表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

96/210

氷VS炎 才能と努力が合わさりドラゴンを見せる

明日も更新しますヾ(o゜ω゜o)ノ゛


前話のあらすじ。

次撃に追尾性能を持たせる魔法により、強烈な一撃を与えたフラン。

しかしクレバーな判断を見せられ、メロディを倒しきれない。

逆に追い詰められた彼女は、天も裂けよと大喝した。


アイズ「それなんてザグル○ム」

作者「黙らっしゃい。威力増加してないから」

 攻める姿勢は気持ちだけでは足りない。


 相手が発したその言葉は、実に的を射ていた。

 フランの戦意は、未だ衰える事を知らない。

 先の宣言の通り、モチベーションもバッチリだ。


 ただ絶望的なまでに体がボロボロである。


 外傷が凄いという訳ではない。

 勿論裂傷は多々ある。しかし、致命的なのは足首の怪我だった。

 このバトルにおいて、機動力こそが最重要なポイントである。対人戦であり、互いの力量は既にある程度把握しているのだから。

 もう走れない。その事実さえなければ、まだ戦いにはなっただろうが……。


「そこまで言うのならば……こちらも手は抜きませんからね」


 フランの言葉の真意を図りかねていた風だった、黒髪美少女スターシア。

 彼女は、冷然と覚悟を決めたように己の武器を構えた。


 ただ慎重に。

 フランに隠された奥の手を探っている。


「……」


「……」


 沈黙が辺りを支配する。

 息を呑むような状況。

 本人とオレだけが、その舞台裏を把握していた。


(どうすんだフラン……お前にまったく打つ手がない(・・・・・・・・・・)事はすぐにバレるぞ?)


 彼女の研鑽の日々を殆ど知り尽くしている。

 そんなオレからすれば、フランチェスカ・キャンベル子爵令嬢として生きる中で身に付けたポーカーフェイス。その僅かな変化でさえも彼女の心境を察するばかりだった。


 もう隠し玉はない。覆す手段もない。

 ――そう。今この瞬間は(・・・・・・)、まだ。

 だからオレは叫んだ。最愛の女を支えるために。


「捻り出せ、フラン!!」


 本来、決闘中のアドバイスはタブーだ。

 ただ、野次や応援は黙認されている。

 こんな一言、アドバイスの内にも入らないだろう。だから、この瞬間しかなかった。


「え、アイズ!? いつからそこに居ましたの? ……何処から聞いてました?」


 そう言って恥ずかしそうにする愛しの奥さんよ。ずっと居たぞ。一瞬ズッコケかけたわ!

 いや、幾らなんでも鈍感すぎませんかね。相手のスターシア嬢は気付いてたようだぞ。

 呆れ気味の顔で窘められる。


「アイザック様は途中からずっと居ましたよ……。そんな事にも気付けないなんて、愛が足りないのじゃなくて?」

「ぐはっ」


 やめろスターシア。その言葉はオレにも特攻だ。

 まぁ、格上相手に戦線を拮抗させるため、相当な集中をしていたのだから、仕方ないという事にしておく。


「くっ、やかましいですわっ。わたくしとアイズは心で繋がっていますの。物理的な距離なんて、そこまで重要視していないのでしてよ」


 煽りよる。そして煽りに煽りを返しよる。


「心が繋がっている? よくもまあそんな恥ずかしい事が言えますね。……証拠も無い癖に」


 嫉妬心からか、最後はボソッと言葉にする。

 そして、扇子で自身の口元を隠した。


「証拠? 幾多ある証拠の内の一つがこの杖ですわっ! 見なさいこの芸術的なロッド。我が街に流れ着いた、鍛治士兼武器屋のドワーフ。彼が旅の中で手に入れた売り物の中でも、圧倒的な性能と希少性を誇るこの杖を」


「……だからどうしたと言うのだわ」


 成金め。そう言わんばかりのイライラした態度で、言葉を返される。

 フランは喜色満面とした笑みを返した。完全にマウントを取りに行っている。


「この杖を見つけてくれたのもアイズ。ドラゴン素材と高純度ミスリルで、強化してくれたのも夫ですの。愛ゆえに、わたくしの力が光り輝くようにと。……っ!」


 見せびらかすように顔の前に出した杖を見て、フランはハッとした表情を浮かべる。何か思いついたようだ。

 でも、心の中だけで言っておくが、その杖は単に仲間の強化ってだけなんだが……。同じ物が仮に回復術士(ヒーラー)向けであったのならば、迷わずメルヴィナに買い与えた事だろう。


 ほら、正直な話最近尽きかけているが、金銭は潤沢に用意して旅に出たので。

 減った分も、ドワーフ職人のアルドーさんに追加でミスリルを売って、だいぶ補填されているけれど。あの人が抱える在庫が国家の倉庫よりも多い件。


「ふん、物品を貢がれたからって心が繋がっているなんて、浅ましい思い違いですね。その杖の真価も引き出せないと言うのに」


 いい加減戦えよと思いつつ、更に喧嘩腰に返される。

 どこか負け犬の遠吠えのように聞こえてしまうのは、オレの気のせいなのだろうか。

 その言葉にすぐに反応を見せなかったフランの僅かな呟き。それを強化された聴力が拾った。


「速さが欲しいの……連携や不意を突いた一撃ではなく、純粋な速さが」


「使いこなせない武器を贈られて喜ぶ程度の低さで、この期に及び何をぶつぶつと……」


 覚悟を決めた顔をしたフラン。

 その両の手からは、逆転を予感させる風声(ふうせい)が微かに響いていた。

 それらを覆い隠すかのように、最後の煽りを相手に向ける。


「敬愛する殿方から、心のこもったプレゼントを貰った事が無いのかしら? お可哀想……」


「――ぬっころすのだわっ!」


 フランからすれば、オレを絡めた煽りに対する時間差の意趣返しだったのだろう。

 今までと違い、戦いのために意図して紡いだ言葉は、完全に相手の冷静さを奪っていた。

 だからこそ、それまで完璧だったスターシアの対応が一手遅れる。


「ここで決めてみせますわっ」


 寸前までの戦いのように、火魔法で火球を生み出す。

 加えるように土で礫を作った。今まで通りそのまま射出しても、簡単に避けられる。

 それを分かっているフランは、三段階目を自身の杖に向けて込め始めた。


「おい……おいおいおいっ。なんだよナルヴィクもフランも(おまえら)竹の子かよ!」

「あれは……アイザック君が使う付与魔法?!」


 思わず興奮して意味不明な事を口走る。

 頬が紅潮し、手に汗を握っているのが分かった。


 知ってはいたんだ。

 オレが出来る事を伝えるため、まだアイズ様と呼ばれていた時分に見せた付与魔法。

 それを、ずっと前から彼女が練習しているのを。

 ただ、さしもの天才令嬢も付与魔法は不得意なようだった。


 まぁ、近接戦闘能力ありきの魔法だし、身体付与フィジカルエンチャントではないただの付与魔法でも、肉体へのダメージはあるからな。

 フランの才能とは方向性が違うだろう。

 だからこれは、才だけじゃない。彼女の努力の結実だった。


「これが――これがわたくしの答えですわ!」


 辺りにばら蒔いた通常の魔法を、風魔法を付与した杖で振り抜く。さながらクリケットのようだ。

 加速した魔法がスターシアを襲う。

 通常の速度で目が慣らされたスターシアからすれば、緩急が付いて実際よりも早く感じた事だろう。チェンジオブペースってやつだ。

 事実、氷細工のように綺麗な顔が、僅かに強張っている。


「――第六階位、氷壁城郭!!」


 会話をしながらも練りこんでいた魔力で、見事なまでに威圧感を放つ壁が創造された。

 圧倒的な屹立。


「番外戦術とは卑怯なっ。しかしこの程度、乗り切れないと思われるとは、わたしも舐められたものなのだわ!」


 加速したとは言え威力が弱いため、フランの攻撃は生み出された氷の壁で阻まれた。

 風を纏って少しばかり炎が大きくなったとしても、焼け石に水ならぬ大氷にマッチだ。

 しかし、足を止める事はできた。


「多少意表を突いたところで、これでは先程までと変わらないのでは?」


「そうでもないさ。今、戦いの主導権はフランが握っている」


 読んで字の如く、戦いを主導する権利。

 ではどうすれば、それを握っているかという話だが。

 オレが考える具体的な定義の一つとして、自身の思うように戦場を展開させているかが挙げられる。


「ナルヴィクもそうだったが、基本、大魔法を発動させると移動が困難になる。あいつと違って、彼女はそこら辺も訓練しているようだけど、まだ甘い。咄嗟の行使だったから、ロクに動けないだろう」


 それだけじゃない。攻撃用に準備していた魔力を防御に使ってしまっている。

 それ自体は問題じゃない。一歩遅れた反応、迫り来る数多の魔法、早さと範囲が体感した攻撃より図抜けていた。完全に身を守る手段は、あれしかなかった筈だから。完璧主義者の彼女でなければ、また別の方策もあったけれど。


 問題はその後。精神的にも追い詰められた現状、まず自慢の壁を使って、魔力を練る時間を稼ごうとする。

 それがフランの狙いとも知らずに。


「固定標的なら恐るるに足りませんわ――風玉・竜爪牙ドラゴニック・ウィンドォオオ!!」


 自身の袈裟懸けに振り降ろす挙動を、風で無理矢理加速させる。

 付与した風魔法はナルヴィクよりも下手だが、発想が上手い。

 火魔法で膨張させた空気。

 それを風魔法と込めた付与の風で加速させ、無理矢理射出した。


「きゃああああ!!」


 氷壁の一部が、断絶される。


「まだまだですわぁっ!」


 一振り目で貫通した攻撃は、スターシアの美脚に傷を付けている。

 二振り目、土魔法の砂礫も混ぜて、広範囲の攻撃が、相手が傷つきながらもより厚くした氷の壁を破壊。


「このぉっ……あと少し、動きなさいわたくしの体!」


 なんなら、魔法が命中した敵よりもダメージを負ってしまっている、華奢な肉体。

 この時点で、腕を中心とした体へのダメージを考えれば、三撃目はどう見ても不可能だ。正直、今すぐ止めたいくらい、見ていられない惨状になっている。


 必死に衝動を押し殺していると、フランは力の入らない体を無理矢理動かし、風で体を押し込みながら、とある物を投げた。


「使いこなせない武器ならば、使わなければいいのですわっ!」


 華美な杖が、戦場を舞うようにクルクルと横断した。

流石、ですわお嬢様系ヒロイン。

作中では誰も追随できないマリー(りょく)だ……ヾ(ゝω・`*)ノ←

パンが無ければ、生地を捏ねれば良いじゃない(庶民的思考の基礎)。


今話で決着と言ったな、アレは嘘だ!←

も、もうほぼ決着ですんで……(;`・ω・)ノ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ