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オレのオレによるオレのための食事情改善③麺料理と革命的発見

~を使って短文を作りなさい。

冷蔵庫に牛乳が……(ry

 以前、米に似た料理を食べたからか、久々に麺が食べたくなった。パンは飽きたのだよ。

 パスタらしき物は王都に行けばあるらしいのだが、アンデルにはない。

 取り寄せたかったが、収穫量の問題なのか王都名産で門外不出なのかは知らないが、どうにもできないようだ。解せぬ。

 自分で作るにも、生憎麺生地の作成経験は無い。ジェスに研究させて、また何かの拍子で拡散されるのも面倒だ。

 どれが麺に向いた小麦粉なのかも知らないし。


 なので、麺類を取り扱う店を探して、珍しくアンデルの食事屋が並ぶ通りにオレは来ている。


「中々見つからないな。どいつもこいつも、パンばっかで飽きないのかね」


 そう愚痴りながら、店を覗いてはメニューを尋ねていく。

 子供だから見逃される事だな。食事処に入って何も頼まず出ていくなんて。

 遂に通りの外れに到着してしまい、徒労かと思って振り向く直前に一軒のボロい家が目に入った。通りから空き地を二つ程挟んでいるが、看板が出ているという事は店なのだろう。

 あまり期待はしてなかったが、意外とこういうところに掘り出し物があるんだよな、なんて思って扉を開ける。


「らっしゃい。あん? ここはボウズみてぇな身なりの良い奴が来るとこじゃねぇぞ」


 オレの姿を見た店主らしきオヤジが、自嘲と軽い威圧を混ぜたような声色でそう言った。


「あ、おじちゃん、ボク新しいものが食べたくてここら辺を歩いてたんだけど、メニューを聞いてもいいですか?」


 ボンボンみたいな台詞だが、オヤジの指摘もあながち間違ってないので、それでも追い返されないような言い方をしてみた。通じるかな。


「ちっ、ガキに俺の飯の味が分かるたぁ思えねぇが、確かにうちは他とは違ぇもんを置いてるよ。これがメニューだ、説明いるか?」


 当たり前だが、この世界には写真なんてものは無い。高級店とかならともかく、こんな潰れかけの店で本物のようなイラストが入っている訳も無い。だから新しい料理には説明が必要なのだ。

 彼の説明を受けていると、徐々にオレの目に光が灯る。

 何故なら、彼の商う料理こそがオレの求める麺類だったからだ。それも、聞く限り蕎麦やうどんに近い。


 因みに、オレはうどんより蕎麦が好きだ。

 ラーメン食うなら炒飯と餃子だが、蕎麦なら山芋だ。これは譲れない。アンデルにはどれも無いけど。

 だけど、ネギならまだ家の倉庫にあたかもしれない。いや、あったかもしれない。よし、今度卸そう。


「ほれ、こいつが俺のイチオシだ。味が分かんねぇなら遠慮なく言えよ」


(このオヤジ……分かんないって言ったら速攻で叩き出しそうだな)


 出てきた麺は、やはりスープがあって蕎麦やうどんに近い形だ。細さ的には蕎麦かな。

 だが、醤油も味噌もこの辺りには現存しない筈。スープは何で作ってるんだ?

 麺も近いとは言え、完全に同じじゃない。


「むっ、このもっちり感、今までに食べた事の無い食感だな。ただの小麦粉や蕎麦粉じゃない……餅や米に近いか?でも麺としての味わいもあるし、興味が尽きないな」


「ボウズおめぇ、その年で美食家気取りか? まぁいい。んで、美味ぇのか美味くねぇのかどうだってんだ」


「まだまだ改良の余地はあると思うけど、十分美味いよ」


「あぁん! ガキが知った口叩きや「フェイロン商会」がって……あん?」


「これでもフェイロン商会会頭の息子だからね。味の良し悪しは勿論、足りないところくらい見抜けるよ」


 未だに機嫌の悪さを隠そうともしないオヤジだったが、どうにか話を聞いてもらえそうな空気ではある。ここで下手な事言ったら叩き出されそうだけど。

 オレが唐辛子やネギなど、この麺に合いそうな具材やダシの取り方などを伝えると、オヤジの目の色が変わった。ところどころ半信半疑っぽい色も漂ってるのには目を瞑ろう。

 特に鳥ガラに反応している。


 オヤジに試してもらってからまた来ると告げ、ツテを使って店に品を流す。

 後日に改めて行くと、一心不乱に改良に精を出すオヤジがいた。

 ロクに礼も言われないどころか、まるで無視されていたけど、なんとか麺の元になる作物を聞き出せた。

 普通の麦とも違う、何やら特殊なものらしい。

 特殊性の一つとして、どうやらその畑は水に水没しているらしい。それって水田じゃないのか?


「もしかして……この麺の原料は稲の亜種なのか?!」


「いね……? 何を言ってか分かんねぇが、別に俺ぁ作ってる奴からそこまで話を聞いちゃいねぇから、自分で聞きやがれ。俺はこいつの改良で忙しいんだ、さっさと帰れ」


 作ってる村もどうにか聞きだし、身体能力強化(フィジカルブースト)まで使って確認に行く。そこに広がっていたのは、規模は大きくないが確かに水田だった。


「うーん、麦とか直接見た経験は少ないからなぁ。でもこれ、稲ではないけど普通の麦とも違うよな?」


 作付けをしている村人に許可をもらい、詳しく品定めに入る。

 最初はガキだからか門前払いの姿勢だったが、フェイロン商会の関係者だと分かると手のひらを返してきた。

 まぁ、あの店の様子から察するにあまり売れてないんだろう。それこそ、自分たちで食べていけるくらいにしか。作付面積も狭めだな。


 前々から思ってたが、もしかして商人の息子って意外にチートなのか? 別段金が使い放題な訳じゃないし、逆に親父たちに異世界知識をポンポン吸い上げられないように警戒してたから、地味に不自由だったが。

 一長一短って結論にしとこう。貧乏人よりは恵まれてるけどさ。


「おろ? これは……なんだろ」


 使用用途や特性、生育期間などを詳しく聞きながら見ていると、穂に付着している黒い塊を見つけた。

 何だっけ、これ。前世で見た何かに似てたと思うんだけど……。

 村人に聞いてみるが、要領の良い解答はもらえなかった。


(確か、大学生だった時に何かで見た気がするんだけどなぁ。あの時はマヨネーズとかソースとか色々自作してたから、食材だか調味料関係か? …………あ!)


 一つ、心当たりを思い出した。成り立ちが気になってパソコンで調べた記憶がある。

 だが、これはこんな謎植物でなく、オレが探し求めているアレにくっついていた筈なのだが。異世界だから何でもアリなのか?

 そもそもこの作物が、前世のオレの知識の何にも該当しない。なら異世界特有の現象でも別段おかしくはないか。


「前世のアレとは生えてる作物も違う。けど、見た目は似ているな。これなら最近停滞していた、あの二大巨頭の開発が進むかもしれない!」


 見立て通りであれば、という注釈は付くものの、これは大きな前進に違いない。

 オレの喜びは、この世界の誰にも伝わらないだろう。

 少なくとも、今はまだ。


 後にオレが開発した二大巨頭の一角が、いずれ世界を救う事になるとは、作ったオレでさえ事後に気づく事になるのだった……。

因みに救うと言ってますが、正しくはそのための(ry


取り敢えず最低限書くべき事は書けたので、次回から本編に戻ります。前回の話だけは、本来この話と同じ枠の話だったので、伏線とかの重要度は薄いんですけどね。

研究してた内容を回想的にして、後々閑話で挿入するかもしれません。

マヨネーズ無双失敗談義とか。えぇ通用しないんです、マヨネーズ。その理由はいつかの閑話で。

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