次回、全面戦争。デュエルスタンバイ!……え、今回は?!
どうも、更新日詐称常習犯の鷹崎です。
こ、今週3話更新は出来たので許して…( ´・ω・)
取り敢えず、月一から週一更新に戻す事はお約束しますので、今後とも宜しくお願い致します!
「とまぁ、そんな事があってだな」
「少年……相変わらず頭がイッてるような事やってんねぇ」
「失礼な。ちょっと街を囮にしたり、街の半分毎汚物を消毒したり、敵拠点に単独で特攻したり、水蒸気爆発や雷で更地に変えただけだろーが」
「もし正気で言ってるなら、このパーティー抜けようかな」
夜半。
明日にはカサラハンへと辿り着けるだろう地点で、オレたちは野営していた。今話している、猫獣人のケイトとも昨日合流したばかりである。
オレ一人であれば一日も掛からず踏破できる距離だが、馬車を用いた移動なので仕方ない。速度だけでなく、街道をショートカット出来ないのが一番の原因だけど。
普通の馬車の速度は、大体時速10キロくらいらしい。
馬車がそんなに遅いとは、転生するまで知らなかった。
前世だと、人の歩く速度は平均で時速4キロ前後と習ったので、もっと出るものだと思っていた。
地球の歴史と、年代で発展度を比べられないのは百も承知だが、足回りの技術が原因だろうか。
勿論、全力で駆けさせれば時速40キロは出る。だが、それ
は一時的な速度で、そんな速度を維持しようとすれば馬が潰れる。
……オレたちが英雄カルディナが隠遁する村、キレルから帰還した時は回復魔法を使い続けて時速30キロオーバーだった事は考えないものとする。
「流石アイザック様ですね。ここまでものの見事に作戦が的中し続けるとは」
「ふん。そんなものは偶然に過ぎない。……と言いたいところだが、ここまで上手く行き過ぎると、悪態を突く気すら失せるわ。おい、アイザック・フェイロン。どこまでが貴様の筋書き通りなんだ?」
「そんなの一から百までに決まってるったい。そうでもなけりゃ、連合国を構成する国一つを擲つような、ハイリスクな手が打てるわけなかとよ。全部予想通りなんね?」
(そんなわけ、ないです。とは言えねぇ雰囲気だよなぁ)
注がれる称賛の視線に耐えかねて、半ば現実逃避気味に森の外を見やる。
ブレメンス連合国首都、カサラハンには明日の夜半までには着ける。だが、その前にやる事がある。
そのために、メルヴィナの回復魔法を用いて馬を回復させ、国軍と冒険者たちよりも先行して帰還中なのである。
ナルヴィクたち三人を乗せている他、前回よりは一刻を争う状態ではないので、時速20キロで運行中と言ったところだ。
「朗報も多くて良かったですわ。莫大な被害を負ったからか、道中の街々は襲われずに済んだようですし、カサラハンでは、まだ大きな動きはないのですから」
「街での抵抗と大規模な罠を警戒して、近寄りすらしないらしいな。防壁が無い小さな村や町は襲われてるみたいだけど、事前の避難が間に合ってるから人的被害はゼロだ」
かえすがえすも、クーサンでの防衛戦がターニングポイントだった。
敵の指揮官が隊列を離れているタイミングで、取り返しが付かないレベルの大打撃を与えられたのだから。
更なる罠を警戒しながらでは、行軍速度も当然遅くなる。
奴らの元々の目的は、首都カサラハンにあるのだろう。
進軍速度を少しでも戻そうと、無駄な戦いを避けるようになったと言う。
持ちきれなかった村々の備蓄が糧食として使われているようだが、食いでがある人間という肉がないのでは、奴らも当てが外れた事だろう。
そのため、最低限の防備を備えた街を襲う事に比重を置いても、費用対効果に乏しい。
本丸までの電撃戦を仕掛けようにも、敵軍はまだ大規模で尚且つ指揮官も大勢死んでいる。
人だろうと魔物だろうと、軍の再編には時間が掛かる。
罠を警戒して慎重になっているし、こちらが対策を練る時間は十分に得られた。
「それで、そっちはどうだったんだ? 昨日は大して話も聞けない内に気を失っちまったからなぁ」
「お姉さんを吹っ飛ばして気絶させたのは、君のお嫁さんだけどね。まあ、メルヴィナさんに話した通り、一つを除いて特に進展は無いよ」
ケイトがもたらした情報は、特段怪しい動きを捕捉出来ず、だった。
その上で、蝙蝠がこちらの方角に数匹飛んでいたので、捕らえたというものだ。
「蝙蝠ねぇ……吸血鬼を思い出すな」
「そうですわね。カサラハンでは普段、蝙蝠は確認されておりません。怪しいですわ」
「お姉さんもそう思ったから、捕縛した後に殺しといたよ。居候先で逃げられても厄介だし、情報を抜かれたりしちゃ堪んないからねー」
ナイス判断だ。
こういうのは大抵、油断して捕獲したままにすると痛い目を見るからな。
「うん、色々情報が出揃ったな。敵の裏事情もある程度推察が出来る。次の手を打つぞ。――とは言っても、半分は正攻法だけどな」
二正面作戦の、な。
「情報、出揃いましたか? まだまだ敵の目的すら読めませんが……アイザック様、教えてください」
「んー、まぁ今後のリスクを考えて簡単にな。敵の目標がカサラハンなのは途中から察せていたが、予想以上に首都に固執してるって事かな」
「お姉さんは、今回の作戦すら教えてもらえなかったしね……」
ふふふ、猫娘が良いジト目を寄越すわ!
キーランには作戦名だけ、ケイトには何も言わずに留守を任せていた。
これは、行方不明になった時は勿論、洗脳された場合などに漏洩した情報から状況を推察するためだ。
もし作戦がバレても、グールエンペラーや吸血鬼の真祖が動けば、敵の位置や目的も探りやすいからな。
万が一の保険と言いたいが、これも一種の罠だ。
今回分かったのは、別行動中の敵の幹部に情報が届かなかったり、放った眷属が消されても大きな動きを見せないという事。
敵軍に合流している様子も見られない。
首都への潜伏が続いていると見られる。
自軍自体に、そして情報収集や連携に異常が起きても、明確に動きを見せないのだ。
「なーにしてるか知らねぇが、目論見は全て潰してやるぜ」
人外ども、覚悟しやがれ。
次回から全面戦争です。




