵がやってきた。
「きっと、あかりさんの思いが伝わったんでしょう。」
だが、直ぐに雨は止んでしまった。
「うっ、うっ、どうして?!」
「あかりさん。召喚呪術は難しいものです。まだあかりさんには……それにどうして台風を呼びたいんですか?明日はお祭りですよ?」
「……それは。」
翡翠の方を見る。だが、翡翠は首を縦にふらない。あかりはなんでもないとはぐらかす。
あかりは朝まで祈る。
「神様!お願いです!台風を!」
あかりは祈った。だが、夕暮れになる。諦めかけたその時、ついに嵐が来た。
「へ?」
物凄い勢いで台風が直撃した。
「これで……」
あかりは嵐の中祈り続ける。
「あかりさん!危ないですから!家へ入ってください!」
「穀潰し!早く入れ!」
2人の声が聞こえないぐらいあかりは集中していた。気がついた時には翌朝になっていた。
「やった……」
あかりはその場に倒れる。目が覚めるとベッドの上だった。
「バカなのか?嵐の中祈るなんて」
「あかりさん。召喚成功ですね。ボクとしてはお祭り初日に被って残念でしたが……」
……そうだ。また祈らないと……まだ3日あるんだ。あかりがベッドから起き上がろうとするも2人がとめた。
結局、あかりは初日以外台風を維持できなかった。
「じゃ、ボクと兄さんはお祭りに行ってきますね!お土産買ってきますから!」
「ちゃんと寝てるんだぞ?穀潰し!」
「……(待って!)」
声が、でない……。
あかりは声が出なくなるほど衰弱していた。そして、葵と薫は帰って来なかった。
「……どうすれば、いいの?」
あかりは葵との出会いにまた戻る。あかりは葵と別れるとその場で泣き崩れた。
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