第9話 重なる熱
葵が突き落とされた次の日だった。期末テストまであと2週間となっていた。生徒会室ではいつも通りの日々が流れる。
「薫君、葵君大丈夫?私、心配なの!」
「ありがとう。浮舟。」
「ううん、薫君の弟だもの!心配するのは当たり前よ!」
そこに灯籠叔父が生徒会室に入ってきた。
「灯火!お前っ!」
激高する薫。
「なんだよ。紫源。」
「葵をお前がっ!」
「人聞きの悪い事いうなよな。僕がしたって証拠でもあるのか?それより緑さん、今日の放課後僕が奢るから2人で駄菓子屋でもいかないかい?」
「結構よ。それより灯火君がどうかしたの?薫君?」
「…………いや、なんでもない。今日の議題に移ろう。」
☆☆☆☆
放課後の事。
「あかりさん。ボクは大丈夫ですから……。」
「荷物ぐらい持てるよ!」
「ありがとうございます。」
葵とあかりは2人で帰る。薫は生徒会である。
「あかりさん、テストまでもうすぐですね。」
「げっ?!そ、そうだねー。」
「わからない所があったら兄さんに遠慮なく質問してくださいね!」
「う、うん。」
家まで帰り、荷物を葵の部屋へと置いた。
そう言えば葵君の部屋に2人で入るの初めてだなぁ。
「あかりさんありがっ……?!」
葵がバランスを崩してあかりと共に床へと転がる。
「いったた……すみませっ……!?」
「だいじょっ……!」
あかりの上に葵が覆い被さるように跨っていた。
「あ、あかりさん!すみません!」
急いで葵が退けようとするが、足の痛みがはしる。
「っ!」
「あ、あお、葵君!落ちついてー!!」
あかりもあかりで顔が近くてミニパニックになっていた。なんとかあかりから葵が退ける。
「あかりさん。すみません。」
「私こそごめんね。」
部屋に甘い空気が漂う中2人の手が偶然にも重なった。
「「っ!!??」」
すぐに退けて2人共詫びる。2人は顔があつくなった。
「ただいまー!」
そこに薫が帰ってくる。
「あ、兄さん!」
「薫君だ!」
2人共大慌てで玄関へと向かった。重なった指の熱が消えないまま玄関に付く。
「おかえり!」「おかえりなさい!」
「う、うん、ただいま!どうしたんだ?2人共そんなに慌てて。」
「いや、なんでもないよ!」
「そうだよ!兄さん!」
「そうか。」
すると後ろから女の子の声がした。
「薫君、またね!」
「ああ、浮舟、また明日。」
「おかっ……?!浮舟さん!?」
「一緒に帰りたいといつも言われるんだ。」
「へ、へー。(小声)このままじゃ私が生まれない危機が……」
「兄さん今日は早かったね。」
「ああ、生徒会が早く終わってな。」
「そうなんだ!すぐ食事の準備をっ……」
「葵は休んでおけ、俺と穀潰しで作るから!」
「え、でも、……」
「だーれーがー!!穀潰しだっ!!」
☆☆☆☆
食事を終えると3人で勉強会をする事になった。あかりと葵は分からないところを薫に聞く。
「で、ここが……」
「なるほど。」
「兄さんはすごいなぁ。」
なんて話をしながら夜になった。3人はそれぞれの部屋へと帰る。
「……!眠れない!!」
あかりは珍しく眠れなかった。廊下へと出るとパジャマ姿の葵がいた。
「葵君。」
「あ、あかりさん。」
「眠れないの?」
あけりは葵の横に座る。
「ええ、いつもの事です。」
「…………。」
その言葉にあかりは何も言えなくなった。葵達の両親はもういない。そんな重い話そうそうできるものではない。
「あかりさんは?眠れないのですか?」
「うん。葵君どうしていつも敬語なの?」
「……敬語の方が慣れてて……ボクみたいな人間が敬語で話さないのはちょっと気が引けるなぁて、兄さんには慣れてるけど他の人には……」
「……いじめられるから?」
「っ!……そうです。」
「葵君、もっと自信もっていいと思うよ!」
「……できません。ボクなんか……」
「葵君にだっていい所はたくさんあるよ!料理だってできるし、陰陽師だし!かっこいいじゃん!」
「っ!あかりさん……。ありがとう。」
「いえいえ。」
そんな2人を薫は柱の影から見て優しく微笑んだ。
そんな話をして2人はお互いの部屋へと帰る。廊下を歩いて部屋へ戻ろうとすると浴衣の薫と会った。
「薫君?薫君も眠れないの?」
「ああ、そうだな。葵の事、ありがとう。」
「え?私何もしてないけど?」
「はぁ、分かってないな。お前の言葉で葵は少し救われたように思う。」
「そう、かな?」
「そうだ。ありがとう。」
「いえいえ。じゃあっ!」
あかりが部屋へ戻ろうとすると、足がもつれて転けそうになった。
「きゃっ?!」
「!」
薫はそんなあかりを支えようと抱き寄せる。抱き寄せられたあかりが薫の顔を見ると2人の視線が重なった。
「あっ!いや、ごめん!!」
そういうとあかりはすぐに薫から離れる。
「いや、いい。そう言う事もある。」
怒られると思ったのに今日の薫は優しかった。
「え、あ、ありがとう!じゃ、また明日!」
あかりは大慌てで部屋へとかけていった。一人残った薫は頭をかいた。
「……熱いな。」




