前菜終幕、そして女同士の決戦へ
前話のあらすじ。
嫁と、チョロイン間女、そしてホモ。
彼女たちのアイザックを巡る戦いが、フランの魂の叫びにより勃発した。
アイザック「解せぬ」
メロディー・スターシアの煽りと、意気軒昂に売られた喧嘩を買ったフラン。
彼女たちの合意によって、オレやワプルを置いてけぼりのまま決闘する事が決まった。
ぶっちゃけ精神的に介入不可だし、切実にメルヴィナ辺りの合流を求む。
オレですら空気を読むそんな状況の中、考えなしの言葉が木霊した。
「あのー、メロディお嬢。そんならついでに、あっしもアイザック君と戦ってみたいよぉ」
「はい?」
んー? ちょっとこいつ何言ってくれちゃってんの?
オレは変態とやり合う気はないし、イルネスト以降そこそこ対人戦こなしてるから、そこまで飢えてないんだが。
ほら、君に話し掛けられたお嬢も『なにいってだこいつ』と言わんばかりの表情でお前を見てるぞ。勝手に申し込めばいいのに、何故わたしに許可を貰おうとするのか、とか思ってそうだ。
「えーっと、勝手にすれば良いのだわ?」
唐突に話を振られて動揺したのか、先程までとは少し違う口調だ。
おまけに、語尾には疑問符が付いたスターシア嬢。
「良いので? あっしが勝ったらアイザック君は貰いますよぉ?」
「貰う? そうね。あなたの暑苦しさは苦手だけど、またパーティーを組んであげても、わたしは構わないですよ」
丁度、盾役が欲しいと思っていたところでもありますし。
彼女はそう締め括ったが、分かっていない。ワプルが何を意図して言っているかをまったく分かっていない。
(と言うか、こいつ以前のパーティーメンバーらしき奴がいるからか、隠す気無くなってないか?)
個人的にはそっちが気になる。
主に貞操的な意味で。
「おぉ、メロディーお嬢にそう言っていただけるとは嬉しいですなぁ。ただ、一緒にスルのはあっしの好みじゃないので、夜は分けましょうやぁ。一日ずつ半分こたい」
「おぞましい事を言うなぁァ!!」
高速で距離を詰め、平手を変態の頭に叩き落とす。
スパァァンと小気味いい音が街の交差点に鳴り響いた。
何事かと街の人々がこちらを振り向くが、そんな些事気にしていられない。
「?? アイザック様、ワプルがどうかしたんですか?」
「……いや、別に」
彼女は純粋なのだろう。
B○とか、ホ○、や○いなんて言葉とは一切無縁だと思われた。……いや、そもそもこの単語に反応したら、そいつは完全に地球出身だな。高確率で日本人だろう。
余談だが、今までこの世界で生きていて、現地語の単語を組み合わせた『同性愛』以外の類義語を聞いた事はない。日本ってそこら辺表現豊かだったよね……。
しつこいようだが、オレはノーマルなので別にこの世界で調べる気もない。
「あ、気になってると思うから一応言っておくったい。あっしとメロディお嬢は、元パーティーメンバーだったのよぉ。他のメンバーとの冒険者性の違いで解散したったい」
音楽性の違いみたいな言い方しやがって。
てか、もしかしてお前のその性癖が原因で解散になったんじゃあるまいな。
仮にそうだとしても、スターシア嬢は気付いてなさそうだな。
今も過去を思い出したのか、彼女は僅かに顔をしかめて言葉を溢すばかりだった。
「まあ、協調性に欠ける面子ばかりでしたからね。仕方ありませんでした」
真相は闇の中である。
◇◆◇◆◇
今になって思うと、素は高飛車っぽさが微妙に滲んでいたスターシア嬢である。
協調性に欠けるって、割かしブーメランだったよな。
「急な自分を巡る女の戦いが始まった事には同情するとっ。でも、戦る気になった後もまだ注意散漫なのは如何なものったい! ちゃんと集中しんさいやッ」
お前のそのエセ博多弁みたいな訛りも、如何なものだと思うけどなぁ。
オレの翻訳な訳だから、ギルティ対象はお前だろとか言われても知らん!
「うっせぇ、こちとらトドメまでの流れ構想中じゃあ! そもそも盾を投擲するのに四投流とか意味分からんし、メインの盾が四つってだけで皿みたいな大きさの盾を入れれば、二桁に迫る数使ってんじゃねぇか! ツッコミどころ多すぎなんだよッッ」
「はっはっはァ、そりゃ照れるったい」
「褒めてねぇよ?!」
因みに、街の外で戦っているとは言え、騒音を撒き散らす事に変わりはない。
なので、事前にギルドに申請をして執り行っている。
「はははは、アイズ君とおじさんの掛け合いは面白いな~。戦いも見所あってどっちに集中したらいいか分かんないや」
あの場で即決闘! とはならなかった事もあって、オレたちの仲間にも事の経緯は伝達済みだ。
エルミアは、樹木の上で寝転びながら観戦をしている。
余談だが、こいつもワプルの性癖は理解していない。どうも意味不明なギャグをかます、面白おっさんと思っている節がある。
「メルヴィナおねーさんも、こっち観戦した方が笑えたのにぃ」
「外野は静粛にしとけっ」
「はーい」
因みに、メルヴィナは恐らく女性陣の中で唯一理解っていた側だ。
少し鼻を押さえながら、「し、刺激が……私はフランお嬢様の勇姿を見守ってますね」とあちらの観戦に向かっていった。
これは憶測――という名の偏見――だが、メルヴィナはフランの事が大好きな事から、美少女自体も好きだ。
恐らく、オレ×ワプル×フラン又はスターシア嬢、という組み合わせに反応したと思われる。
……元々は、あらあらうふふなお姉さんキャラだった筈の彼女、唯一の常識人枠であるメルヴィナに、謎の属性が足され続けていく気がするのは、オレの気のせいだなのだろうか。中々に業が深い。
「シールドスナッチ!」
「ぬおっ! これは……ワイヤーか、危ねっ」
考え事をしながらも、ワプルの隙を窺っていた。
そして、慣れてきた盾のブーメラン軌道を横に避けたところ、転身するタイミングで剣に何かが引っ掛かり、持っていかれそうになる。
極細のワイヤーらしき物が、盾と向こうの籠手を繋いでいた。
全てではないようだが、手元に戻っていく盾の幾つかには仕込まれているようである。
「手の内を見せる時は、畳み掛けるのが基本だよぉ!!」
「そいつぁ賛成だな!」
体勢を崩したオレに、追撃が入る。
なんとか避けるが、その視界の端には先程と同じものが伸びていた。向かう先は、デカい木。
即座に二振り目の剣を使って、ワイヤーを切断する。やっぱこっちはデュランより斬れ味がいいな。
「なんと、これも読まれているとはねェ」
「こちとら幼少期の経験で、想像力豊かでねッ」
剣と盾が交差する。
背後では、木を起点にして絡み付いたワイヤーが、盾を急激に方向転換させていた。大樹を中心に盾の旋回が始まる。何処の高速メリーゴーランドだよ。
あの場に留まっていたら、ギロチンの刃のようなその勢いに吹き飛ばされていただろう。
ワイヤーによって、体が刻まれていたかもしれない。
「そろそろ終わろうか!」
「つくづく気が合うよぉ。でも、この間合いはあっしのものじゃないねェ!」
熟練の盾捌きで急所は的確に守るワプルだが、オレの剣戟は逆を言えば守りの薄い部分を突いていた。
その距離がお気に召さない奴は、こちらの渾身の一突きに合わせて後方に跳躍をきめる。
更には一つの盾を二本の木々を縫うように投げ、着地と同時に一番大きい盾を全力で投擲した。
「は?」
オレとは真逆の、奴の背中側に。
「さぁ、ラストダンスだよぉ!!」
最初に放った盾から伸びていたのは、ゴムのような性質を持つワイヤーのようだった。
タワーシールド並みのデカさを誇る、その後に放った盾が、ギリギリと音を立てて力を溜める。
「さぁ、さぁさぁさぁ! あっしと夜まで熱烈なダンスをするったいっ」
まるでパチンコ玉のような形で、最大の盾が射出される。
再度、それらと共に躍り出るワプル。
何て言うか、何処からこんな発想が出てくるんだこいつは。呆れるしかない。
「じゃかしい! 曲芸はここまでだッッ」
浮かんだ怒りと共に、最速で脚を振り下ろす。
そのブーツには、盾に確実で反応できるよう、雷魔法を付与していた。
――バゴォォオオォォ!!
一際大きな盾を足と地面で挟み込み、地に縫い付ける。
「なんとぉぉ」
左右から狙い付けられた盾を前進する事で躱した。
ワプルの本命、至近距離からの四投目には、火魔法で急激に膨張させた空気を下から当てる。
最後の一撃は、オレの頭の上を斜めに駆け抜けていった。
「凄い魔法だよぉ」
「これが科学の力だ、また一つ賢くなったな。――そして、これで終わりぃ!」
全ての攻撃を捌いた後。
それでも斬撃を防ごうと予備の盾を取り出すワプルを尻目に、魔法を発動させる。
「雷渦」
「ぐおおぉぉおおおおっっ」
鎧に捩じ込むように、雷魔法が炸裂する。
その光の瞬きが途切れる頃、プスプスと音を立てながら巨漢は沈黙した。
「ったく、いつかこんな魔法も嬉々として受けとめ始めるんじゃねぇだろうな」
自分の想像に身震いする。
さて、後は今回のメインバトルを見届けに行くとするか。
アイズ「かがくのちからってすげー!」
彼はなんとなくで科学とか言ってるので、ガチ科学使いとか出てきたら速攻で論破されるレスバ弱キャラですヾ(ゝω・`*)ノ




