キャンベル家の女性は色々凄い
フランの父親である、キャンベル子爵との邂逅。
その後の流れは正に怒濤だった。
正直濃すぎるので、細かく振り返りたくはないな。
子爵は終始あの調子でマイワールドを形成し、オレをある程度値踏みすると納得したように親しく接してきた。
率直に言って距離が近いし会話がハイテンポだし、割とウザい。
婚約者の父親への第一印象がそれって、色々どうなんだろうか。
「久しぶりの豪華な寝台、最高だわ。……ぶっちゃけ実家のやつのが改良した分、反発性高かったけども」
到着が夕方頃という事もあり、今はとっぷりと日が暮れてしまっている。
数日は暇になってしまうので、明日から何をすべきかゆっくり考えたいところだ。
と言うか、無理にでも考えないと今日の衝撃が何時までも抜けそうにない。
「しかし、異世界で会った中で、群を抜いて濃い人たちだったな……」
取り敢えず、フランの母親についても軽く思い出す。
あの人も強烈だった。
場所は屋敷の玄関ホールを過ぎたところ。
キャンベル子爵は流石に仕事を放り投げてきたとあって、そそくさと仕事場に戻っていった。
いや、部下たちに戻されて行ったと言うべきか。
立ち話も良くないと、夕飯や家族の準備が整うまで、ホール脇の応接室で時間を潰す事になった。オレの治療は食後で問題ない。
「はぁ、中々に中々だったな……」
語彙もどっか行ってしまったよ。
「それについては全面的に同意と共に謝罪したい所存ですわ……」
そんな会話に辿り着くまでには、散々子爵と接し、SAN……精神を摩耗していた。
だがそれでも奇襲であれば対応できたし、疲労困憊って程でもない。
なのに、オレは彼女の接近に全く気付けなかった。
「ちょっ、なんですのいきなり!?」
「だ~れだ」
「こんな事するのはお母様しかいませんわ!」
「当たりよ~」
率直に表現しよう。
フランが、揉まれていた。
何をとは言うまい。揉む程あるのかなんて言ったら消されるから流石に言わん。
まぁ、オレが成長したと言うよりは、最愛の女性を傷付けたくないだけだが。
「もう、いい加減にひぁんっ! ちょっ、ん、ぁ」
一心不乱という言葉が似合う光景の中で、視線だけがぐりんとこちらを向く。
「へ~、君がアイザック君ね」
すみません、娘の胸揉みながら話し掛けるの止めてもらっていいですか。
「嫌よ!」
「心を読んだ?!」
「いえ、微妙そうな表情だったからなんとなく」
だ、だよな。流石に初対面から内心を読まれる程薄っぺらじゃ無いぞオレは。……多分。
「流石にこれ以上はフランが居たたまれないので、やめーー」「仕方ないわね」
食い気味ぃ。
パッと手を離した事で、頽れるフラン。
その表情は、明らかに羞恥の面で真っ赤に染まっている。
吐息も荒く、色気があったが、保護したい欲求にも駆られるな。
そんなオレに興味の対象が移ったのか、フランの母親らしい目の前の女性は気さくな表情と共に話し掛けてきた。
「ちょっと良いかしら?」
「え? はい」
彼女の確認が何を示すか分からず、諾々と返事を返す。
途端、キャンベル夫人はズイッと顔と身体を無遠慮に近づけて、上から下まで舐めるように……いや、擦るように顔を上下させながらオレの細部まで観察し始めた。
「ちょ、お母様?!」
「ふんふんふん、顔はかなり美形だけど、逆に言えばある意味平凡ねぇ。尖った顔立ちじゃないわ。個性に乏しいけど、まあ合格。でもチェスカが昔言ってた初恋の君って言うのはポイント高いわね。特に眼が良いわ、意志を感じさせる。これは聞いてた通りね。肩幅もガッチリしてて男らしいけど、男前度なら私の夫のがまだまだ上よね、ふふふ。うんうん、人の手に歴史ありとはよく言ったものね。手の平からは今までの経験を感じさせる重厚さがあるわ。脚は見事。私も武将と話す機会は何度かあったけど、立ってるだけでも何故か躍動を予感させる、こんなの初めてよ。立ち居振る舞いは堂々としているし武人っぽい感じだけど、何処か裏の雰囲気もある。でも貴方、暗部とかになったらポカやらかしそうなオーラを漂わせてるわよ。冒険者で良かったわね? うーん、まだまだ見聞したいけど、初日だしこんなものかな。正直、チェスカの壮大な運命に寄り添える器があるか疑問だったけれど、ちょっと凡人っぽい雰囲気が混じっている事以外は総じてアリかしら。うん、オッケー。お母さん結婚許しちゃう!」
ここまで、ほぼ一息である。
「あ、二人だけだと旅も不安よね? イルネストを出る前に仲間を増やしなさいね。お勧めは我が家の騎士や従者かしらー」
そういう事になった。
彼女のワンブレストークからここまで、オレもフランも一言も発せていない。
世界は広いと、強さ以外で痛感させられるとは思いもしなかった。
ドラゴンを打倒し得る境地に達しても尚、終始圧倒され通しである。
オレの仲間を選定する目は中々厳しいと思っていたが、この人のお眼鏡に叶う人材なんて居るのかと不安になったのは内緒だ。
後で聞けば、娘の物語に出てくる添え物程度の存在であれば、個性が足りなくとも目を瞑るらしい。
暫定とは言え、家臣が有力候補なのに添え物て……。
◇◆◇◆◇
結婚式は、オレとフランの要望で身内だけで執り行う事になった。
そのため、挙式自体は数日後となる。
オレは今のところ貴族入りするつもりは微塵も無いし、当然知り合いもこの街には居ない。
フランも、令嬢にしてはアグレッシブであり、刺繍よりは乗馬などの方に興味を持つ。
親しい令嬢は少ないし、駆け付けられる程近くとなると皆無らしい。
街の住民とは親しいらしいが、この世界の貴族の結婚式は、平民同席は中々に難しいのだ。
冒険者として無双を追い求め各地を放浪する以上、嫁の実家でのんべんだらりと過ごしていたくはないオレと。
あの個性が尖った両親に質問責めにされる上、これから厳しい冒険者生活を送るのに、ぬるま湯のように侍従に世話を焼かれてしまう実家に居続けたくないフラン。
夫婦双方の利害が一致した形だ。
アンデルを発つ時に、シャルさんが手紙を送っていた事も大きい。
フランの母親は、いつか娘が結婚する時にと着々と準備を進めていたそうだが、手紙が届いてから更に急ピッチで進めていたそうだ。
「普通、貴族の婚姻って最低でも半年以上は準備期間があるものなのですが……」
滞在中に交流を持った、あるメイドさんは後にそう語っていた。
思わず「ですよねー」と食い気味に同意してしまったよね。
ネタバレをしてしまうと、このメイドが第三の仲間となるのだが。
「うーむ、流石領主屋敷。フェイロン商会より広いな……」
迷った。
滞在も、はや三日目になり、なまらぬように剣でも素振りしようかと場所を探していたら、知らない場所に来てしまった。
考え事をしながら歩いていたのが原因かな。
「んしょ、んしょ……」
どうしたもんかと悩んでいたら、一人のメイドさんが階段を降っているところを見かけた。
そこそこ大きい荷物を持っている事もあるが、その上にどたぷんという擬音が聞こえてきそうな大層ご立派なものが乗っているため、非常に視界が悪そうだ。
見てて危なっかしい。
「あっ……っ!」
そう感じた正にその時、彼女が階段を踏み外す。
重みが、僅かに掛かっていた足裏を滑らせたのだ。
「っと、危ない。怪我は無いか?」
駆け出して即、彼女の荷物と腰にあるポーチを抑える。
オレは紳士だから、不意打ち以外では有り余る身体能力でラッキースケベなど起こさせないぜ。
「あらー、どなたか存じませんがありがとうございますー」
勿論想定の範囲内であれば、だが。
「ちょっ、なんで体勢も戻さずお辞儀すーー」
「うきゃんっ」
体を斜めにした状態で、支えられてた荷物毎お辞儀したメイドさん。
当然二人共バランスを崩し、階段を落ちていった。
階段下をチラ見して障害物の有無を確認したオレは、 なんとか彼女に怪我をさせまいと落下姿勢を整える。
「んぶっ!」
彼女は見事に着地した。
オレの顔面に。その溢れ出んばかりの胸部装甲から。
「やわ、やわ……ん? 硬い?」
この世界にも当然のように下着はある。
スポーツ的な物が主流だが、そこそこ金持ちなら前世で一般的なタイプに似た物も買えたりするらしい。
女性の胸元は豊かでも、下着を着けると硬い。
特に、異世界の技術レベルで作られた物だと。
「あの、大丈夫ですか……?」
ラッキースケベって難しいんだなぁ。
ラブコメの主人公、ある意味尊敬するわ。
「あのー?」
ピアノ線みたいなのもある世界ですからね!
貴族やそれに仕える人たちは、常用しております。
フランが貧に属する者なので、爆に属する方です。
※この作品はハーレム物ではありません。




