-もう少し-
気まずくなるかと思ったが、高山くんがたくさん話してくれたおかげで、硬い雰囲気にはならなかった。
街灯の明かりが黄色より少しオレンジ色に見える。
普段読む本の話、クラスのこと、姉と兄が1人ずついて、2人とも世話焼きな話など、聞いていて飽きなかった。
しかし、そんなことよりも、私はあることに気がつき始めていた。
最寄り駅も一緒で、帰る方向もほぼ一緒。
・・・・あれ、そういえば、高山くんって、同じ小学校じゃなかったっけ。
今まで全く記憶から結びついてこなくて、何も思い出さなかったけれど、確か高山くんは同じ小学校だったことを思い出した。
・・・どうしよう。全然気づかずに今まで過ごしてた。
私は小学校高学年からここに引っ越してきて、高山くんとは同じクラスになったことがない。
学校に行く班が割と近くで、目立つからたまに見かける程度。
しかも、中学は違ったような・・・。
正直思い出さなくても無理はないのではないかと考えたのだが、確か当時、うるさそうな人だな、と思っていたことも同時に思い出して、胸のあたりが罪悪感だらけになった。
まぁ、でも高山くんも私のことをよく覚えている様子ではないかな。
そう思うことで、自分を勝手に納得させることにした。
「ごめん、俺ここだ。」
高山くんは家の前で立ち止まった。
「そっか。じゃあね。また明日。」
この時期にしては少し涼しい風が流れ、近くの公園にある木の音が微かに聞こえる。
一緒に話している時間は心地よかった。
普段は絶対に私が入らないような人の中にいるけれど、実際話してみるとこちらがとても楽しい気持ちになる。
この人は不思議な力を持っているんだな、と思いながら話を聞いていた。
普段着ない系統の服を着てみたときの気持ち。
もう少し聞いていたい思いもあったけれど、それを微塵も出さず、すんなり私は背を向けた。
「あの・・」