第25話 灯籠との日々
「お前が僕と付き合え!」
「は?」
「よく見るとそこそこましな顔だから付き合ってやってもいい!」
「そんなのお断……」
お母さんじゃなくて私が叔父さんと付き合ったら、どうなるだろう?もしかしたら、葵君への虐めも、叔父さんの罪も、全部、全部、止められたら?
「……いいよ。」
「そうだろそうだろ。この僕と付き合えるんだ、よろこ……は?」
「そうだね。だからいいよ。」
「……てっきり薫の事が好きなのかと思っていた。」
「いや、自分から言っといてそれは草。」
「草?」
「なんでもないよ。」
2人は付き合う事になってしまった。放課後、家に帰ろうとしていた時だった。
「あかりさん、帰りま……」
「おい、灯火あかり。今日は一緒に帰ってもらう!」
「「!?」」
あかりも葵も驚きのあまりあんぐりと口を開けた。灯籠は無理やりあかりの手をとってずかずかと歩いてゆく。
「あかりさん!」
「大丈夫!私は大丈夫だから!また家でね!」
葵はあかりの後ろ姿を見送ることしか出来なかった。
「灯火あかり。これから毎日一緒に帰ってもらうからな!」
「あ、うん。」
「……」
「……」
2人は沈黙した。とくに何か話す間柄ではない。沈黙が痛い。
「おい、何か喋れ!」
「そんな無茶な……」
「何かあるだろ!何か!灯火あかり、何か言え!」
あかりはうーんと、考える。そしてあることを口にした。
「じゃあ、その灯火あかりってフルネームで呼ぶのやめてくれない?」
「は?他にどう呼べば?」
「もう恋人なんだし、呼び捨てでいいよ。」
「……あかり。」
「うん。」
灯籠は照れくさいらしく、少し頬を赤らめた。そうこうしている間に家についた。
「じゃ、また明日!」
「ああ。」
あかりが玄関を開けると葵が出てきた。
「あかりさん!無事でしたか?!なにもされてませんか?!」
「無事だよー。」
「よかったです。」
あかりの元気な声で葵は安心したようだった。
「心配かけてごめんね。あと、これから毎日灯火君と帰る事になっちゃった。」
「え?!大丈夫なんですか?!」
「大丈夫だよ!葵君への虐めをやめるように頑張って説得するね!」
「……あかりさん。ありがとう、ございます。」
葵は嬉しくて胸がいっぱいになっていた。翌日の朝である。やはり画鋲が入っていた。放課後灯籠と帰る時にやめて欲しいと言うあかり。
「っ!お前には関係ないだろ!」
「あるよ!葵君は大切なっ……」
「大切?!お前葵なんかが好きなのか!?」
「違うよ!そうじゃなくて!」
「許せない!こいっ!」
「は?!へ?!」
力任せに近くの公園に連れ込まれる。芝生の上に押し倒された。
「おじ、……灯火君!?」
「僕が葵なんかに負けるはずがない!!」
あかりを押さえつける灯籠。その手の力がどんどん増してゆく。あかりは恐怖を感じた。
「いやっ!」
抵抗するが、力で勝てない。
「お前なんかが僕にかなうはずないだろ!」
そう言って灯籠の込める力が強くなる。
「灯火あかり!お前は僕のモノだ!」
そう言って首筋にキスされる。
「やっ!やめてっ!」
あかりは抵抗するがやはり力ではかなわない。
「違うよ!大切な友達だって言おうとしたんだよ!」
「っ!?」
あかりの目は、灯籠への恐怖から涙が溢れる。
「…………」
灯籠はあかりからゆっくりと退けた。あかりは一人静かに泣いていた。
「……すまない。」
灯籠はハンカチを出してあかりに渡す。あかりはしばらく泣いていた。灯籠はただ静かにあかりを見ている。泣き止むと2人は帰路に付く。あかりは無事に家に帰れた。
「あかりさん、おかえりなさい。」
「うん、ただいま。」
葵はあかりの首筋の跡が目に入った。
「あかりさん、だいじょっ……」
あかりは葵の顔を見ないで部屋へ籠る。帰ってからは自分の部屋で恐怖で再び泣いていた。
「……あっ。ハンカチ……」
ハンカチを借りたままになっていた。あかりは洗濯して明日返す事にしたのだった。
翌日、挨拶運動をしている灯籠にハンカチを返す。
「昨日はその……」
灯籠の言葉を無視して葵と共に教室へとむかった。昼休み、灯籠はあかりに用があると行って校舎裏に連れてゆく。
「灯火あかり、昨日はすまなかった。」
「……うん。」
「葵にまで負けたくなかったんだ。」
「……葵君への嫌がらせやめてほしい。」
「!?やっぱりあいつのことが?!」
「違うよ!友達が虐められてるのが嫌なの!」
「…………わかった。」
「っ!ありがとう!」
それを聞いてあかりの瞳が輝いた。
「ただし!」
「ただし?」
「今僕にキスできたらな!」
「え?」




