第20話 葵との未来
葵への返事が決まらない中、運命の夏祭りの日が訪れてしまう。
「今日の夏祭り、葵、穀潰し、2人で楽しんでこいよ。」
「兄さんは?」
「俺は急にきまった村の会合に出なくちゃいけなくてな。」
と、言う事で葵とあかりは2人で夏祭りを楽しむことになった。
「楽しむっていっても……」
「あかりさん、どうかしましたか?」
「なんでもないよ!」
今回、薫君の方は大丈夫そうだけど、葵君は大丈夫かな?そんな事を考えてるうちに葵は林檎飴の屋台の前で止まった。
「あかりさん、何か食べますか?林檎飴とかどうですか?」
「林檎飴かぁ、いいね!」
「買ってきます!」
正直あかりは葵が心配で葵の話を適当に聞いて適当に返事していた。葵の周りに叔父がいないか常に周りを確認する。
「あかりさん、あっちのベンチで食べましょう。」
空いているベンチがあったのでベンチに2人で座った。
「あかりさん、どうぞ。」
葵はあかりに林檎飴を差し出す。ありがとうと言ってあかりは林檎飴を受け取った。林檎飴をガリゴリと食べる。
「あかりさん。」
「?」
「付いてますよ。頬に。」
そういうと葵はそっと手であかりの顔を拭った。顔についていた飴をとってくれた。
「あ、ありがとう。」
「いえ。」
拭ったあと、しばらく何も言わずに葵はあかりをみつめていた。
「葵、君?」
「あかりさん。もう少しだけ。このままで……」
「…………。」
あかりは真剣な顔でみつめられてドギマギする。心臓の音が彼に聞こえないか心配な程、葵の顔はあかりの近くにあった。
「あかりさん。」
「葵君?」
「あの返事、今、聞いちゃだめですか?」
「へ?」
「あかりさんと付き合いたいです。」
「……私はっ!」
あかりが葵に返事をしようとした時だった。ふと、後ろの雑木林に薫が入って行くのが見えた。
「葵君!ごめん!また今度!それより大変なことが起きちゃうかも!」
そういうと葵の手をとり、あかりは走った。
「「はあはあ。」」
2人で雑木林の中を歩き周る。すると薫の亡骸を見つけてしまった。
「薫、くん……!?」
「兄さん?!」
かけよる葵とあかり。だが、脈はない。
「兄さん!どうして!どうして!」
葵は涙を流しながら薫を抱き寄せた。
☆☆☆☆☆
薫君のお葬式にはたくさんの人がやって来た。もちろん犯人の叔父さんもだ。そして何故か葵の様子がおかしかった。お葬式が終わると葵はあかりを自分の部屋へと連れていった。
「あかりさん。今日からここが貴方のお部屋です。」
「え?……きゃっ!?」
葵はあかりをロープで縛り上げた。
「何するの?!葵君?!」
「もう誰も失いたくない!大切な人を失いたくないんだ!!」
「だからって、これは?!」
「あかりさんはここでずーと、ずーと、ボクと2人で暮らすんです。」
「葵く……むがっ。」
口にガムテープを貼られる。
「あかりさん、愛しています。愛しています。」
そう言ってガムテープごしにキスされた。
「むがっ!」
「あかりさん。食事の準備してきますね!何が食べたいですか?あー、それじゃ話せないですね。わかりました。適当に作ってきます。」
葵は部屋を後にする。あかりはずっと縛られたまま待っていた。動くことさえできない。どうしてこうなったんだろう?そう思う。だが、葵を救う事はできた。それは前回とは違う結末である。しばらくして葵が戻ってきた。食事を持ってきてくれたらしい。
「あかりさん、おにぎりとお茶です。」
「むぐ……ぷはっ!」
葵はガムテープを外した。
「あかりさん、はい、あーん。」
「ありがとう。」
「えへへ。ボク達もう恋人ですよね?」
「へ?」
「あかりさんは今、ボクのなんです。」
「そんなっ、勝手に……」
「誰がなんと言おうと手放しません。」
そう言うと葵はあかりを抱き寄せた。
「あかりさん、ボクのあかりさん。」
その言葉はどこか空虚ででも温かい、そんな言葉だった。
「あかりさん、好きです。」
そう言って額にキスを落とす。あかりは震えていた。怖い。何をされるかわからない。そう言う思いが彼女を恐怖へといざなう。
「あかりさん?どうして震えているんですか?空調、寒いですか?」
「だ、大丈夫だよ。」
いつもの葵の筈なのにいつもと違って見える。
「ボクが温めてあげますね。」
葵のあかりを抱き寄せる力が強くなった。
「葵君……。」
「あかりさん。好きです。」
これで良かったのだろうか?確かに、葵君の命は救われた。でも、心は完全に壊れてしまっていた。
「ボクだけのあかりさん。愛してます。愛しい人。」
「ごめんね。葵君。」
「へ?」
そう言うとあかりは眼を閉じた。次に眼を開けるとそこは葵との出会いだった。
「いってて、あ、ご、ごめんなさい。急いでて……じゃあ」
「…………。」
「あかり、大丈夫か?」
「あんな葵君、見たくなかった。」
「……葵が壊れたのは仕方ない事だろ?それでも生きてさえいれば……」
「そんな事ない。葵君はきっと、あのままだと自分から命をたっていたかもしれない。」
「…………だから戻ったのか。」
「今度は、今度こそ。2人を……。」




