表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/210

その才、理不尽につき

作業用BGMを作中イメージ風に紹介コーナー?第二弾(またパワプロ)ヾ(o゜ω゜o)ノ゛

良い曲なので聴いてみてー

ーー実況パワフルプロ野球⑭OP、Shining Road(MAKIさん)

「アイズ様、立ってください! まだ、まだ終わりではありませんわ! わたくしがおります、シャルもいるのです。だから、わたくしに貴方の物語を見せて――いえ、共に書き綴りましょう!」


 最近ようやく本心から愛しく感じ始めた婚約者の声が、フランの声がオレを包む。

 折れた心が、バキバキに折れたまま殴ってきた気がした。


「何、を……」


 何を、考えていたのだろうか。

 さっき自分で言ったばかりじゃないか。オレだけでは大群全てを倒せないと。

 さっき思ったばかりじゃないか。彼女は足手まといなんかじゃなく、強力な手札を持つ仲間だと。

 ……サシなら倒せるという啖呵は忘れた。あれはフランを落ち着かせるための虚勢だ。本音じゃない。違うったら違う。油断じゃないぞ。


 間違った認識を受け入れて、まだ立ち向かうと決めた瞬間、体は勝手にフランたちの下へ走り出していた。


「守って……くれるのでしょう?」


 節々にガタがきているのを耐えて彼女の元に辿り着いたオレを、そんな言葉と不敵な微笑みが出迎える。

 ありがたいけど、厳しいお言葉だぜ。

 だが、表情にも言葉にも込められている感情が心地好い。


「勿論だ。オレが掻き回す。後は任せるぞ、フラン」


 だから俺も引用による飾り付けなどせず、心からの言葉と信頼で託した。


「夫の頼みは黙して為すのが妻というものですわ。そちらも御武運を――アイズ(・・・)


 長い会議など、この場には不要だった。

 不思議な一体感に満ち溢れている。

 ふと、自分の心が奮い立つのが分かった。

 一度目を閉じ、しっかりと前を見据える。


 オレは、努力の末とは言え、自分が手にした異常な程の強さと、助けた相手で弟子という境遇から。

 彼女は、物語の英雄のように何処か遠い存在として、助けられた姫のように守られるだけという目線で。

 互いが互いを、正しく扱っていなかった。

 それが今、初めて対等に接する事ができたように感ぜられたのだ。


「お嬢様の御身は、この命に変えましても守ってみせます」


 シャルさんも、空気になるまいと口を挟む。いや、オレの勝手な想像だけど。


「行ってらっしゃいませ、アイザック様」


 そんな侍従の言葉を背に受けながら、メイド喫茶? と思ったオレは悪くない筈だ。多分。


「お体に気を付けて、なんてやってられないが、最後まで保ってくれよ」


 暑中見舞いのような事を考えながら走る。

 挙動を確認しつつも、勢いを殺さずドラゴンに再度死合い(おどり)を申し込んだ。オレと一緒に死線で(ダンス)っちまおうぜ。

 体を駆け巡る魔力によって、裂傷が激しい箇所から血が吹き荒ぶ。


「オレには守るべき仲間が、いや――」


 巻き起こる風を裂き、爆裂するブレスを避ける。

 その乱舞の中でドラゴンと目があったオレは、ゲームでヘイトコントロールをするタンク職のように叫んだ。


「――頼るべき仲間がいるんだ!!」


 言霊がオレを奮起させ、ドラゴンの気を引き付ける作業に意識が没入する。

 フランは、()()()()()()()()()()()()()()()()魔法を上手く操るが、その分威力を出そうとすると詠唱に時間が掛かるのだ。

 魔法の強度を上げるには、魔力の循環(じゅんかん)や練り上げ等の手間が伴う。それが顕著(けんちょ)なフランのためにも、時間と隙をオレが作る必要がある。


「グギャオゥッ! グルギュアァッウ!」


 未だ死んでないオレを見たからか、更に怒り狂う天空の蜥蜴。もし仲間になるなら、ゲレゲレと名付けてやろう。

 自由に動けない相手の領域(くうちゅう)に、無策で踏み込み続けたのが先程までの苦戦の理由だ。

 もう、焦ってその懐に飛び込んでやったりしないぜ。こいつは、飛んでなければオレより弱いんだからな。


 そうして時間を稼ぐ事、数分程だろうか。

 パンッという乾いた音が耳に届いた。シャルさんからオレ(アイズ)への合図だ。寒いとか言うな。


「待ってたぜ。んじゃ、前菜を喰らいなっ!」


 目眩ましも兼ねた雷魔法をドラゴンの眼前で発動させ、注意を引く。


赫灼(かくしゃく)たる耀(かがや)きと共に、我らが覇道を拓きて爆ぜよ! ソリッド・フレア!!」


 フランの力強い言葉に同期して、固く圧縮された炎塊が唸りを上げて突き進む。

 視界が遮られている中でも、流石にこの獄炎弾には脅威を感じたのか、ワンテンポ遅れて翼を動かそうとするドラゴン。でも、それ避けられたら困るんだよな。


「行かせねーよ」


 延々と地を這いずり回っていたオレは、一転して高く跳躍する。その勢いのまま、回避に意識を割く相手の目に深々と片手剣を叩き込んだ。

 魔法で強化した事と相まって、剣身は一撃で折れてしまう。

 けれども、その甲斐あってドラゴンは叫びながら隙を晒している。

 これでチェックメイトだ。実写版新世界の神のように、ドヤ顔で宣言したりはしないが。


「グルラァアァアア……!」


 炎はチュドーンというどこかアニメのような音を残して、彼方へと消えていった。

 竜の断末魔が辺りをつんざき、森を薙ぎ倒しながら墜ちた巨塊は地面を抉る。

 ダメージが大きすぎるソレは、多少の痙攣を残して動かなくなった。


「倒し……ましたの? わたくしの魔法で?」


 無理矢理で、不格好で、仲間の攻撃頼りのラストアタック。これが無双なんて言える筈もない。

 それでも、オレたちの勝利だ。生き長らえたのだ。

 駆け寄ってきたフランを優しく抱き止める。


「フラン! ありがとう。フランがいなかったから、どうなっていたか――」


「ふふっ、礼など不要ですわ。わたくしと貴方は、夫婦で仲間なのですから。対等に、助け合う存在ですものね」


 礼を遮りながらも、頬を染めて嬉しそうに笑っているフランが愛しい。

 未だ彼女の両親にも認知されてない婚約者という立場で、正確にはまだ夫婦ではないが、フランの言葉を聞いて何があっても夫婦になろうと決意する。

 彼女程背中を預けられ、彼女程対等に、彼女程好きになれる女の子には、この先きっと出逢えないから。


 シャルさんの咳払いにより、フランとのいちゃつきを一旦止めた。

 どうやら、オレの全身がボロボロなのが目に毒らしい。確かにあちこち破れてるし、血も止まってないもんなぁ。

 淡い光のような回復魔法を掛けてもらいながら、今回の戦果を眺める。


「う、わぁ……」


「これは、凄まじいですね」


「え、これ、わたくしの魔法で開いたんですの!?」


 目をパチパチとさせながら、ドラゴンを指差してワタワタと慌てるフラン。可愛いなぁオイ。


 ドラゴンの土手っ腹には、大きな風穴が斜めに開いている。

 そこにあった筈の肉は、『燃えては』いない。灰塵にされて突き破られたのだ。風が吹く度に腹から灰がさぁーっと流れている。


「火魔法なんて嘘は止めて、もう灼滅魔法とでも命名すればいいと思うよ……」


 ボソッと呟いたオレの言葉は、誰にも届かず哀しげに風に流されていく。


 かの有名な爆裂魔法に類するものを、際限無く撃てるだろうその魔力。

 オレが苦労して削いでいったドラゴンの硬い肉体を、一撃で消滅させてしまう馬鹿げた威力。


(天才って……理不尽だなぁ)


 そう思わずにはいられない、オレなのであった。




 これは、凡人でありながらも強大な力をどうにか手にした、オレことアイザック・フェイロン16歳が無双を求めつつ各地をさ迷い。

 仲間を増やして次の街へ、な物語である。

アイズ「灰塵にされて突き破られたのだ(キリッ)」???「黙れ中二病」

フランのキャラコンセプトに爆裂魔法はありませんが、アイズ君に言わせた灼滅魔法と語呂的に近かったのでパロ出演←友情出演みたいに言うな。


アイズ君もね。敵が地上にいて溜めが作れればイケるんですがね。奥の手もまだ色々あるし。今回は『使え』なかったですけど。

一応補足しますが、苦戦の理由は空飛ぶ硬い敵との戦闘経験が無い事、武器の耐久値問題、フラン達を気に掛けていた等が大きかったので、これ程までに純粋な苦戦は今後かなり少ないです。

凡人系主人公なので、初見殺しには確実に嵌まるタイプなのです(苦笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ゲレゲレときいてかのキラーパンサーを思い出した俺は間違ってないはず…ちなみにチロル派
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ