リザルトッ!……の運搬はリアルだと面倒という話
ミスリルゴーレム戦、消えた文章思い出せずにあっさりし過ぎたかな……と思うので、加筆修正を予定しています。
オレは今、ゲームのインベントリや、収納魔法などの重量を感じず持ち運び楽々! な魔法が切実に欲しい。
「ぐぬぉぉおおぉぉ、今こそ目覚めよオレのチートぉぉ……」
ボス戦後の後始末は散々だった。
それこそ、残務処理が真のボス戦と言っても過言ではない程に。
目論み通り、一撃の元で強敵を倒す事には達成した。
だが、あの戦闘では多くの魔力を注ぎ込んだのである。
使い切った訳ではなくとも、魔力消費はかなり激しい。
そんな状態でも、持ち帰るものは持ち帰らなければならなかった。
この世界は、ゲームでもなんでもない。
故に、残務処理が文字通りの重荷になり得るのである。マジで地獄だぞこれ。
「アイズ、大丈夫ですの? 無理はしないでよろしくてよ……?」
フランが今心配しているのは、恐らく戦闘後の身体に鞭を打っている事だ。
でも違うんだ、そうじゃない。
肉体的損傷は皆無だが、単純に重すぎて死にそうなんだよ。
ボスに勝ってその死骸運搬の重量で死ぬとか、あり得ないぞ。
「お、重いぃぃ……」
怪獣バトル物に出てくるくらいに、超巨大だったミスリルゴーレム。
小学生でも分かる程、その身体は大きくて重い。
そして、全てがかなりの価値を誇る資源だ。
他の冒険者も潜る可能性がある以上、ここに捨てていく訳にはいかない。
「いえいえ、その重量だとアイザック君しか持てないんですから、頑張ってくださいね~」
メルヴィナもかなりの重量を抱えての帰路なのに、いつも以上の笑顔が漏れている。
こいつ、地味に守銭奴キャラみたいだからな……。
当然全ての量を使う訳ではないので、残りのミスリルは売る事になる。
オレの武器の分以外にアルドーさんが必要な分は、彼の取り分で十分だからだ。
ただ、今回のように取れる見込みが少ないため、結構な在庫を抱えたがっているが。
その他、鍛冶師仲間に供与したいらしい。聖人かな?
「これで生涯の目標に何歩も近づけるわいっ、ありがとなお前ら!」
おっさんドワーフは当然ハッピー全開だ。
当初の採掘予定より純度も量も桁違いだから、然もありなん。
尚、ミスリルゴーレムがあそこに現れた理由は推測の域を出ないが、一つの仮説が建てられた。
今まで潜っていた冒険者が行わなかったくらい、遭遇したゴーレムを全て駆逐していったからではないか、と。
かなり奥地にまで入り込んでいたので、最奥にある鉱山をダンジョン化したらしい鉱石が、防備のために向かわせた可能性だ。
やはりダンジョンコアがあるのでは? そう思ったが、最早鉱山自体が動けないゴーレム化しているというのが定説だそうだ。
非常に興味がそそられるぜ。
採掘資源であるため、手を出して仮に魔鉱窟を崩壊させたら重犯罪扱いとなるので、どうにも試せないのが悔やまれる。
「しかし、魔道具があるとは言え、この量を運ぶのは大変ですわね。……やはりわたくしも持った方が良いのでは?」
「潰れる潰れる」
唯一ミスリルを運んでないフランが申し訳なさそうに口を挟む。
だが、流石に魔力で身体を強化出来なきゃ持てないって。確実に潰されてむきゅう、となるぞ。
「しかし、アテが外れたなぁ……」
ぼやくオレに美女二人が反応する。
「仕方ありませんわ。慈善事業じゃないですもの」
「命の危険もありますしね」
売却する分のミスリルはドラゴンの時同様、キャンベル家に回収してもらおうと思っていたのだが、そうは問屋が卸さなかったのだ。
まず、ここはダンジョン。
危険度はそこまで高くなくても、普通に魔物が出没する。
武功の誉れ高い家柄じゃないし、戦力的に回収作業が厳しいよな。
次に、価値観の違い。
街はともかく、家にとってミスリルはそこまで魅力的ではない。
彼らの得意分野は外交であり、武具は専門外。
仕入れたとして、売れるコネも無ければ加工技術もない。
技量的に結局アルドーさんらにお鉢が回ってくるなら、手を貸すメリットが無いのだ。
外交で相手に贈る? それこそ政敵や未来の仮想敵に武器与えてどうする。
キャンベル家の防備など、必要な分もあるだろう。
だがその程度の量は、アルドーさんから作成後の武器を買えばいい。
支援するのは、どちらかと言えば工房の方になる筈だ。
結論として、報酬の確保のためには全て自分たちで運ぶ過酷な労働が必要であった。
オレが持っていた輸送手段が、幸いと災いを同時に呼び込んだ面もある。
「くっ。アイテム袋を呪えばいいのか、手間が減って感謝すればいいのか、分かんねぇなこれ」
この世界は、魔法や魔物以外は前世で見た小説程、ファンタジーファンタジーしていない。
ファンタジー要素がある、地球とは違う星と表現するとしっくりくるくらいだ。
そんな世界でも、貴重な類似要素があった。それが、容量拡張のアイテム袋である。
時間停止の効果も重量緩和すらされないが、収納容量だけは袋に固定化された魔法で増やせる秘宝――天才魔法使いのワンオフ品――がこの世界にはあった。
他の秘宝と違い、その有用性からか作り方もある程度体系化出来ているらしい。
この系統に才がある者は、一度は作成を志すアイテムなため、秘宝の中では比較的メジャーな存在である。
何故持っているかと言うと、実家に居る時にどうにか掻き集めたのだ。
それに加え、旅に出る時賄賂として実家が所有してきた物もぶん取ってきている。
その数個あるアイテム袋に、手分けしてミスリルを詰め込んで今は運んでいるのだ。
正直、A以上の高ランク冒険者でも中々出来ない手法である。
「や、やっと着いた~……」
馬車まで辿り着き、悪路で揺れる中をどうにか街へと戻った。
全員乗ったら完全に重量オーバーだったので、オレだけが比較的軽めのミスリル入りアイテム袋を抱えての帰路である。ホント勘弁して。
「最後まで苦労掛けたの。後は任せておけぃ、最高の一振りを打ってやるからな!」
「痛い、痛いって!」
肌ツヤが良い顔でバシバシとオレの背中を叩く、腕力ステータス極振りドワーフ。
満面の笑みに対して、オレは疲れた顔で訂正の言葉を投げ掛けた。
「いや、二振り頼むぞ? 出来れば予備も欲しい」
「分かっとるっ。言葉の綾じゃ!」
全部を運べた訳ではないが、こんな会話をしながらギルド保有の保管庫に中身を出した。
後はアルドーさんがギルドと渡りを付ける手筈になっている。
「お疲れさまですわ。ここまで来たら、残りの作業はギルド職員を借り出せますわね」
「やりきったぜ……」
フランの労りに涙が滲む。
「あらあら、お疲れですか? ふふふ」
その隣に佇む、喜色を湛えるおっぱいお化けなどオレには見えん。
まったく、この期に及んで何を考えていやがるっ。
「でもそうですね。後はギルドの方とアルドーさんに任せましょう」
ポンと肩に手を置き、同意を示すメルヴィナ。
え、もう終われるの? 帰って寝れる? 寝れるよね?
「さ、アイザック君。私たちはもう一往復頑張りましょ♪」
今回持ってきたのは、良質な部分と袋に入れやすい塊だけだ。
ダンジョンに残っているのは、かなり細かい破片や、逆にアイテム袋に入らない大きさのものである。
細かいものは飛び散っているので、歩き回って回収するしかない。
大きいものはその場で砕く必要がある。
どう考えても、一度目より重労働になる事は間違いない。
「……………………もう夜なんですけどぉぉ!!」
ーーなんでボス戦よりその素材回収の方が大変なんだよ!
フラン「アイズが盛大に残骸を撒き散らすからですわ」
こうして、戦闘的にはスッキリしたのに後始末のせいで無双した気分になれないアイズ君なのでした。
尚、メルヴィナが機嫌が良いのは、(極貧時代の経験から)裕福な旅が確定した為です。




