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作戦始動の前段階

ロスタイムσ(o・ω・o)


前話までのあらすじ。

無双を求める少年アイザックは、手にした力とパーティーメンバーと共に連合国に入った。

そこで巻き込まれる人外達の陰謀。吸血鬼とグールの最上位種を四天王(的存在)に構える組織は、スタンピードとは名ばかりの、大規模過ぎる魔物の軍勢を用いて国を滅ぼさんとしていた。

それに対するアイザックの対抗策は……。


アイズ「引き込んで爆弾街作戦」

作者「引っ張るな。気に入ったの?」

アイズ「割と」

「ぐ、ぐぬぬぬ……うぇっ。おろろ、うぅ……死ぬかと思ったぞ」


「大袈裟っすね。たかが馬車道一週間を数時間で踏破した程度ですよ」


 オレはバタンキューと倒れ伏すおっさんに声をかける。

 今居る場所は、昨日スタンピードの偵察から帰還する際に立ちよった街、クラスタだ。

 冒険者ギルドと貴族屋敷で威圧と共に啖呵を切った昨日を思い出すと、自分の無鉄砲さに少し恥ずかしくなる。


「ふざけるな! そんな人智を超えた苦行に付き合わされた身になってみ……うぷっ、おろろろ」


 汚いなぁ。

 しかめっ面でいるとそんな感情が伝わったのか、射殺さんばかりの眼光をいただいた。

 まるで、一族郎党皆殺しでもにされたかのような表情している。

 但し、その口端には吐瀉物にまみれている。

 まったく、迫力に欠けるぜ。


 先程から会話をしている中年男性はブレメンス連合国が誇る勇将だ。

 騎馬を駆り、馬上では連合国最強と誉れ高いのだとか。

 確か、ガロックという名前だったな。

 オレの一応の庇護者であるフォンマ・ディッカー公爵の派閥に属している。

 何故それが、オレの帰還の翌日に此処に居るか? そう、オレが背負ってきたからである。


 そりゃ吐くわ。

 乗り心地最悪だもん。


「いや、流石にオレだけだと小道具があっても説得できないしさぁ。じゃなくて、できないですし。騎馬に慣れた将軍なら耐えられるだろうと、ディッカー公からの推薦でもあったんですよ?」


「ぐっ……いや、あの方も貴様に同道する事に対して、憐れみの眼を向けておられたぞ。くそっ、あれはこういう事だったのか……。あと、別に口調はいつも通りで良い。私は叩き上げの将軍である。一部の文官と違って、繕った敬意に興味などない」


 いや、ありがたいけど後半取り繕ったって、さっきまでの情けない雰囲気は誤魔化せないと思うが……。

 まぁ、突っ込んではやるまい。

 固定具(ハーネス)や酔い止めの魔法など、フランを背負う事を見越して用意したものを使ってはいるものの、実践投入は初めてだったからな。実験台とも言う。


 しかし、ディッカー公は異常に信用してきてると思ったが、盲目的ではなく、ちゃんと俺の行動の非常識さは認識していたんだな。

 少しだけ安心する。

 多分、フランの信頼と目の前で見せた実力、国の暗部にして重要な場所でもあるキレル山脈の魔物村を救った実績。それらが加味されて、一時的に権限を付与されたんだな。

 事態の重さを正しく理解し、拙速を尊ぶその精神は国のトップとして正しい、んだろうな。多分。前世も今世も平民だから知らんけど。


「しかし、酔いを防止する回復魔法とは……今度是非、我が騎馬隊の新兵訓練用に学ばせたいものだ」


「いや、あれ一応固有魔法だからね? 出来るかどうかも、メルヴィナが教えてくれるかも確約できないって」


 固有魔法とは、この世界では使い手が一人しか射ないものを指す。主に、母国より北側で使われる言葉だった。

 だから、新しい魔法を作れば他に使い手が現れるまでそれは固有魔法となる。

 ぶっちゃけ、オレの雷魔法もこれに該当するだろう。


 まぁ、あれだ。メルヴィナと作った。

 だって、馬車酔いする奴も居るしね。誰とは言わないけど我がパーティーに。

 車酔いで敵襲に対応できず死にましたなんて、誰がどう聴いても恥ずかしくて情けない死に様だ。

 仲間を死なせるつもりはないが、万が一そうなった場合、オレも仲間も死にきれない。


「まぁ、そんな事は一先ずどうでもいい。兎に角、領主屋敷に向かわないと」


「そうであるな。この期に及んで、閣下から信頼を獲得している君の諜報活動を疑いはしまい。さて、何処まで準備が進んでいるか……」


 結論から言って。

 領主の首は、皮一枚繋がっているくらいの状態だった。


「可もなく不可もなく、だな。言い含めるのを忘れていたけど、斥候だしたのは減点。ただ調査範囲を区切って全員今日までに返させてるからまぁ良し、か」


「うむ、あとは閣下がかなり渋々ながら認めた……いや、最終的な実行判断を現場に任せた作戦の下準備である。――しかし、本当にそこまでしなければいけない程の脅威なのか? いや、通常のスタンピードと異なっている事は重々承知なのだが……」


 クラスタの街の領主は、オレがちらつかせた証印や言動のおかげで、何も動いていないという事はなかった。

 街の住民たちに詳細は伝えないまま、退避の準備を半ば強行的に進めさせている。

 その進捗は芳しいとは言えないが、特に抗議デモみたいなのも起こっていない事から、普段から善政を敷いている事が伺えた。


 ただ、当然オレの言葉だけを鵜呑みにはできなかったのか、個別に斥候を出していたようだった。

 そいつらが捕まっていたら、折角急いで迎撃準備を整えに来たのに台無しである。

 まぁ、奴らは行軍速度的にまだまだ先にいる筈なので、たった一日では常人じゃ辿り着かなくて当然なのだが。

 オレ? ほら、一応世界最強クラスの新身体能力持ってるし。未だに現状の身体能力に匹敵する人類を見た事無いんだよな……。もし居るなら、そいつはどれだけ強いのやら。


「普通のスタンピードは、同種の魔物のみで構成されているし、規模はまちまちだが軍事的行進なんざしやしない。ただ大規模な群れが彷徨ってるだけだ。だが、あれはそうじゃない。あんたも、英雄カルディナからの報告書は見たんだろ?」


「うむ……いや、すまん。どうも今までの常識で考える癖が抜けないようである」


「最終的に理解を示してくれるなら構わんさ。情けないが、あれはオレたちだけじゃ止められない」


 オレの悔しげな言葉と表情に、ガロックのおっさんは不思議そうな顔をしていた。

 軍勢を単騎で止められるわけないだろう? 彼はそう言いたげだった。


「……」

 

 オレは敵が来る筈の方角を睨めつけながら、話し合いの場に足を運んだ。



 ◇◆◇◆◇



 数日後。

 ガラガラと音を立てながら、車輪が回転していく。

 その総数は凄まじいもので、騒音を掻き鳴らしながらこちらへと近付いてきていた。


「やっと来やがったか」


「いや、総数をかなり絞り、軍の人員よりも冒険者を優先したとはいえ、ここまで早い行軍は、中々類を見ないのだが……」


 そうらしい。

 かなりの強行軍だったのか、此処から見える馬車の乗り手たちは、疲労困憊が顔に滲み出ていた。

 接敵はまだとは言え、敵の大軍が近づいてきているんだが?


「さて、フランたちは何処かな」


「ふん、憎たらしくも壮健なようだな」


 実は近付いて来ているのを察知しながらも、敢えて無視していた輩が話しかけてきた。

 天稟の才を持つ魔法剣士、ナルヴィク・ランカスターだ。


「んだよ。作戦について現場判断だから確定じゃねーけど。もし実行するとなったら、お前の出番はまだまだねえぞ」


「それだよ! 作戦の詳細はまだ聞かされていないが、概要だけは聞かせてもらった。貴様は一体何を考えているんだ!? はっきり言って頭がおかしいとしか――」

「おぉ~、アイザック君じゃないかぁ。久しぶりったい。先日の軍議にあっしは呼ばれなかったからねぇ。帰ってきてるって知った頃には、もう居ないって言うし。会えて嬉しいよぉ」


「げっ、ワプル!」


 いけ好かないキザ男の後ろからぬっと顔を出したのは、身の丈を超える大きさの盾を背負う巨漢だった。

 ブレメンス連合国最初の街、オルファン付近で会ったホモ疑惑漂う濃い男である。

 あれから、フランのライバルであるメロディと行動を共にし始めたのは知っていたが、まさかオレの苦手の二人が徒党を組んで絡んでくるとはな。


「今回取るだろう作戦は、アイザック君の発案って聞いたよぉ。流石、あっしが認める(おのこ)ったい。どうだい? 今夜は熱く語り合わさないかいぃ?」


 嫌です。

スタンピード終わったら次章です。

フラン覚醒&活躍回にして、転生の原理と言うか秘密が半分くらい明かされます。

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