ドラゴンクッキング~お披露目は結婚式の後で~
昨日は更新できずに失礼しました。
歓送迎会の時期ですが、お酒が飲めない人を二次会に連れ回すのは皆さんも止めましょうね(*;д;)
因みに、私はカシオレ一杯で顔が赤くなる人種です(´・ω・`)甘くて美味しいケド
尚、今話に出てくる料理長含め、登場キャラの大半は名前覚えなくてオッケーです。
「なぁぜオレは婚約者にあんな顔を見せられて、中年のおっさんの元に行かねばならぬのだ……」
恐らくは明日、結婚式後の晩餐会で出されるドラゴン料理の話だろう。
基本的に身内のみで式は行われるが、一部懇意な貴族は招待せねばならない。
昼食については、招待者に配慮して貴族向けの料理が提供される。
当然そっちにはオレはノータッチである。
「昼のメニュー決めが難航したとは聞いたが、幾ら何でも前日じゃ最後の調整だけだとしても遅いだろうに」
ぶつぶつと独り言が溢れてしまうのは、何もフランとの時間を邪魔されたからだけが理由じゃない。
オレ自身、本格的なドラゴンクッキングと実食はまだできていないのだ。
周囲の要望もあり、アイディアだけ出して今まで我慢していたからである。
オレもどうせなら、本職の腕で作られた物が食いたいしな。
「呼ばれたので入りますよっと」
オレはそう声を掛けて厨房の扉をくぐり、おっさんの根城に分け入っていく。
「お、来たデスね。お呼び立てしてごめんデスよ」
特徴的な話し方をするこの男は、キャンベル家の総料理長ルードである。
アンデルから更に南下したところに位置する、言語体系の異なる国出身の細目のおっさんだ。
「ったく、人の恋路を邪魔する奴はなんとやら、だぞ」
「なら、もう成就してるから問題ないデスね」
口の減らん奴め。
まぁ、この家でオレに気さくに接してくる奴はこいつくらいなので、度が過ぎなければ何も言わないでおく。今世は何故か料理人と親しくなれる事が多い気がするぜ。
流石に伝言を残したタイミングでは、仕える家の令嬢とその婚約者が逢瀬の最中とは思わなかっただろう。
今はオレの様子からある程度察したようだけれど。
「それでは折角お時間を頂いたのデスから、調整の批評と改善の意見を早速願いますデス」
「あいよ」
いきなりだが、フェイロン商会本邸の料理長、ジェスが産み出したとされる幾つかの真新しい料理は、低位の貴族の中でも耳聡い連中の間で話題になっている。
そして、シャルさんからオレが旅の道中、珍しい料理を何度か披露したと彼は聞かされたらしい。
そんな背景もあり、この家でルードと遭遇した時は、早々に質問責めにあった。
オレの前世から持ち込んだ料理知識に唸る彼に、知り得る調理法を根掘り葉掘り聞かれた過去は最早トラウマに近い。
最初は普通にドラゴンをより美味しく食べるために談義を繰り返していたのだが……。
今では長時間に渡る拘束と引き留め、それらから伝わる過剰な熱量に流石にドン引きしている。まったく、金持ちに雇われる料理人はこんなんばっかかよ。
「やっとこさ、完成の域に辿り着いたデスねぇ」
ほぼ無心で改良へ向けたアドバイスを行っていたところ、調整を残すのみとなっていた事もあり、気付けば作業は終了していた。
ルードのおっさんの糸目にも、心なしか達成感がみなぎっている気がする。
「あぁ、なんとかな。試作に次ぐ試作で、料理さえ伝えれば後は楽できると思っていた過去の自分にドロップキックかましたいぜ」
昼は冒険者として依頼をこなし、夜は三日に一度は必ず呼び出されて改良作業だ。肉体的な疲労でなく、精神的にげんなりしていく日々だった。
新婦と一緒に感動を味わうべきとか言って、殆ど試食もさせてくれねぇしな。
さっきみたいな恨み節も、そりゃ漏れるって話だろ。
「仕方ないデスよ。ルーとしても初めての料理ばかりでしたデスから」
相変わらず男性だが一人称が自身の愛称という、濃いキャラのおっさんだな。
プライベートであれば、正直積極的には関わりあいになりたくない人種である。
まぁ、この国の自分を表す単語が発音しにくいだけらしいが。
「抜かせ。完成度を追求しすぎなければ、ここまで苦労しなかっただろ」
「それは、いいっこなしデスよ。極上の素材があり、未知の料理法があり、お嬢様の門出という相応しき場があるのデス。至極の一皿に仕上げるべきデしょう」
同意する気持ちもあるが、この凝り性を極めた変人シェフには本当に苦労させられたぜ。
料理とは研鑽の積み重ねである。
食材をどう調理すれば一番美味いかなんて、各人の好みを考慮しなかったとしても相当数の試行が必要だ。
当然、素材によって特徴も異なるため、素材毎に試行を求められる。
「デスマーチめいた比率の研鑽は、今後はオレの居ないところでやってくれ」
「それは勿論デスよ、ええ」
例えば二足歩行の豚であるオークは、四足歩行の豚と比べてより美味しい部位が異なる。
具体的にはバラ肉なのだが、その詳細は過去にも触れたため、改めて語らないでおこう。
つまり、竜肉の美味な部位を他の肉を参考に考えるのはアリだが、そのまま当て嵌めようとするのは、まったくもってナンセンスという話だ。
オレとルードはドラゴンを調理した経験がない。
だからこそ今まで、かなりの試行錯誤を重ねてきた。
結果として、各料理に最も良く合う部位の選定が完了したという訳だ。
「メインはこれデスね。シンプルイズベスト、ドラゴンステーキっ」
「あぁ、だがただのステーキじゃない、熟成竜ほほ肉のステーキだ! そしてその甘すぎる竜脂に対抗するべく各種ソース……玉ねぎのおろしダレが一番相性が良さそうだな」
渾身の竜ほほ肉のステーキは匂いだけで周囲を虜にし、一口食べた他の料理人たちを纏めて昇天させている。オレも早く食いたいぞ畜生めっ。
勿論、調理法も前世知識を元に最善を尽くした。
アルミホイルなんかはこの世界に無いけども、一番後味が良いのがそれをイメージしてフライパンを重ねた余熱調理だったのがまたオレの笑いを誘う。
「次は、見た目が茶色いデスが甘い匂いがやはり惹き付ける竜肉の角煮デスっ」
「こいつにはオレがアンデルで製作した各種調味料を全力で注いだからな。再現するのはほぼ不可能だぜ。脂の入り方なんて、まるで芸術品だろ」
竜のバラ肉をメインに使いつつも、歯応えにバリエーションを持たせるために他の部位も入ってる品である。
オレが腹を下しながらも作りあげた醤油ーーまだ完成とは口が裂けても言えないクオリティーだがーーの晴れの舞台だな。
この世界に醤油が存在してなかった以上、少なくともオレの知る限りこの世界で初の角煮となる。
「そして、ルーも存在は知っていたローストオーク……そのドラゴン版デスね。その名もローストドラゴンッ」
「牛で言えばウワミスジ辺りになる、一番この料理に合った部位だからな。期待しかできねぇ」
場所的には竜の脇付近なので、そこだけが気持ち的に少し微妙だ。
ただ、サシが入っているものの固くなく、本当にローストドラゴン向きの肉質らしい。
「最後が、少なくともこの大陸デは初となるデあろう料理、ドラゴンのハンバーグ! 名前としてはドラバーグだっけ? ルー実はこれが一番好きヨ~」
「竜肉100%で作るために、各部位のミンチを配合変えて試しまくった最終結果だからな……これで美味くなければあの地獄の日々が報われん」
他の肉を混ぜても完璧に負けてしまうので、100%で作るしかなかったとも言う。
ハンバーグについては、これ以上語る言葉を持たないな。
公式的にドラバーグで通し、考案者をルードとする事でオレの存在も隠蔽しつつ、オレの他に転生者が居ても料理名に違和感を持たれにくくする策である。
「お疲れさまデスよ~。メインの肉料理がこんなに出来れば、もう料理の心配は不要デス。明日を楽しみにもう寝るデス~」
「おー、そうさせてもらうわ。流石に疲れた……」
こうして、程好い疲労感は緊張で寝付けないなんて状況を生み出さず、深い眠りにオレを誘っていくのだった。
夜半過ぎ、暗躍者たちが各所で踊っていた事にも気付かずに。
「さて、行きましたデスね。後は添え付けのソースと角煮のタレをこっちに入れ換えてーー」
「これで……完成じゃな。ふははは、あやつが驚き、泣き叫ぶ様が目に浮かぶようじゃわい」
「ふむ、あちらも準備が整ったようですね。それではニャイト氏、明日はよろしくお願いしますね」
「ンナァー」
おかしい。旅立つまでに無駄に文字数掛かるぞぅヾ(o゜ω゜o)ノ゛




