ーねがいはー
一度、読んでいる本の話をした時に、読む?と聞くと、読む。と答えた。
俺は彼女に本を貸した。
本という名目でこうして話をしているけれど、いずれ、もうすぐ、その名目がなくなっても彼女は話をしてくれるだろう。
そんなことをうすらと思っていた。
「佑ー、何?気になってきちゃった?」
キノが肩を掴んできて、ハッとした。
周りはガヤガヤと騒がしく、ホームルーム前に帰りの準備をしている。
「あ、何?マジでぼーっとしてた。」
長いこと木梨さんの方を見てしまっていたらしい。
俺はどうやら嘘が上手いようで、とぼけて気をそらすと、それ以上追及されなかった。
キノは美咲たちの班と一緒になれるよう俺と大輔を説得するのに必死だ。
こいつらに自分の気持ちを打ち明けてみて、木梨さんたちと同じ班になってもいいんじゃないかと一瞬思ったが、木梨さんのことを好きな人が多いという話を思い出した。
自分だけが持っていると思っていた時間が、急に頼りないものに思えたり、ここで言って同じ班になるよう協力してもらおうという考えが醜くちらついたが、焦りや焦燥感でなんとかしたいという想いでもなかった。
もっと、ちゃんと・・・。
そんなことを考えていると最後までキノがゴネて、それに女子が乗っかって話がまとまった。
班決めは結局、俺たちが木梨さんのところとくじで当たったら、そこと組みたい男子がいるだろうから美咲たちが代わる。
と、美咲が話したところでチャイムが鳴って、ホームルームが始まってしまった。
俺は木梨さんのグループと。
いや、木梨さんと2人で回る時間が欲しかったけれど、願望に過ぎない気持ちは心の中にしまった。




