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氷VS炎 序幕

更新していなかった間にポイントが増えていて驚きました。

ブクマ・評価・誤字脱字指摘、ありがとうございます! 更新頻度上げれるよう執筆頑張りますっ。


前話のあらすじ。

男同士くんずほぐれつの決戦が終了。

アイズ「言い方に悪意があるな?!」

「それではこの決闘、私メルヴィナが立会人を務めさせていただきます。先程アイザック君から念押しがあったように、命のやり取りは厳禁です。四肢の欠損などでなければ、恐らくは治療できますが、過信しすぎないでくださいね」


「分かっておりますわ」


「決闘と言うには少し生温いですが、致し方ありません」


 互いの合意が取れたので、戦意を高揚させつつ武器を構える。

 相手を視界に捉えながら、取り出されるロッドを眺めていた。ところどころに鉱石があしわられている。

 特に先端にあるカッティングされた鉱石の大きさと純度は、その価値を想像するだけで目眩がしそう。


(アイザック様の剣を見る限り、純度の高いミスリルでしょうか。まったく、金銭を積んでも中々手に入れられないようなものを、こんな未熟な魔術師に与えるなんて……猫に小判と言っても大袈裟ではないのだわ)


 対峙するわたしは、鉄扇を一枚片手に構える。懐に予備を一本構える事も忘れない。

 これらも純魔鉄という名の希少な鉱石を使っているのだけれど……聖銀や魔導銀と称されるミスリルには及ぶべくもない。

 ただの剣士ならともかく、魔法を使う者からすればこれ以上の素材はないのだから。


「それでは、フランお嬢様から名乗りをどうぞ」


 アイザック様たちの故郷、オルウェイ王国では決闘の際、両者は名乗りを上げるそうだ。

 わたしの生まれた国には、見られない風習ですね。

 勿論、郷に入っては郷に従えと教えられて育ったわたしは、否を告げる事もない。ここはブレメンス連合国なので、彼女たちの郷ではないがそこは置いておく。


「わたくしの名はフランチェスカ・キャンベル。オルウェイ王国が誇るキャンベル子爵、その次女にして次代の英雄の妻。英雄に与えられし二つ名は竜滅。彼の剣として万物を薙ぐために――参りますわ」


 書物に残される程の英雄は、当然その仲間の大半も傑物とされる。

 なので、英雄は仲間に二つ名を与えるのがこの大陸の習わしではあるのだけれど……アイザック様の名は、今まで聴いた事はない。

 英雄の卵である彼が、今の内からそんな大層な名を授けるだろうか。


「フランお嬢様、それってアイザック君が野営の見張り中に、もし将来的に二つ名が必要になった時のためにって、考えてた内の一つじゃ……あぁ、気に入ったんですね」


 決闘の立会人として合流した、彼女たちの仲間の一人がそう呟く。位置的に、決闘相手には聞こえていないようだ。

 ふふっ、やはり彼女の見栄でしたか。少なくとも直接アイザック様から賜った訳ではない事を知り、わたしの顔が無意識に綻ぶ。


 ……どうでもいいけれど、立会人さんのあの馬鹿デカいお胸は何なのでしょう。

 わたしもそこまで小さい訳ではない筈なのに、圧倒的敗北感を植え付けられてしまった。

 唯一の救いは、あんな女性が仲間にいるのに、アイザック様は目の前に佇むあの貧乳を嫁にしている事です。あれになら勝てる。

 まったくの無関心ではなさそうですが、酒池肉林のハーレムパーティーではないようなので。(相手が)一人なら並べる。


「聞き届けました。それでは相対する者の返答を持って、この戦いを始めとさせていただきます」


「ええ、問題ないのだわ。わたしは――」




 わたしの名前はメロディー・スターシア。年齢は今年で18を数える。

 魔法の威力や困難さなどを指標に、各種魔法を各位階に分けてランク付けした、魔導先進国たるクレイドル魔導教国の学院出身だ。生まれは母の祖国で、また別の国だけれども、育ちはクレイドルね。


 この決闘の場にもなっている、ブレメンス連合国に所属する小国家群の一つに来た理由は、正直特にない。

 魔導教国に数多ある魔法使い養成学校。

 その最難関である、教国立トゥオーダ魔導学院に通う天才たちを見返し、首席で卒業したわたしには、目標がなかった。


 学院卒業までは、所詮秀才と馬鹿にしてくる輩を見返す事に全てを費やし、幼少から研鑽を積んできた。

 見聞を広め続けた事で、座学においても非凡な成績を残せるようになったが、いかんせんわたしの魔法素質は氷に傾倒している。多属性を簡単に使い分ける天才どもの真似はできない。

 そのため、武芸に励み、武術と魔法を効果的に織り交ぜた戦い方を模索した。

 結果として、実技で非常に高評価を得て、実践課題でも、その年の最高得点を叩き出している。


 だから、燃え尽きてしまったのだ。

 研鑽を忘れる事はないけれど、張り合う相手も少ない。

 魔法に関して劣る相手は大していないし、武術においても妥協を許せない性格が影響して「女にしてはかなり極められている」なんて、上から目線の評価を貰う程だ。

 以前のわたしなら、女性蔑視の評価に息を荒げるところだが、あくまで武術は魔法を活かすための手段である。特に張り合おうという気は湧かなかった。


 今更教授職をやる気もせず、実戦でも通用する力を身に付けたわたしは、冒険者になった。

 一つの国に籠る事で価値観が狭まっているのではないか、と危惧した事もあり、国を跨いで各国の文化を吸収していった。

 ……その中で一番ハマったのが、恋愛小説の類である事は秘密である。




 そうして旅を続ける中、学生時代はライバルとしか思えなかった男性という存在に、憧れを抱くようになった。

 物語に出てくるような、魅力溢れる殿方との出会いを夢想したの。

 ただ、そんな存在は殆どいなかった。皆無であると言ってもいい。


 どいつもこいつも自信過剰。口ほどに実力が伴っている男はいなかった。

 武術自慢は、大抵が重心の移動や技のキレなどに粗が見える。

 魔法使いは、魔導先進国の最難関学院を首席で卒業したわたしの眼鏡に、在野の冒険者が敵う筈もない。


 運命の相手なんて、作り物の話の中だけだったんだ。

 そんな諦観が頭を掠める。

 ちょっとした騒動を機に、それまで組んでいた冒険者のパーティーを解散してからは、何か興味を惹かれるものを一人で探し続けた。

 こんな事に意味があるのかと、常に自分に問い続ける日々。

 その繰り返しがようやく報われたのは、アイザック様に会ったから。


 第一印象(ファーストインパクト)は激烈だった。

 その歩法、重心の移し方、上半身と下半身の連動。

 自身の体の動かし方だけではなく、相手の体や運動エネルギーへの対処方法。

 旅の中で今まで出会った武術者の中でも、かなり上位に位置する身のこなしだった。

 しかも彼が持っている武器は剣である。抜剣していない時の動きでそれだ。戦場では、より流麗且つ華麗に動く事は想像に容易い。


 それだけじゃない。

 剣士としての技量は想像の域を出ないけれど、感じ取った彼の魔力は自分に似た何かを感じさせた。

 天才ではない者が、幼少の(みぎり)からのたゆまぬ鍛練により研ぎ澄ませたソレである。


 現実は、更にわたしに追い打ちをかける。

 長年の研究で感じ取れる様になった、魔力の性質。

 相手の魔力を至近距離で感じた時、どんな性質の魔法の使い手なのかが直感的に分かる。

 例えば相対している貴族のお嬢様、フランチェスカ・キャンベルの魔力は、熱を帯びたような感触だ。それに何らかが付随している事から、他の属性もある程度使えるのだろう、と予測が立つ。


 アイザック様の魔力は、初めての感覚だった。

 胸を刺すような、ビリビリとしたものをまず初めに感じた。

 無意識に体が震える。何故なら、今まで魔導の深淵を追究せんとする人たちに囲まれていたのに、彼の魔力から伝わる性質は、完全に初体験だったのだ。


 わたしは、一目で心を奪われた。

 その後に向けられた爽やかな笑顔。即座に紅潮した己の頬を撫で、自身の初恋を悟ったのは言うまでもない。


 だから、この戦い。負ける訳にはいかない。

 例え愛しき殿方の慕情が、憎き天才娘にのみ向けられている事を半ば悟っていたとしても。




「わたしはメロディー・スターシア。次は肩書き……? そうね、クレイドルの才媛だの、氷姫撫子(ひょうきなでしこ)だの言われた事もありますが……どうでも(・・・・)良いのだわ(・・・・・)


 決闘の前口上、その形式になんて拘る必要はない。

 ただ、想いを言霊に換えるだけだ。


「愛しき方の寵愛を受けるため――(ほふ)りましょう」

つまり恋に憧れた女の子が、自身の求めるスペックを高水準で満たしていて、しかも未知の魔法を使えて胸を突き刺す感覚を与えてくる(雷魔法起因)男性と会った。まぁ、仕方ないよねと。

即落ち二コマだけど、但しイケメンに限る気がするのは作者の気のせいだと(ry


メロディの独白長くなってしまった(o´・ω・`o)

位階のランク分けは、決闘終了後に表にでもします。

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