-光の中のきみが隣にいるのは-
騒がしい声が微かに響く。
それは遠い遠いフィクションの中のようで、非現実的なものとして図書館の中に流れ込んできていた。
図書館は静かだ。私の高校の図書館は小さく、とても立派とは言い難い。
けれど、こういう時に限っては広く大きく、そしてその分、逆に狭く感じるものだ。
外は光り輝いていた。
キラキラ、キラキラ。図書館から見える中庭は人で賑わっている。
グラウンドに比べたら半分しかないコートで、男子たちがサッカーをしていた。
彼らの中で独自のルールがあるのだろうか。小さな場所で蹴って奪ってを繰り返し、点をとっては喜び合っていた。そしてそれを数名の女子が見ている。
これが、放課後私がいつも眺めている、遠く焦がれる映像だった。
図書館はとても静かだった。私は窓際の低い本棚から手を離し、他の本棚の方へ歩いた。
今日も窓際から見ていた。
いつもはただ何の生産性のない、薄く伸ばした、感じるまでもないような感情を持ちながら眺めているが、今日は別のことが気になった。
あの女の子たちは誰を見ているのだろうか。視線の先が気になった。
昨日、高校生が主人公の恋愛小説を読んだせいかもしれない。
誰を見ているかは、眺めているとすぐにわかった。ああいうグループの女子は、好きな人を伝えあったりしないのだろうか、はたまた知った上で高揚感を共有したりしながら楽しんでいるのだろうか。
それについては特に見当がつかなかった。私だったら友達と同じ人を好きになろうとは思わない。
だから理解できないのだろうか。
男の子は確かに目を引く存在だった。
だって、人一倍楽しそうだ。人一倍よく笑って、それを周りに伝染させていく。負けたら仲間をこづいてみたり、やり返されたら楽しそうに笑って、勝ったら思い切りはしゃぐ。
それも、子供よりは少し大人びた範囲の中で、思い切り。
その度に男の子の髪はサラ、と揺れるのだ。
「へぇ。」と、私は低い本棚に頬杖をつきながら目を細めた。
まぶしい。私はそれ以上の感情を持たずに、返却された本を整理するため、カウンターの方に戻った。