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クリスマスと正月が一緒にやってきたって、今戦争中でしたわよね!?

二ヶ月も失踪してしまい、大変申し訳ございません。

仕事とメンタル不調とスランプで死んでました。

繁忙は明け、メンタルはV字に上向きになり、スランプは越えました。明日も更新しますし、なんなら今週は最低3話更新する所存です。更に2話以上ストックを作りたい。


休みの度に書いては消して、他の小説に劣等感を抱き……となっていた鷹崎は滅しました。

今回は正月閑話にしようかと思いましたが、去年は8月からツキイチ更新になった、挙げ句2か月失踪で閑話って……と思ったので、閑話風の本編です。簡単な状況説明付き。

次回、作戦による惨状を描いており、その後は決戦へとシフトしていくプロットです。

「HAPPY NEW YEAR!!」


「明けましておめでとう!」


「いやいや、メリークリスマスでしょ~」



「はい!? 貴女(あなた)方、何を言っておりますの。今は、魔物軍との戦争中でしてよ! 敵のボス格である、吸血鬼の真祖や無駄に賢しげなグールが居ないからって、気を抜き過ぎですわよ」



 そもそも、わたくしの夫たるアイズことアイザック・フェイロンが言い出した「くりすます」も、新年を祝う催しもこの前やったばかりではなくて?

 あの日食べたケーキ、すごく美味しかったですわ……ではなくて!

 これはどういう事かしら。


 わたくしの記憶が確かなら、アイズの策略によって敵の軍隊は、攻め落とした街の中で爆風に呑まれた直後だった筈。

 それなのに、眼前に広がる和やかなパーティームードはどう考えてもおかしい。

 敵も見当たらないし、そもそも防衛に当たっていた他の冒険者や兵士も居ないみたいですわね。


「まさか、爆発に巻き込まれて頭でも打ったのかしら……いえ、アイズの配慮でかなり遠いところから魔法を放っていたのだから、そんな事あり得ませんわね」


「ここに居たのか。探したぜ、フラン」


 この声は!

 何故か久し振りに聴いたような気がする、愛する(アイズ)の声!

 聞き間違える筈もありませんわっ。


「良かったですわ、アイズ。ねぇ、なんだかおかし……い……の…………」


 振り返ったわたくしは絶句しました。

 どうしてかと言えば、そこに立っていたのは(およ)そ理解の範疇(はんちゅう)を逸脱し切ったものだったからです。


「おいおい、どうしたフラン? 浮かない顔して」


 眼前に晒される、変わり果てた姿。


「あ、アイズ……その格好は……一体、なんです、の? と言うか、本当にアイズ、ですわよね?」


 震える声で紡がれる誰何(すいか)


「おう、そうだぞ?」


 それに対して、まるで何を言われているか分からないという顔をする男の子。

 あぁ、そんなお顔も格好良いわ、なんて思ってしまうのは惚れた弱味かしら。そんな風に少し現実逃避する。


「何って、鬼サンタに吸血ゾンビのトナカイコスプレじゃないか。クリスマス正月には定番の格好だろ?」


 そんな定番があってたまるかですわ!!

 そう怒鳴り付けたいのに、あまりの衝撃で二の句を告げない。

 こんな体験、初めてですわ。嫌な初体験過ぎて、やるせなさしかありませんけども。


 尚、わたくしの心の中のアイズが、なんで節分()ハロウィーン(吸血鬼・ゾンビ)の格好でクリスマスと新年を同時に祝ってんだよ!とツッコミをあげておりますが、セツブンにはろうぃーんとは何の事ですの?

 ただ、わたくしの代わりに気炎をあげてくれた事に感謝いたしますわ。これで少し冷静になれました。


 目の前に佇む、新しき英雄にして派手過ぎないイケメンの旦那様は、派手を通り越して奇抜とすら言いあぐねる格好をしておりました。

 具体的に言うと、歯が鋭く血走った目をして、ところどころ身体が腐っているような見た目をしている鹿のような動物の着ぐるみを両足に履き。

 上半身は、赤い色の素肌を模した服――ボディコンという言葉が何故か頭に浮かびましたわ――を身に纏い、何故か同色のモコモコした上着を羽織っております。


 白いファーがどことなく白い付け髭と被って、見えにくいったらありませんわ。

 更には手綱を使って、鹿のような着ぐるみの前脚にあたる部分を持ち上げている。

 遠くから見ると、鹿にロデオしているオーガに見えなくもないわね。

 ここまで観察しても尚、理解に苦しむその格好に、思わず。


「ちょっと何言ってるか良く分かりませんわ……」


 溜め息混じりに遠い目をしてしまいましたわ。

 貴族令嬢のわたくしが行うには、あまりにもはしたない所作でしたが、そんな事すらどうでもよく思えてしまいますわね。


「で、あれもなんな訳? 説明……いえ、今の貴方にお願いしてもよりカオスになるだけですわね」


「ん? メルヴィナにケイト、エルミアたちの事か?」

「説明しなくて良いですわ」


 被せるように言い放つ。

 だって、あちらもケーキとお雑煮を掲げて、飲めや歌えやの大騒ぎをしてるんですのよ?

 真面目に説明されても、ぶっ飛んだ解説をされても、どちらにせよ目を覆いたくなる光景に違いありませんわ。


 お胸の大きい侍女で、親戚の姉のような存在であるヒーラーのメルヴィナ。

 いつもお腹を空かせていた、親しみやすさ抜群の流浪のアーチャー、エルミア。

 生い立ちに恵まれない中でも、明るさと幸せを諦めないスカウト、ケイト。

 誰もが尊敬できる仲間なのに、あられもない姿を晒している。

 ……あら? わたくしたちのパーティーにはもう一人居たような気がしましたが……まぁ良いですわ。


「ふぅ、これは夢ね。まったく分かりやすい夢だこと」


 冷静になったわたくしは、目の前の事をそう断じていました。

 だって、それ以外考えられないもの。


 アイズの英雄譚を綴るため、冒険の日々に明け暮れるわたくしたち。

 街から街、国から国へと渡り歩いた中で巻き込まれた、知性ある化物との戦い。

 四鬼公を名乗る奴らは、滞在中の国へ謀略を仕掛け、更に物語でもほぼ見ないような大軍で攻め滅ぼさんと向かってきました。


 そんな化生の者たちに痛い目を見せてくれようと、アイズが立てた計略で迎撃した――そんな最中にパーティーとか意味分かりませんから。

 幾らわたくしでも、違和を感じない訳ありませんことよ。

 とは言っても、夢の中でそれが夢だと気付けるなんて、珍しい事もありますわね。そんな風に思っていたら。


「おいおい、フラン嬢ちゃん。幻覚を掛けられていると気付けないなんて、それでも師匠(アイザック)の伴侶かい? 魔法使いなら気付こうぜー?」


「あ、貴方は…………誰でしたっけ?」


 振り返ると、軽薄そうな見た目と顔をした男が、ウィンクしているところでした。

 何か見覚えがある気がするけれど、良く思い出せない。


「ちょっ、おい! 最近師匠のアイザック・フェイロンに認められて仲間になった、キーラン・アクトンだよ! 首都カサラハンに居残ってるからって、忘れるこたないだろ?!」


「あー、覚えてます覚えてます。あの、確か、アレですわよね?」

「それ忘れてる奴の反応な!?」


まったく、うるさいですわ。

男が細かい事をぐちぐち言うものではありませんわよ?


「あれか、嬢ちゃん呼びが不味かったか、よし、では(ねえ)さんと……」

「人の妻を変な愛称で呼ぶな馬鹿弟子。いや、弟子だと認めるつもりはないが」


 ザシュッッ、という音と共にアイズが軽薄男改めキーランを斬り飛ばす。

 え? 峰打ちだから心配ない? その剣両刃だったと思うのですが……。

 というか、ミスリルと竜の牙を合成して打ち上げた、国宝級の名剣で斬るのは流石にやり過ぎじゃありません?

 仲間斬りに使われるなんて、竜剣デュランの名前が泣きますわよ。


「あーでも、確かにケイトの闇魔法みたいな感覚がありますわね。これ、本当に幻覚なのかしら」


「ほう、フラン。それに気付いたか。流石はオレの愛しの妻だ」


 うーん、現実なら照れるところですが、夢か幻覚の夫に(うそぶ)かれても何も感じませんわね。

 まぁ、良いですわ。

 幻覚なんて魔法でも薬でも、普通は掛けられるようなものではありませんが、取り敢えず魔力を全力で放出してみましょうか。


 ふっ――


「にょわぁぁぁぁ!!」


「ちょっ、フラン?!」


 魔力を体内と体外に張り巡らせ、臨海点に達する前に外へと放ったその瞬間。

 視界は暗闇に閉ざされ、何処か遠くで猫のように高い叫び声と、愛しい男の子の声色が聞こえた気がしました。


「んんぅ……あら、わたくし眠っていたんですの?」


「すんげぇ寝起きだな……。まぁ色々あったし、仕方ないか」


 おかしなものを見ていたような、夢うつつの状態で視界一杯に写ったのは、竜の革鎧に身を包んだアイズの心配そうな表情。

 何故かその見慣れた姿にホッとした後、今が戦時下である事を思い出す。


「ハッ、戦いはどうなりましたの!?」


 相手にわざと街を取らせ、敵陣毎爆破した事までは覚えてますわ。

 しかし、わたくしは何故寝ていたのでしょう?


「作戦は成功したよ。怪我人は出たが、オレたち防衛陣には死者なしだ」


 ……防衛陣には、だけどな。

 聞かせる気は無いであろうその小さな呟きが、この時ばかりはわたくしの耳朶(じだ)を打った。

 僅かに悲痛さを称えた表情を見て、記憶の糸が繋がろうとする。


「いや、なんでもない! 兎に角、敵の被害は甚大だ。そこそこ距離も取れたし、軽く経緯でも話そうか。記憶も朧気(おぼろげ)みたいだしな」


 そうして、アイズは街の防衛戦で撤退した後からの事を話し始めます。

 離れた場所に配置された彼の言葉を聞き逃すまいと、わたくしは紡ぎかけた記憶の欠片を放って耳を傾けたのでした。

なんでこんな事になってたのかも、一応少し描写予定です。

正月閑話でやろうと思ってたネタを中途半端に出しましたが、後悔はしてない。


前話までのあらすじ。は次話前書きに掲載します。

改めて、明けましておめでとうございますm(_ _)m

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