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ユリアの本性がローズのおかげでわかった。 しかし、問題は山積みである。
(マルクには…ユリアの本性は言わないでおこう。裏で利用されていたなんて知っても傷つくだけだろうし。問題はエルノア様だな)
先日のお茶会のときの様子からして、どうやらエルノア様はユリアの本性に気が付いているようだった。
(ユリアがエルノア様の前で本性を表すとは考えられない…。何かの拍子でばれてしまったのかもしれない。そして不仲になった…)
そう考えるとエルノア様のあの態度も頷ける。
(次のお茶会でエルノア様に婚約を解消する気がないか聞いてみよう)
いくら親同士が仲良くて決めた婚約だからと言ったって、ユリアの両親の娘溺愛ぶりからするとユリアがノーと言えば簡単に婚約は解消できるように思えた。
エルノア様はユリアの本性を見抜いてあの態度というだけで、本来の性格は良いように感じた。途中過去について話してくれたのは、メイドのことを思ってだろう。 良い人には良い人と結婚してほしい。ユリアでもゆりでもなく。
そうこう考えているとエルノア様から3日後一緒に外出しないかというお便りが届いた。
「ローズ、以前外出はしていたの?」
「いえ、月に1回お会いするのみで外出など初めてですね…」
ローズにはエルノア様とは仮面恋人だと伝えていたので、今までない事態に驚いている。 どういう意図かわからないが、婚約解消の話をするなら早いほうが良いだろうと思い承諾の返事を書いた。
「もしかしたら、今のユリア様が好きなのかもしれないですね!私のように!」
ローズはあれ以降だいぶ砕けて話してくれるようになった。それがとても嬉しい。
「ふふ、嬉しいこと言ってくれる。でも、エルノア様が私を好きなんて絶対にない」
あの無感情「愛している」を思い出しながら私は言う。
「今はそうでも、いずれユリア様の魅力に気が付きますよ。こんな素敵な方なんですから」
ローズの褒め殺しに照れくさくなりながらも、ありがたく気持ちを受け取っておくことにした。
* * *
3日後。 エルノア様との外出の日になった。 エルノア様が家まで迎えに来てくれる予定だ。
「緊張する…」
「ふふ、以前もおっしゃっていましたね」
「今日呼び出された意図がわからなさ過ぎて怖いの」
「だからそれは今のユリア様が素敵だからで…」
「はいはい」
ローズと話しているとエルノア様がいらっしゃったとメイドが告げに来た。
「ユリア、急な外出の誘いに応じてくれてありがとう。今日を楽しみにしていた」
周りの目があるので、エルノア様は仮面恋人モードだ。私もそれに応じる。
「こちらこそありがとうございます。エルノア様とお出かけできるなんて嬉しいです」
エルノア様はスマートにエスコートをしてくれる。そして人生二度目の馬車に乗る。
(馬車にも色々あるんだなぁ)
マルクの馬車は黒が基調でシックだったが、エルノア様の馬車は金色が基調でやたらと豪華である。
(そんな馬車に乗ってても見劣りしないエルノア様は流石だな。私はいたたまれない…)
目の前を見れば容姿の眩しい人がおり、周りを見ようにも金色の内装で落ち着かなかった。キョロキョロと挙動不審な私を見かねてか、エルノア様から声をかけてくれる。
「どうした?様子が変だが」
馬車の中では2人きりなので、態度は冷たいが声をかけてくれた嬉しさが勝る。
「いえ!!緊張しているだけなので、お構い無く」
「緊張?君が?……」
エルノア様はしばらく考えたあと、とんでもないことを言った。
「手を繋ぐか?触れあえば緊張がとけるだろう」
「へ!!!?」
(何言ってるの?この人)
冷たい態度かと思ったら、手を繋ごうと言う。整合性のなさに、恐怖を感じた。
「今は2人きりなので恋人モードはいらないですよ?」
「そうか」
エルノア様は何でもなかったように、また冷たい態度に戻る。
「そういえば、なぜ今日は私を外出へお誘いしてくれたのですか?」
「気分だ」
(今まで外出に一度も誘わなかった人が?気分で私を誘ったの?)
多くの疑問を残しつつ馬車は目的地へ向けて進んでいくのであった。
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