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ですわ娘との邂逅

今回、文字数や話数調整の為、地の文でポンポン物語が進みます。

それに対し、読み辛いとか丁寧に描写して欲しい等の要望があれば、次回以降似たような表現を意識して減らすので教えてくださいませ。

批判が多ければ、今話の改稿も辞しません。

 オレの親衛隊を自称する女性からもたらされた情報は、オレたちを硬直させるに十分な内容だった。

 尚、親衛隊とカッコつけて言ったが、アイドルとかの親衛隊ではない。単に、無茶する雇い主の子供を保護しようとする集団である。


「セルバフ、帰りの超特急に付いて来られそうな奴は何人いる?」


 帰り道は身体能力強化を出し惜しみしない。故に、セルバフ以外にはかなりの強行軍となるのだ。


「そうですね……。ここに残す人員も鑑みれば、坊っちゃまの足手まといにならないのは二人程かと」


 妥当なところだな。

 オレは頷いて辺りを見回した。


「十分だ。オレ一人で先行するのはお前が許さないだろうから、指示出しが終わったら出発するぞ」


 オレの発言を聞き、恭しく片膝をつく髭執事セルバフ。


「御意に」


 さァ、ここからは時間との勝負だ。




 後始末を十人程の使用人に任せ、オレたちは道無き道をひた走る。

 尋問により得た情報には、既に先遣隊がアンデルに入り込んでいるという内容があった。

 街に訪れた有名貴族を、誘拐しようと目論んでいるらしい。

 砦に居た本隊が仕掛ける予定だった明日の強襲時、何かあった時の保険だと言う。追っ手を引き込んで潰す目論見も垣間見えたとか。

 彼らの中には別邸をアンデルに構えている者もいるし、宿を取ってる者もいる。領主館や貴族の本邸を狙うよりは、成功する確率も高そうだ。


「オレとセルバフの班に別れて、両サイドからぐるっと当たっていくぞ」


 走りながらだが、こいつの地獄耳なら声を張り上げる必要もない。


「はい。ブラッドフォード辺境伯が貴族街の南西に別邸を構えております。コンクエスト子爵とレストン男爵が鷲の止まり木亭に、カルネイ男爵が巨人の爪痕亭に御宿泊されています。ダルグリッシュ伯爵は領主との親交厚く、領主の屋敷に泊まっているので問題ないでしょう。他には――」


 続く情報に半ば引き気味になるオレ。

 最悪しらみ潰しとか思ってたんだが、これなら簡単に済みそうだ。狙われそうな貴族までリストアップされたし。

 到着の時間的に、既に会場に向かう途中な可能性が高いそうだ。


「しかし、なんでお前そんな事情通なんだよ? ウチが出られる格式のパーティじゃないってのに」


 オレがそう問い掛けると、柔和な笑顔を浮かべながらセルバフは口を開く。


「執事ですから」


 便利な言葉だな……。オレはそう思わずにはいられなかった。


「んー、そろそろ門に着くか。じゃあ、手筈通りに」


「はい、御武運を」


 おそらく、本命は貴族の別邸だろう。それも、会場とは距離のある場所が危ない。

 宿に泊まるような貴族と比べて、影響力が高そうだしな。

 他も見逃すつもりはないが、巧遅は拙速に如かずとも言う。そう思って屋根を跳び抜けていると、一匹のネコが姿を現した。


「ナァー!」


「ニャイト!」


 駆け寄ってくるニャイトだったが、一瞬どうしようか考える。

 今こいつとじゃれあっている暇は無い。と、思ったのだが。


「ニャウ」


 あいつが走り出した方向にあるのは、見て回る予定だった宿や別邸を数軒飛ばした、最後の方に回る予定だった邸宅だ。

 ニャイトは、普段ならオレといる時は急に走り出したりしない。意外と甘えたがりだしな。

 オレを探してから動く場合、いつも何かしら理由がある気がするのだ。

 賢いネコだから、忙しくしてれば野暮用で気を引いたりしないため、街に入り込んだ異物を感知したのかもしれない。……これでパーティーのために来訪した貴族とかだったら萎えるな。まぁ、ダメ元だ。


「回る順番、変えてみるか」






 運が良いのか悪いのか、オレはニャイトの導きによって当たりを引いた。

 そして、これは確実に運が悪かったのだが、発見した時は既に邸宅に忍び込む段階で、捕縛した際に貴族の傘下にある護衛が来てしまった。

 つまり、オレたちの暗躍がバレた形になる。


 オレは事態を矢面に晒したくなかったのだけれど、セルバフ側でも少数で動いていた盗賊を捕らえた事が問題だった。

 彼らを領主の部下に突き出してしまったために、オレの目論見が崩れたのだ。


 結果として、結構な範囲の地域を騒がしていた、かなりの大物盗賊団を一網打尽にしたという功績がオレのものになってしまっている。いや、マジでいらんです。

 全力で抵抗したのだが、両親からの圧力もあり、明日のパーティーに功労者として出席させられる事が決定した。


 助けた相手にも問題がある。

 早朝からの一連の流れだったので、街に戻ってきた段階でパーティーが始まったばかりなのが災いした。下から順にパーティー入りするのがこの国の慣習なので、位の高い貴族は会場に向かうところだったのだ。


 なんで辺境伯がここにいるんだよ……。自分の別邸に居ろっての……。

 これでは、セルバフに会場周辺を当たらせた甲斐が無い。

 盛大にため息が零れるのを、オレは抑える気すら湧かなかった。



 ◇◆◇◆◇



「――それではここで、このパーティーの功労者を讃えようと思う。アイザック・フェイロン! 入場しなさい」


 パーティーの途中で見せ物のように呼ばれ、長々と功績を語られ、平民の活躍を上から目線で褒められる。

 オレは作り笑顔を張り付けながら諸々を聞き流し、恐悦至極と褒美を賜って会場の端に足を向けた。

 今すぐ帰りたいが、せめてダンスが始まるまで滞在するように言い含められている。

 なんせ、オレの功績を笠に着て両親もこのパーティーに参加してるからな。

 いくら有力な商会でも、格式的に平民が出られるものじゃなかったのに、である。


「アイザック様!」


 仕方なく壁際に寄って貴族との関わりを避けていると、殆どノーマークだったバルコニー側から声を掛けられた。しまったな。

 オレが振り返ると、そこに居たのは――。


「お、お久し振りでございます。覚えておいででしょうか? フランチェスカですわ。改めて宜しくお願い致しますね、アイザック・フェイロン様」


 ――以前、オレに爽快な無双を提供してくれたフランチェスカ・キャンベルだった。


「今宵はキャンベル家の名代としての参加でしたが、まさかこんな場所で再会できるとは露にも思いませんでしたわ」


 彼女は、これは運命かもしれませんわね、などと小さく口にしている。

 その顔は若干赤らんでいて、愛らしさをこれでもかと伝えてきた。


「こ、れはこれはキャンベル子爵家ご令嬢、フランチェスカ様――」


「様は不要ですわっ。わたくしと貴方様の仲ではありませんか」


(と、言われてもなぁ……。てか君も様付けじゃ?)


 流石にこんな場所で貴族を呼び捨てでなど呼べない。どうにか濁していくしかないな。


「それでは、私に対しても敬称など要りませんよ」


 どうだ、名前を呼ばずに無難に返したぞ! そう思ったのは、どうやらオレだけだったらしい。


「そ、そ、そ、それはプロポーズですの?! い、いえ、全くもって(やぶさ)かではありませんが、それでもやはり順序というものが……」


 な に を い っ て る ん だ。


「あらあらあら、アイザックちゃん。もしかして、こちらのご令嬢と既知の仲だったの?」


「ほう、我が息子も中々隅に置けぬな。ご令嬢、私はフェイロン商会の会頭を務めるゲオルグでございます。どうやら愚息が――」


(ゲェッ! 両親に見つかった! これはマズいぞ……)


 この両親なら、フランチェスカの慕情を感じ取って、即座に婚約に結び付けようとするだろう。

 そんな事になってしまえば、オレは外に出られなくなる。少なくとも、冒険者として世界を回るなんてできる筈もない。

 オレの無双への道を運命が閉ざそうとしているかのようだ。


「まあ、ご両親ですの? わたくしはキャンベル子爵家名代、フランチェスカですわ。先日はご子息の――」


 両親とフランチェスカが会話を始める。

 不幸中の幸いか、両親は暫くすると他の貴族に呼ばれて席を離れたが、フランチェスカのオレに対するアプローチは止まらなかった。

 先程の緊張や羞恥で硬くなっていた姿はどこへやら、それはもう熱烈で逸らしようがない。

 攻防を繰り広げている間に母親だけは戻ってきて、更に外堀が埋められていく。


「し、子爵たるキャンベル家と平民である我が家では、商談ならともかく交流を持つには家格が合わないのではないでしょうか?」


 オレはそう主張してみた。


「キャンベル家は別に高慢な家ではありませんし、フェイロン商会はアンデル全体に根を張っていて、豪商と言えますもの。大した問題ではありませんわ」


 が……駄目っ……!


「アイザックちゃん、何かフランチェスカ様に不満でもあるの?」


 仮にあっても、この空気で不満があるなんて言えるか! オレは息を飲んで、叫びだすのだけは堪える。

 何より、彼女自身には不満はない。寧ろタイプだし、心根も真っ直ぐだ。

 夢が阻害されなければ、美少女との結婚なんて都合の良い話には、即座に飛び付いた事だろう。


 フランチェスカに対して否定的な意見を出さないように気を遣いつつも、あれこれ理由を付けてどうにか決定的な話は後日に持ち込んだ。あの場で婚約を決められたら、流石にどうしようもないからな。

 けれども、この話を断れそうもない。

 キャンベル家当主も、一人娘だからか彼女を溺愛しており、恋愛婚を奨励していると言うのだ。


「これは、家出するしかないかなぁ……」


 オレの背中は、さぞかし哀愁が漂ってたに違いない。

 椅子に座って、真っ白に燃え尽きるかのように項垂れていると、机の上に立つニャイトにポンッと肩を叩かれた。

 それはまるで、ドンマイとオレを励ますような仕草。肩に感じたぷにぷにの感触を受けて、肉球ともふもふな毛に全力で頬をすり寄せたオレは悪くないだろう。

 ギニャア! と愛猫から顔を引っ掻かれた事実は、忘却の彼方に消えていった。

うーん、盗賊の残党狩りはともかく、やっぱりフランとの邂逅とパーティーは、もっとじっくり描写するべきでしたかねー。

基本となる十万文字に本編を集約しようとするとどうにもσ( ̄∇ ̄;)

十万文字刻みで山場(?)を越えるような構成にしたいんですよね。


尚、当初のプロットでは辺境伯邸でなく、パーティー会場で直接(劇的に)フランを助ける予定だったのです。

でも、流石にそれはどうなん?(やり過ぎとかタイミングご都合的とか)と思い直したらこんな感じになりました(苦笑)

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