誤解が解けても、結局嫌いな奴は嫌いって話
これにて二章、終幕です。
次章からは知恵ある怪物達との戦いに入ってゆきますヾ(o゜ω゜o)ノ゛
「あ、あとアイズ君の作るご飯がめちゃくちゃ美味しいからかな!」
「ご、ご飯……? 菜食主義で質素な食事を好む傾向のエルフがご飯……」
イメージが崩れたのだろうか。頬をヒクヒクとさせてオレとエルミアの顔を見比べる軟派野郎。
しかし、面白いからという理由の直後に遠慮なく付け足したという事は、逆にご飯だけがパーティー加入の理由ではないのかもな。
オレは神ではないから、相手の心を完全に把握する事なんてできない。
だからこそ、彼女の気持ちが伺い知れて良かったと思った。
なんせ、食欲だけで同行されるのは、正直な話やるせないからな。
「そ、それでは杖を持たれていない理由は、彼に強制されていたからではないのですか?」
こいつぶっ飛ばしたろか。
さっき誤解が解けたとか言ったけど、そんな事なかったようだ。
あと、こいつがエルミアに取る態度の理由、大体分かったぞ。
エルフは種族特性として風魔法が得意だからな。
この世界では、自身の得意属性をより高いレベルで扱える存在に敬意を払う文化がある。
ナルヴィクはそれが少し過剰なのだろう。エルフの種族的性質について無駄にオタク気味だし。
水と風の魔法が主軸なこいつだが、一番得意なのは水魔法と思われる。オレの直感だが、風魔法は伸び悩んでいるように感じた。
そのため、より強い憧憬の念がある。とかそんなところと予想する。
「えー、だってあたし魔法使えないもん」
「な、純血のエルフなのに?!」
思った事をすぐに口に出す。
言われた相手の気持ちは考えない。
そういうとこだぞ。
「おうこら。ウチのパーティーメンバー、ディスってんじゃねーぞ。第一、オレとフランがいる限り、このパーティーに魔法しか使えない軟弱エルフなぞいらんわ」
言われ慣れてるのだろう、あっけらかんとした顔で薄笑いを浮かべそうなエルミアの前に、オレは立つ。
今更かも知れないが、こんな心ない言葉に慣れてはいけないと思ったのだ。
彼女は少しの驚きの後、少しだけ口角が上がり傍観の姿勢を見せる。
「そ、そんなつもりは!」
「あらあら、ここにも精進が必要な男の子がいますね」
魔法が使えなくても尊敬の対象なのか、ナルヴィクは目に見えて焦っているようだった。
言葉は選ばないと誤解を生む。それが解けてもわだかまりが残るし、相手を傷つける事には変わらない。これを教訓として欲しいところだ。
そう感じたオレは、目線でメルヴィナに頼んで諭してもらった。
オレから言ったら反発しそうだしな。
「おい、アイザック君。色々と誤解があった事は認めるが、その不愉快な表情で僕を見るのはやめてくれたまえ」
「……は?」
精神年齢的に年上だと自負していたオレは、無意識の内に若者の成長を見るような顔になっていたようだ。
後からフランにそう指摘されたが、だからと言って決闘で負けたすぐ後に、こんな言い草をぶつけてくるとか、なんなん?
メルヴィナに説教を受ける姿を嘲笑っていた、とかでもないのに。
「君は強い。そして、その強さを見抜けなかった僕はまだまだ未熟だ。認めよう」
ほーん。出会い頭の態度の割には殊勝やん。
直前の言葉を思えば、次に続く言葉は予想できるのに、一瞬だがそう思ってしまった。
「――だからと言って、君の事を人間として尊敬できるかは、また別の話だ。君を見て不愉快な気持ちになる事に変わりはない」
「……」
それ、このタイミングで言う必要ある?
今、口を開けば罵詈雑言が飛び出してしまいそうで、懸命に堪える。
我慢我慢。オレの方が前世と合算では年上なのだから……。
自分に言い聞かせる間に、更に追撃の言の葉が紡がれた。
「そして、次にまた合間見えた時に勝つのは僕だ。剣の技量は進むべき先が見えた。何より、付け焼き刃の付与魔法は、まだまだ無駄がある。それを研鑽すれば……いや、待てよ。彼と違って僕の水魔法であれば、肉体に魔法を宿す負担も少ないのでは……」
オレに向けた発言の中で、ひらめきがあったようだ。
ナルヴィクは急に自問自答し始める。
いや、この世界には著作権とかないけど、少しは遠慮せぇよ。
「てめっ、身体付与までパクる気か!? ふざけんなよ」
「? 寧ろ凡夫のオーラ滲ます君の技術を、天恵を受けし僕が認め、躍進の基盤とし広めるのだぞ。逆に感謝してほしいものだな」
「はぁぁぁぁあぁぁぁぁ?!」
オレは自身の無双が第一だから、有名になりたい訳でも、流派の開祖とかになりたい訳でもないんだよ。
余計なお世話どころか大迷惑だわ。
何、当然だろと言わんばかりの大真面目な顔で宣ってやがる。
――やっぱこいつ嫌いだ!
オレの浮かべた顔色から感情を読み取ったのか、苛立たしげに眉を寄せる長髪男。
「まあまあアイズ、落ち着いてくださいまし。気持ちは察しますが、勝者があまりイライラするものではなくてよ」
フランの気遣いに導かれ、沸き立つ怒りを抑え、その根源と距離を取る。
あのウザ男の対応は、メルヴィナに任せよう。
「ねーねー、アイズ君。スター君は仲間にしないの?」
ようやく落ち着いた折、エルミアがとんちきな事を言い始めた。
あと、名前覚えるの放棄したなこいつ。
「は? なんでそう思った?」
誰があんな奴と旅をしたがるかよ。
男の仲間が欲しいとは言った。でも、オレとフランを足して二で割ったような中途半端な存在、ウチのパーティには必要ない。
欲しいのは肉盾……は冗談だけど、純粋なタンクや魔物との近接戦闘ができる人材だ。
前衛の手数不足と言い換えても良い。
「えー、っとぉ……。と、特に理由は無いよ?」
鈍いながらも、オレの威圧的な言葉から相当な嫌悪感を汲み取ったようだ。誤魔化すような愛想笑いが向けられる。
因みに、後でメルヴィナが理由を聞いたところによると「アイズ君とのやり取りが面白かったから」とか言ってたそうな。
本当にこのポンコツエルフは、自分の欲望に忠実だな。
「あいつは仲間じゃねぇ。別の何かだ」
「ふふっ、そうですわよエル。アイズも、まだ貴方には敵わないけれど、ライバル出現ですわね?」
「……そうだな」
より英雄潭らしくなってきた。フランはそう考えてかワクワクしている様子である。
あえて嫁の楽しそうな物言いを否定するような真似はせず、消極的な肯定を返した。
「お待たせしました。彼はこのままエルーダに戻って、今回の顛末を報告するようです。荒れてしまった周囲も、ギルドで対応できそうなので、私たちは行きましょうか」
メルヴィナが戻ってきてそう言った。
諭すだけでなく、今回の後処理についても話し合ってきたらしい。
甲殻犀の軍勢による行進と。一掃のために使われた魔法。そして、オレたちが引き起こした戦闘による余波。
ミスリルゴーレムの時程ではないだろうが、後始末をするとすれば多大な労力が必要だった。
それを担わなくていいのは、かなり有り難い話である。
はぁ、前世のゲームや今世の英雄潭と違って、敵を倒したり問題の根元を取り除けば終わり、といかないところはつくづく面倒だな。
「実はわたくし、この国を出るの初めてなんですの。楽しみですわ」
「オレもだ。新しい国では、どんな冒険が待ってるかな」
「私は元々他国出身でしたから……」
「あたしも同じく~。この旅が面白いし、里帰りは暫くいいや!」
四人に増えたこのパーティーで、国境に続く道を進む。
ナルヴィクに任せた伝言により、指名依頼を出してくれた商人も動き出せる事だろう。
土壇場の覚醒的な成長が望めないだろうオレは、自身の力を極限まで研ぎ澄ませたつもりだ。
今後、そんなオレでも苦戦するような強敵も、どんどん出てくるような予感がする。
それでこそ、万難を覆した最高にカッコいい無双ができるってもんだが。
仲間ではけしてないけれど、ライバルも増えたしな。
「さて、じゃあ次の街……じゃなくて次の国へ、だな」
オレたちの旅は、次の段階へ入ろうとしていた。
閑話を少し挟んで、三章となります。
三章は割と物語の最後に繋がるエピソードと剣術大会、四章は主人公以外の活躍がかなり多い予定です。早く四章書きたい(*つ´・∀・)つ
魔法のランク付け(上級とか中級みたいなの)も次章で出てきます。
三章開始まで、二週間程お時間頂ければと思います。
閑話は更新しますので(*;д;)ノ




