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探り当てた砂中の鍵

人との会話が増え、今話からようやく小説らしくなります。

戦闘描写は8話から。

 オレが住む街、アンデルに滞在する冒険者は多い。

 魔物の蔓延る世界にしては交通の便が整っていて、結構な頻度で駅馬車が行き交う。

 街道が伸びる先は海や農地、王都に国境と様々であり、少し移動すれば入る事ができる森や山には魔物が出没する。

 その魔物たちにはテリトリーがあるため、縄張りを侵さなければ大抵は襲われずに済む。

 それは逆に言えば、狩り場として使いやすいと言い換える事が可能なのだ。特に山が人気だな。


 冒険者に限らず、物流交易拠点として様々な物が集まる、他の街と比べても中々に大きい街だ。立地の良さに恵まれてるからこそと言える。少し国の端寄りだけど。

 他にも幾つかの要因が絡み合い、かなりの冒険者がアンデルを拠点として活動しているのだ。

 うーん、流石オレの生まれた街。あ、ツッコミは無しでー。


 拠点という事は、遠征して戻ってくるパーティーも当然いる。

 その中で、何とか理由をつけてステータスを見させてもらえた冒険者パーティーが、今日帰ってきていた。

 勿論、馬鹿正直にステータスを見せてくださいなんて言ったりはしていない。

 ステータスって言ってもピンと来ないだろうし、それでなくともステータスの知覚なんてオレにしかできないんだから。……できないよな?


 ギルドの受付嬢から彼らの帰還を聞いたので、以前引っ掛かっていた疑問が解消される事を願って、一応挨拶に行く。

 因みに、受付嬢の容姿は並である。

 多くの冒険者の拠点となっていて、且つ大きい街のギルドに所属する受付嬢だとは思えない程に十人並みだ。

 異世界の冒険者ギルドの受付嬢は全員美人さんだと思ってたオレの純情を返せ! こらそこ、純情(笑)とか言わない!


 まぁ、今回遠征から戻ってきたパーティーに聞いたところ、街によって美人受付嬢かどうかは結構変わるらしく、街の大きさとかはそこまで関係ないらしい。

 大きな街の方が美人の可能性が高いってだけなんだとか。確かにそりゃそうだ。

 とにかく、彼らは冒険者に憧れる商人の息子としてオレを好意的に見てくれている。

 やり過ぎなければジロジロ見ても問題ないのはありがたい。寧ろ筋肉とか見せつけてくるので、やりやすいくらいだ。


「うわー、凄く盛り上がってるー! 筋肉モリモリだー!!」


 目を輝かせたフリをして、腕周りのステータスを見る。

 相変わらずの腕力振りステータスだ。流石タンク寄りの前衛。

 以前より更に伸びてきている。これが脳筋か。


「はっはっは、すげぇだろボウズ。この前会ったときよりもムキムキになってんだぜっ!」


「ボクもお兄さんみたいになれるかな~?」


 オレは未だガキンチョなので、それっぽい振る舞いをしている。

 最初にボクとか言い出したときは、ちょっとだけ身震いしたのは秘密だ。

 無精髭のおっさんをお兄さんと呼ぶ事は……ノーコメントで。


「さぁなぁ。こればっかりはボウズの鍛練と才能にかかってるかんなぁ」


 言われた直後、オレは拳を強く握り締めていた。

 才能、という単語に無意識の内に腹が立ってしまったからだろう。

 まぁそれはいい。才能なんて無くても無双はできるんだよ! ……そう信じてる。


「んでボウズ。前に教えたトレーニング、ちゃんとやってっか?」


「うん、言われた通りに毎日やってるよ! 最近は体力がついてきた気がするんだ!」


 そう言うと、お兄さん(笑)は無精髭をこすりながらニマッと笑ってオレの体を見渡した。


「ほぉー。なら今度少しだけ見てやらぁ。広い敷地じゃないと動き辛ぇから、場所の都合つけなきゃだけどな」


 向こうさんは、オレが有力な商会を束ねる家の息子なので、媚びを売りたいのだろうと推測している。

 媚びと言うと聞こえが悪いかな。親しい交流関係を持つとかか?

 良好な仲を築けば、今後色々な融通を利かせてくれるかもしれないし、パトロンになってくれるかもしれない。

 引退後に、護衛や守衛として雇い入れてくれる可能性もある。

 まぁ、彼らが総じて子供好きなのも、大きな理由だろうけど。

 純粋な憧れで近づいた訳じゃないし、子供(仮)ですみません。頭脳は大人っ。

 だからか、融通云々はそうなれば儲けもの、くらいにしか思ってなさそうだ。


「ん? んんっ? お兄さんたち皆、前よりすっごく強くなってない?」


 何の気なしに全員のステータスを見せてもらえば、女性メンバー二人は大した伸びを見せていなかったのだが、男性メンバー六人のステータスはかなり上昇している。

 幾ら前衛や後衛といった役割の違いがあるとは言え、この差はおかしい。

 そもそも男の一人は弓使いだから後衛だし、女の一人も短剣使いで前衛だ。

 理由は別にありそうだな。


「そうか? 確かに今回の遠征は苦労したから、身になった実感はあるんだが」


 先程まで武器の手入れをしていた剣士が、そう言って自分の体を見回した。

 確かに苦難を乗り越えれば成長も大きいだろうが、遠征の期間と上がったステータスを合わせてみれば、それだけでは説明がつかない。

 それこそ、女性陣の伸びの方が一般的な成長率だと思う。


「うん。お姉さんたちよりも、いっぱいいっぱい強くなったように見えるよ!」


「アイザック君、私たち二人はそんなに強くなったように見えない?」


 短剣使いの女性が、そう言って薄く笑いかけてくる。

 子供の戯れ言だと思ったのかな。


「うーん、良く分かんないけど、なんかそんな気がするんだ。えんせいで、お兄さんたちだけがした事とかってないの?」


 直後、女性陣に弁明して、その上で子供らしい聞き方で探るべきだったと後悔した。

 ちょっとばかし、気が逸った問い掛けになってしまったからだ。

 けれど、強くなる足掛かりになる情報かもしれない。

 そう思うと、自制が効かなかった。

 ある意味子供(ガキ)っぽいな。いや、肉体的には子供(ガキ)で間違いないんだけど。


「うーん、なんかあったか?」


「特に無いわよね……」


 パーティーメンバーの二人がそう溢すのを横目にうずうずしていると、宙を仰いでいた剣士が突然仲間に向き直った。


「俺たち六人だけって言うと、あれじゃないか? ほら、遠征途中に携帯食料が心許なくなってきて、道中で倒した魔物を解体して食ったやつ」


「あー、あったなそんなん。確かにベルとアンナは食わず嫌いしてほとんど食べなかった」


「そうそう。俺らの分の携帯食料分けて凌いだよな、別に俺は気にしてないけど」


「あんなグロいのその場で食べたくないわよ!」


 そう言って彼らはわちゃわちゃと騒いでいる。

 魔物を食って血肉にしたから、ワイルドに見えるようになったか? なんておちゃらけだす始末だ。向こうはそれが結論で纏まりそうだな。

 そんな様子を眺めながら、オレの胸の内を去来する事は一つ。


(こ、れっ、だっ! 以前オレが感じた違和感は、多分これだ! 新鮮さなのか処理の仕方なのか分からないが、やっぱり魔物肉の摂取がステータス上昇を促す鍵!)


 張り巡らせた思考と再び見えた一筋の光明により、オレの顔は見るに堪えない表情を浮かべていた事だろう。

 俯いてなければ大惨事だったな。こんな顔をする子供は、恐らくいないから。

補足すると、一言で表すと獰猛な顔をしてます。

さて、見つけた鍵で無双の下地は築けるのか!(すっとぼけ)


作業用BGM聴きながら執筆してたら、なんか幼少期編にピッタリの曲見付けました。

元から好きな曲なので、イメージソングじゃないですけど紹介させてくださいヾ(o゜ω゜o)ノ゛

ーー実況パワフルプロ野球⑪OP、PRIDE(東野直純さん)

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