第16話 2度目の終わり
「灯火あかりです!よろしくお願いします!」
自己紹介が終わり、葵の隣りの席をすすめられる。
「よろしくね!葵君!」
「へ?どうしてボクの名前を?」
「え、あ、いや、その、翡翠様から聞いたの!」
「翡翠様が見えるんですか?」
「うん!」
なんとか誤魔化したあかり。翡翠からループしている事は秘密にしろと言われていた。放課後、以前と同じように葵君と薫君の家に居候させてもらう事になった。帰ってきた薫によろしくと言うと、以前のようにふーんと、言うだけだった。部屋にてあかりは考える。
「どうすればいいんだろ?うーん、神隠し……はっ!」
あかりは思わず翡翠を見るが、翡翠は違うと言う顔をしていた。
「犯人は翡翠様、じゃない……と、」
「おじさんが1番怪しいけど……」
そんなことを考えているうちに睡魔に襲われ、夜は深けていたった。
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コンコンコンとノックの音がしたと思うと葵が入ってきた。
「あかりさん。おはようございます。」
「ああ、おはよう。」
そして、居間に行くといつも通りの風景だった。
「おはよう。」
「おはよう兄さん。」
「おはよう薫君。」
薫はやっぱり新聞を読んで、葵はお茶碗にご飯を盛る。
「あかりさん、これぐらいでいいですか?」
その風景にあかりは涙してしまった。
「?!すみません!多かったですか?少なかったでしょうか?!」
「あ、ご、ごめん。目にゴミが入っちゃって……」
「目薬持ってきます。」
葵が急いで棚の中から目薬を探す。
「あ、大丈夫!もう取れたから。」
「……ちょっと見せてみろ。」
薫はあかりの顔を覗き込んだ。ほほに手を添えられまじまじと見つめられる。
「うーん、大丈夫そうだな。」
「ありがとう、葵君、薫君。」
いつも通りの登校。いつも通りのおじさんの嫌がらせ。いつも通りの放課後。
「……なんか、未来が変わる予感がしない。」
「当たり前だろ。全くと言っていいほど何もしてないからな。お前。」
翡翠に言われてぐさっと心に刺さった。
「どうすればいいですか!?」
「我に聞くな。自分で考えてくれ。」
「あの日、何があったんだろ?」
それを知るすべは無い。あかりは力に目覚める事もなく2回目が終わろうとしていた。運命の夏祭りの日、あかりは薫と葵と離れないように手を繋ごうと言った。お祭りにいく。しかし、あまりの人混みに葵とはぐれてしまう。
「葵ー!」
「葵くーんっ!!」
2人で探すも、見つからない。そうこうしていると緑と灯籠おじさんが祭りに来ていた。緑へ灯籠に素っ気ない態度をとっていた。だが、薫をみた緑は態度を変えた。
「薫君も来てたのね!」
「あ、ああ。それより葵見てないか?」
「見てないわ!ね、灯火君?」
「ああ。」
「薫君、あの。」
「?」
「緑さん、もう行こう。」
そういって緑の手をとり、灯籠は行こうとするが緑に振りほどかれる。
「どうしても一緒に来て欲しいって言うから仕方なくきたのよ。あんまり馴れ馴れしくしないでほしいわ。」
「そんなっ!」
「それより薫君、一緒に周らない?」
まるであかりなんて見えて居ないかのように緑はそういう。
「いや、それより葵を……」
「緑さん!僕と一緒に周るっていって……」
「私は薫君と周りたいの。」
「悪い、浮舟。今は葵を探す事が最優先なんだ。またな。」
「あっ!薫君!」
あかりは薫を追って行こうとした。だが、ある言葉があかりの動きをとめた。
「緑さん!僕はっ!緑さんが好きなんだ!僕と付き合ってほしい!」
「?!」
あかりはそれを聞いて驚いた。そうか、だからあの時、母に諦めないと言っていたのか。
「私は!私は薫君が好きなの!いい加減付きまとうのやめてくれないかしら!」
「っ!そんな……。」
そして緑は薫を追った。
「あ、ああ……。」
灯籠はショックのあまり放心していた。
「灯火君。」
あかりがおじさんを気遣おうとすると灯籠はあかりを睨んで去っていった。
あかりも薫を追う。途中、緑が一人でいた。
「おか、緑さん、薫君は?」
「見失ったの。」
あかりはそれを聞いて嫌な予感がした。あかりは人混みを必死に薫と葵を探す。
すると葵を見つけることができた。だが、灯籠と一緒である。灯籠と共に雑木林の方へと向かってしまった。
人混みで動くことができない。なんとか人混みから抜けて雑木林の中へと進む。そこでは薫の声がしてあかりは走る。だが遅かった。
薫を見つけた時には既に葵は息絶えていた。薫に声をかけようと動こうとした時だった。薫の後ろに人影がゆらりと蠢いた。
「がっ?!」
薫は石で殴られてその場に倒れてしまった。犯人の顔が月明かりに照らされる。
「おじ、……さん。」
そう、そこに石をもって立っていたのは叔父の灯籠である。灯籠は一旦家へと帰ってゆく。
あかりは2人の亡骸に縋り付いた。
「2人共、ごめんなさい!私っ!私っ!」
しばらくその場にいた。すると後方から何かで殴られる。スコップを持ってきた叔父だった。あかりはゆっくりと眼を閉じた。このまま自分も埋められるのだろう。
葵君と薫君が死んだのはおじさんの仕業だった。あの家が20年後、ボロボロになって誰も住んでいないのはおじさんが2人を殺したからだったのだ。そう思った時、眼を開けた。
気がつくと転校初日に戻っていた。
「いってて、あ、ご、ごめんなさい。急いでて……じゃあ」
葵との出会いに戻っていた。何故か涙が溢れる。
「これって?」
「お前に死なれては困る。だから戻した。3度目こそは救えるか?」
あかりは零れる涙を拭いた。
「今度こそ!助けます!」
あかりの決意は以前より堅いものとなっていた。




