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新装備と新天地へ、ついでにポンコツ系腹ぺこエルフ

前話のあらすじ。

「ゆうべはお楽しみでしたね」by元凶


1日空きましたが、その分文字数いつもより多めです( ´・∀・`)

分割して文字数増やすか集約するかで、延々迷ってたら寝落ちしましたorz

「ほれ、これがお前さんの力を十二分に引き出すためだけに打った、渾身の二振りじゃ」


 老鍛冶師アルドーさんに差し出されたのは、輝かんばかりに異彩を放つ剣だった。

 そう、ようやくオレの新たな相棒が完成したのである。


「素材としても技量としても、儂の持てる最大限を妥協無く詰め込んだ。ミスリルやドラゴン以外にも、イルネスト魔鉱窟で手に入れた各種希少鉱石も注ぎ込んどるでな。これ以上はもう伝説クラスの領域じゃ」


 やりきった感を存分に漂わせるアルドーさん。

 そんな中ウチの女性二人は、剣が放つあまりの威圧感に少しだけ引いていた。


「いえ、これ自体既に国宝クラスですわよ……」

「そうですねぇ。素材だけでも凄いのに、ドワーフの技術で互いを相乗させあった逸品ですし。正直値が付かないレベルでは?」


 剣としての能力は最早言わずもがな、という程にはオレが見た中で最高の出来だろう。

 勿論それだけでなく、形も洗練されているな。

 オレがドラゴン戦までに使っていたものとも、ダンジョン攻略時に借りていたものとも見た目はまったく異なっていた。


 批評家ではないので正直表現に困るが、一言で表すと凝っている感じである。


「アイズ、内心が漏れ出ていますわ。それに、流石にその感想ではこの剣も製作者も報われませんわよ」


「むぅ、そうか」


 改めて剣を見やる。


「その二振りはあたかも双頭の竜を顕しているかのようだ。だが、まるで双子が髪型を変えて個性を主張するように、似た意匠の中でも醸し出す雰囲気と細部の装飾、剣の厚みなどは異なっている」


「双子……」

「髪型……」


 女性陣の呆れたような声はスルーである。

 片方が従来通りのバスタードソードに類似した形状だ。

 双剣として運用しない時は、こちらがメインで使う事になるだろう。


「また、どちらにも言えるが、竜頭を模した鍔になっているのも特徴的である。かなりカッコ良いけれど、これは恐らくデザインよりも隠された機能があると見た」


 しかし、何故オレは内心を朗読しているのだろうか。

 そんな疑問を塗り潰すかのように、製作者から解説が入る。


「流石に目敏いのぅ。鍔の部分には竜仙骨を砕いた物と、削った竜の魔石を混ぜておる」


「成る程。直接剣に魔法を纏わせるより、ここに付与して剣身に引き出す訳ね。今までより剣に掛かる負担が格段に少なそうだ。見た目より頑丈みたいだし」


 老ドワーフは、分かっているなという顔で頷く。

 滲み出ているドヤ顔よりも、血走った目が怖すぎて反応に困るな。何日寝てないのこの人。

 ただ、間近で見せただけあってオレの戦闘スタイルと難点に最適な解答を用意してくれたようだ。流石過ぎる。


「当然じゃ。魔法触媒は得てして脆いが、近接武器が一部とは言え脆いのでは使い物にならんじゃろう。最適なバランスを見つけ出すのにどれだけ時間を掛けた事かっ」


 触媒として調整されたミスリルを主にしつつ、ドラゴンの中でも魔力や魔法に馴染み深い素材を混ぜているようだ。

 魔法に適正が高い金属(ミスリル)と、その強度を上げつつより魔法への適合を上昇させる触媒(ドラゴン)の融合である。


 切れ味や頑丈さを追求した刃の部分とは、また違った造りだな。

 柄や握り手(グリップ)にもドラゴン由来の素材が使われている。

 加えて、鍔の下だけ色が違うのは、恐らく別種の鉱石で構成されているからだ。


 この色合いと場所、恐らくは魔力を通し辛い素材なのだろう。

 付与魔法が使い手自身に少しでもダメージを及ぼさないように、という職人の果てなき(こだわ)りを感じる。


「良いね、実に良い。性能、見た目(デザイン)、来歴。様々なものが混ざりあって、最高にカッコ良いな」


 握って軽く振ってみるが、いやに手に馴染む。

 まるで旧来の友のようだ。実家のような安心感――ではちょっと例えがおかしいな。

 ニャイトを撫でた時のようなしっくり感?


「アイズ、何を考えていまして?」


 フランの視線が少し痛い。

 何故だ。今回は言葉に出していない筈。


「因みに、銘はあるんですか?」


 メルヴィナのナイスな質問がアルドーさんに飛ぶ。

 よく空気を変えてくれた。


「あぁ、あるぞ。デュランとルダラーンじゃ」


 人名みたいだな。


「遠い先祖の名から取っておる。 意味は我らドワーフ語で不壊と不朽を表す」


 へぇ。語感と意味から、オレは伝説の剣を思い浮かべていた。

 前世で創作物に良く使われていた、不滅の聖剣デュランダルである。


 よし、オレの中でこいつらは、二振り揃った時はデュランダルだな。

 由来通りに、どんな強敵との戦いも共に在って欲しいものだ。

 いや、こいつらなら体現してくれるとオレは確信している。

 


「あ、ご所望の替えの剣身も渡しとくぞ」



 ……………確かに頼んだのオレだけどさぁ!



 ◇◆◇◆◇



 新装備を得てからは早かった。

 その日の内に出立の準備を終え、翌朝早朝にイルネストを離れる。

 今回もニャイトがごねるかと思ったが、キャンベル家の居心地が良かったのだろうか。守るものを見つけたと鳴いて、居残りを決めてくれたようだった。

 猫が守るもの……(おやつ)? そりゃ犬か。


 ニャイトが着いて来た事が判明して以降は、かなりの頻度でじゃれあっていた。

 長年連れ添ってきた相棒との再びの別れだ。寂しい思いもある。

 だからこそ、目的を達成して元気な姿を見せてやろうと想いを新たにする事ができた。


「さて、まずは山沿いの街道を進んで、ウコロフ村を目指しましょうか」


 旅の目的地は特に決めていない。

 なので、皆の意見でその時々の進路を取る事にした。

 今回は、獣人が見たいフランと、ギルドで漏れ聞いた薬師からデミポーションを買いたいオレ。

 二人の意向が混ざり、ここから北東に進むと着く街、エルーダへ向かう事になった。

 その途中で獣人の村、ウコロフに立ち寄る予定である。


「だなぁ。……フラン、もう一度念押ししておくけど、断られたら大人しく退散するぞ?」


「分かっておりますわっ」


 駄目だこの娘、目が分かってない色してる。


 ドワーフ以外にも獣人などの幾つかの種族は、この世界に一定数存在する。

 これまた似た種族を、オレが勝手に定義しているだけだが。

 異種族単体で構成された村は、他の種族に対して大概は閉鎖的だ。

 獣人に限った話ではないけれど、交流が失敗に終わる可能性は多大にある。


 まぁ、前世でもどっかの部族に日本人が「へーい!」と絡んで行けばそりゃ警戒されるって話だが。

 その点、前世の破天荒ディレクター、N氏は人外だったと今では強く実感できる。


 自治区外部に自ら出た人たちは比較的オープンな人々が多いため、どちらかと言うと村よりも獣人が多い街を目指したいところだ。

 そうなると、この国を出なくてはいけないのだけど。


「わたくし、エルーダも行った事がないのですわ。凄く楽しみでしてよ」


 我が嫁はいつでも楽しそうである。

 曇らせたくない、この笑顔。


「山があるのはアンデル出身のオレからしたら親近感湧くが、規模が違うからなぁ」


 エルーダは霊山の麓にある。

 地理的特徴が影響して薬の素材には事欠かないが、その分魔物の驚異もそこそこ多い立地だ。

 常設依頼の難度を考えれば、イルネストより確実に冒険者のレベルも高いだろう。


 余談だがアルドーさんは、フランとメルヴィナにも有り余るミスリルで装備を作ってくれている。

 当然技術料は高くつく筈が、大抵はドラゴン素材を融通する事で賄った。

 各種装備の充実を背景に、我がパーティーはオレ無しでもエルーダ周辺の魔物に遅れは取らない。

 安心して無双に臨めるというものである。






「ここらで休憩しよう。お昼だけど味噌汁作るぞー」

「火加減は任せてくださいましっ」


 オレの料理が大好きなフランが、ビシッと手を挙げて役割を主張する。健気かな?


「あらー、それでは私は食べられる野草を摘んできますね~」


 メルヴィナは過去の経験から、その方面の知識が明るい。

 新しいメイスも忘れずに持って行ったので、策敵は継続するが心配は不要だな。


 ……まぁ、明るいと言うよりは、実体験で体が味の是非と毒の有無を知っているという話なので、少し物悲しいけれど。


「よし、こんなもんか。メインはオーク肉の生姜焼だぜ♪」


 イルネストから更に辺境に行った場所では生姜が取れる。

 市場でたまたま見付けたから買い占めたのだが、早速調理してみた。

 それもこれも、完成度はまだまだだが、なんとか作れた味噌と醤油様々である。語りたい、この製作秘話……という名の苦労話。

 多分メルヴィナなら話に乗ってくれるだろう。彼女は生死を分かつ話で、オレは自業自得で生死をさ迷った話だけれども。


「これはまた芳しいですわね。食欲をそそりますわ。……まったく、アイズはわたくしを食いしん坊キャラにでもする気かしらっ」


 魔物食を施して各種ステータスを上げるため、あの手この手で嫁の給餌に勤しんでいたら、いつの間にか謎の疑惑が立ち上がっていた。

 誤解を解きたいところではある。

 ただ、経験則から言い募ると余計な誤解を生む気がして止まないので、ここは黙る事にした。


「美味しいです~。持つべきは料理の出来る弟……じゃなくてリーダーですねぇ」


 メルヴィナは頬をオーク肉で膨らませながら、極上の笑みで宣う。


「むっ、幾らメルでもアイズは渡しませんからねっ。確かにこのランチは屋敷でも味わえない奥深さですけれど」


 威嚇しつつ、微妙に納得のいかない表情で食べ進めるフラン。


「んじゃ、オレも食べるか」


 二人を眺めながら自作の箸を皿に伸ばす。

 しかし、盛られた肉をオレが掴む事はなかった。


「んん……魔物ではないな。けど、方向は森の中。怪しさ満点だなぁ」


 昼下がりの普通の光景だが、オレの五感が他者の存在を捉える。

 警戒していると、街道から離れた木々の隙間を縫って、軽装の人影が抜け出てきた。


「何やらこっちから、あたしを引き寄せる何かが……」


 鼻をひくひくさせつつ、のたのたと動くその女性の耳は細く尖っている。

 これはまさか、あのファンタジー定番種族――


「あでっ。わわっ?!」


 ――エル、フ……? おいこいつ森の民の癖に、木の枝に引っ掛かって茂みにダイブしたぞ。

 そこはかとなく漂うポンコツ臭。


「まあまあ~、大丈夫かしら?」


 メルヴィナが助け起こし、女性に付着した草木をパンパンと払う。

 女エルフは礼を言った後、腹の音を響かせながらこう宣った。


「い、良い匂い……ご飯、出来ればとびきり美味しいご飯が食べたい……」


 随分図々しいなこの腹ぺこエルフ!

 オレの飯の香りがお気に召したらしいが、お前からは残念な香りしかせんぞ……。

最近推敲の時間も多く取れていないので、ちょっと書き貯め期間に入ろうかと思います。

土日は確定で更新しますが平日は2~3回とし、週4~5更新にさせてください( ゜Å゜;)その間に書き上げますのでっ。

再来週にはまた更新頻度挙げていく予定ですゆえ、今後もお付き合い願いますヾ(o゜ω゜o)ノ゛!



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