第21話 絡まる想い
また転校してきて、薫と葵の家に世話になる事になった。
「おはよう。」
「おはよう」
「おはようございます」
いつもの朝が始まる。葵がどれぐらいがいいかと問いながら茶碗にご飯を盛っている。
「……少しでいいよ。」
「あかりさん、どうかしたんですか?元気ないみたいですけど……」
「そんな事ないよ!」
「穀潰し、変なものでもつまみ食いしたんじゃないか?」
「もー、してないってば。」
涙ぐみながらそう言うと薫は謝った。
「ちょっと体調が悪いだけだから気にしないで。」
登校した。葵の靴には画鋲が貼ってあった。
「……。」
「あかりさん。怒らないでください。大丈夫ですから。」
「うん……。」
いつも通り教室へいって落書きを消して、机の中を確認する。
今日はなにもはいっていなかった。いつも通り家に帰る。しばらくして薫が帰ってきた。
「薫君おかえり!」
「兄さんおかえりなさい!」
「ああ、ただいま。」
食後、あかりは薫の部屋へと行った。
「薫君、ちょっと話しがあるんだけど。」
「?なんだ?」
「葵君の事なんだけど。」
「葵?どうかしたのか?」
「どうかしたも何も!毎日嫌がらせされてるのに薫君はどうしてなにもいわないの!?」
「……あのな、俺も教員に掛け合ったり警察に相談したりしたさ!でも、灯火の名前を出した途端誰も彼も黙るんだよ!それほど灯火家の影響力がこの村ではあるって事なんだ!」
「……そうなんだ。」
「……、俺だって葵を助けてやりたい!だが、灯火は聞く耳持たずだ。」
「……ごめんなさい。」
「お前が謝る事ないだろ。」
「親戚だから。」
この会話前にもしたなぁと、あかりは思った。
「とにかく、お前が謝る必要はない!」
「うん。」
その日はそれで部屋へと戻った。次の日の朝、3人で朝食を食べて、学校へと登校する。いつも通りだ。放課後、薫が帰ってきて食後の事、
「薫君。」
「ん?また話しか?」
「あ、うん。ごめんね。」
「謝らなくていい。で、今度はなんの話しだ?」
「あの、ここ教えて欲しいんだけど……」
あかりは宿題の17ページを指さす。
「わかった、かせ。ここは……」
薫は凄かった。あかりのわからない所全てを教えてくれた。
「で、ここは……」
「うん!」
顔を上げるタイミングが重なる。2人の視線が絡まった。薫君て、まつ毛長いんだと、わかるぐらい近くに薫の顔がある。
「「ごめん」」
そう言って2人とも顔をそむけた。
「……とりあえず以上だ。」
「あ、うん!ありがとう!また明日!おやすみなさい!」
「おやすみ…………」
次の日、あかりが目覚めると翡翠が目の前にいた。
「おわっ?!」
「なんだその情けない声は。」
「顔が近いんですよ!」
「はぁ、まあ、あの2人の事はがんばれとしか言えないな。」
「はい!」
そして翡翠はその後も極力手助けしてくれなかった。朝、朝食当番のあかりはトーストに目玉焼き、サラダ、コーンスープを用意した。
「あかりさんが作る洋食っていつも美味しいですよね。」
「そうだな。まあまあだ。」
「何よそれー!まあまあって!」
「くすすっ。兄さん照れてるんですよ。直接美味しいって言えない人なんです。」
そしていつもの1日があっという間に終わる。その日、あかりは夜、眠れなかった。廊下に出て居間へと歩いてゆく。途中、薫の部屋の前に来た時、あかりがついている事に気づいた。
「薫君?」
「ん?なんだ?穀潰し。こんな時間に何してるんだ?」
「薫こそ何してるの?」
薫の手元を見ると参考書があった。
「薫君夜遅くまで勉強してるんだ!?」
「まあな。わからないと困るだろ?」
「すごいね!」
じゃ、また、と、立ち去ろうとした時だった。床に置かれた国語辞典に躓いて転ぶ。
「きゃ?!」
眼を開けると、薫の顔が近くにあった。
「!!ごめん!薫君!」
「別に問題ない。ゆっくり起き上がれ、また転ぶぞ。」
ドギマギしたあかりとは対照的に冷静な薫。相手がなんとも思っていないと言うのも余計に恥ずかしく思う。
「じゃ、またね!」
「ああ。」
部屋に一人残った薫は頭を抱えた。




