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氷VS炎 蒼炎に消ゆ

魔法少女決戦、決着ヾ(o゜ω゜o)ノ゛

 

 ロッドをぶん投げ、込めた魔法を遠隔で発動する。

 端的に言えば、フランの狙いはそういう事だった。

 オレがいつも、投擲用の短剣で行なっている戦い方そのものである。


 ボロボロの体で投げた杖は、当然相手の元までは届かない。

 自分の体に当てた風で、動きをアシストしてはいる。

 しかし、満足に動かない体を強制的に動かしている現状、マトモに飛ぶ筈がなかった。


「ウインド・スコール……ッ」


 だから、連続した魔法で氷の城郭へ向け、未だ回転する奥の手を届かせる。

 込められた膨大な魔力が、地面とぶつかった衝撃により弾けた。


「包み込みなさい、テンペスト・エクスプロージョン!」


「くうぅぅっ!」


 鋭い風と爆音が突き抜ける。

 勿論それで終わりではない。この魔法は停滞せず、実にゆっくりとだが前方へ進んでいる。

 既に影響を受けているスターシアも、どんどんと自身に届く風が増している事に恐怖を覚えているようだ。

 なにせ、全周を覆わない氷では風を防ぎきれない。

 おまけに言えば、ところどころ穿たれた氷壁は、すきま風が咽び泣いていた。


「機動力さえ奪われなければ、こんなものぉ!」

「そこまで全てわたくしの筋書きですわ。そしてこれで最後。膨張せし大炎エキスパンションフレイム!!」


 全力で付与魔法を込めたロッドを投げたその時から、痛む体を無視しトドメの一撃を練っていた。その準備が今、結実する。


 ――バォゴオオォォオオ!!


「これ、スターシアさんは生き残れるのでしょうか?」

「相手は一流の魔法使いだ。流石に死にはせんだろう。重症はオレも手伝うから頑張って治そうな」


 暴風の中心に放った火魔法。

 風の通り道を駆け抜け、フランが生み出したのは、前世で言う火災旋風だった。

 十分に距離をとっているこちらまで、その熱気は届いている。

 普通の人間や魔物だったら、ひとたまりもないだろう。

 地面を舐めるように広がるその炎は、一部ではあるが蒼く瞬いている。


 正直、正式な決闘であれば、事前に取り決めたルール的に、反則負けを言い渡されてもおかしくない。

 だってオレたちの背後にある林にまで、火が燃え移ってるもん。こりゃあ消火活動が大変だ。


「う、いたたたですわ……」


 やったと思い、気力だけで立っていたフランがくずおれる。

 もう指一本動かないくらい、死力を振り絞った結果だった。


 込められた魔力が途切れ、辺り一帯燃やすものがないため、暫くして火災旋風は途切れる。

 果たして、そこに立っている者はいなかった。ていうか、誰もいなかった。


「あれ? スターシア嬢居なくね?」


「ま、まさか骨も残らず燃やし尽くしてしまった……なんて事ありませんよね?」


 おい、恐ろしい事を言うなメルヴィナ。

 凄まじい威力の魔法だった事は認めるが、幾らなんでもそこまで埒外の破壊力ではなかった筈だ。


「嘘……でしょう?」


 フランの呟きが漏れる。

 それは、決闘相手を殺めてしまった事に対する懺悔――ではなかった。


「まさか……」

「お嬢様が作った窪みの中に!?」


 メロディーは地面に開いた穴の中から、のそっと顔を出した。

 その顔は魔力を使い切ったのか脂汗にまみれ、四肢はフランと同等以上に力が入っていない。

 正に、ギリギリと言ったところだった。


「このわたしが、敵の魔法を利用しなければ防げなかったなんて……屈辱の極みなのだわっ」


「あ……、わたくしが時間稼ぎに開けた穴を……」


 立ち上がれた要因は、フランがアースホールで抉り抜いた地面。

 フランとメロディの間にあったそこに、生き汚く入り込み、大魔法の氷を移動させて斜めに蓋をしたからだ。

 つまり即席の防空壕だな。本来は自然災害である火災旋風に例えた攻撃を、マジで自然災害のように対処したとは驚きだ。


「ここまで、だな」


 彼女の魔法制御技術なら、今習得したわけではないだろうが、散々相手(フラン)にやられた、魔法発動後の形態変化が決め手になったのは皮肉だろうか。

 だがもう、双方は戦える状況にない。


「決闘は終わりだ。戦場じゃ生き残ったものが全て。この戦い、ウチのフランの敗けだな」


 決闘の終了と敗北を宣言し、見届け人であるメルヴィナにも納得させる。

 寧ろ彼女からすれば、ここまで我慢してレフェリーストップをかけなかった事には、忸怩たる思いがある筈だった。もっと早く割って入りたかったろうに、よく頑張ってくれた。


「それではこの決闘、見届け人メルヴィナの名において、メロディー・スターシア様の勝利と――」

「お待ちください」


 思いもよらないところから、待ったが入る。

 声を上げたのは、決闘の勝利者である筈のメロディー・スターシアだった。


「互いの経験の差、戦闘スタイルの相性。その他諸々を鑑みても、わたしの優位は明らかでした。多少舐めてかかってしまった事も、ハンデとすればまだ不足しています」


 静かに語り始めるその口上に、フランさえも口を挟まずに聞き入る。……眉間がピクッと動いたのは見なかった事にした。


「本来揺るがない筈だった実力差を、ここまで覆されたのです。どうして胸を張って勝者と名乗れましょうか」


 それも最後は、相手が変えた地形に縋っての決着でしたしね。

 そう情けなさそうに、スターシアは溢す。


「わたしは――己の敗北をここに認めます」

「なっ」


 彼女が次に発する言葉を察していた、オレとメルヴィナには驚きはない。

 ただ、ライバルとして相対していたフランだけが驚愕の声を上げた。


「あなたは認めないかもしれませんが、これは先にわたしが下した決定事項です。何者にも変えさせはしないのだわっ」


 そう言って、フランから視線を切る。

 フンとばかしに背けられたその仕草は、オレからすれば「ツンデレ?」と言いたくなるものだったが。

 今後も彼女たちは、犬猿の仲のライバルとして切磋琢磨していくのかもしれない。


「こ、こんなの認めませんわー!!」


 先程までの、疲労困憊を体現していた表情は何のその。

 元気に喚くフラン。

 そんなしのぎを削った相手を無視して、可憐な黒髪少女はこちらに近寄ってくる。


「それではアイザック様。あまり良いところを見せられずに恥ずかしい限りですが――」

「いや、謙遜なんていらないくらい凄かったよ。同い年くらいで、ここまで研鑽を積んだ相手は初めて見たし、純粋に尊敬した」


 自分を卑下するような言い方に、反射的に言葉を挟む。

 当然、告げた内容は本心であるけれど。


「そ、そうでしょうか」


「自分の奥さんの良きライバルに、嘘を言ってどうするんだよ」


 心なしか、負けたのに嬉しそうにツーサイドアップの黒髪が跳ねていた。

 どうやら、デミポーション的なものを服用したようである。

 窪みから這い出した時より、体を思う通りに動かせる様を見せていた。


「あ、ありがとうございます。そう言って頂けると救われます」


「それでは、治療致しますね」


 メルヴィナも戦いが終わったのだからと、回復魔法の準備をしている。

 フランに先に施そうとしたみたいだが、キャンキャン騒ぐ今の彼女は、元侍女であるおっぱい回復術士(ヒーラー)の手には負えなかったのかもしれない。


「いえ、一刻も早く去らないと、そちらのお嬢様が治療に応じないでしょう。わたしは明日で構いません」


「あ、じゃあこれ。有名な薬師のデミポーションだから。まだ治りきってないその足の治療に使ってくれ」


 オレが瓶に詰めた薬液を渡すと、彼女は嬉しそうに受け取った。


「あー、アイズ! わたくしを放って何をその女に恵んでますの! そんな間女にはローションでも掛けておけばいいのですわっ」


 テンションに任せて凄い事言ってるなあ。


「ふふっ。では、また精進して、あなたの心を奪いに馳せ参じますから、ねっ」


 キリリと決めた麗しい表情から、一変して茶目っ気に溢れたウィンクを見せ、颯爽と去っていくスターシア嬢。

 そんな姿を見て、女性に対する褒め言葉ではないと分かっていながらも、言わずにいられなかった。


「ははっ。最高にカッコいいじゃねえか、ちくしょうめ」



 ◇◆◇◆◇



 フランの治療などをして、ワプルやエルミアを回収し、翌朝。


 偶然にも彼女の定宿とオレたちが取った宿は同じだったのか。


「わたしに優位だったとは言え、相手が申し出た決闘。それなのに、わざわざ勝ちを譲らなくても良かったのでは……いや、でも……せめて引き分けに……」


 部屋から降りたところにある宿の食堂には、自身の判断を嫌悪するかのように、ぶつぶつと葛藤する黒髪の少女が居た。


「昨日、折角認めたのに……」


 どうもこの世界の女性は、一筋縄ではいかない子の方が多いみたいだ。

そろそろ新パーティーメンバーが出ます。

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