スニャンピード(一方その頃)
ただいま……。
運転中の貰い事故で、手首と指が逝ってました。
仕事のせいで完治も遅く、まだ痛みますが流石にこれ以上休んでられないので、更新再開します。
本編の更新は明後日頃。
今月中に最低三回は更新します。あらすじも書かなきゃ。
執筆する暇が無くなるからパワプロの新作泣く泣く諦めたのに、結局書けないとか(´;д;`)
離れた異国の地で、今まさに国を呑まんとする凶悪で膨大な規模のスタンピードが発生しているその時。
通常の魔物の軍勢とは、まったく異なる様相を呈しているそれらに、アイザックが一計を案じた瞬間と、時を同じくして。
その飼い猫もまた、眼前に広がる生き物たちのスタンピードに晒されていた。
壁のように並び立つ影。影。影。
影の群れ。
それはボクたちの行く先を覆うかのように、進行方向を埋めていた。ニャ。
流浪の冒険者いそーろと、ボクことニャイトに、にゃんの用なのやら。
「おい、ニャイト坊。こいつぁどうゆう事だ?」
「ニャーン」
それはボクも知らにゃい。
あと、飼い主をザク坊はまだ分かるけど、ボクに無理矢理『坊』を付けないで欲しいにゃ。
ぶっちゃけ、センス無いにゃよ?
「ふむ、知らんか。でも俺にも心当たりが無い以上、多分お前さんだろ? 猫同士事情でも聞いてこいよ」
「るにゃーん?」
それは偏見と言うものにゃ。
まぁ……多分そうなんだろうとボクも思うけれど。
何故なら、行く手を完全に阻んでいるのは猫の大群だったから。
しかも、見覚えのある奴らも多いのにゃ。
「しゃーッ。ぐるるるる……」
こいつはどういう事だと問いかけてみる。
例え猫でもここまで数が揃い、囲まれると中々の威圧感があるにゃ。
だから少し敵対的な空気を醸し出して、にゃあにゃあ言う。
「るるるる……」
「ニャァーン!」
「ふしっ、くるるる」
「しゃあごろっ」
「にゃぉーーん!!」
分かったかにゃ?
そう思いを込めて後ろに佇むいそーろを見つめる。
奴は首を傾げていた。
うん、ボクにも分からにゃい。
だって、こっちの問い掛けに一斉に答えてくるんにゃもん。
因みに最後のやつは只の遠吠えにゃ。意味などない。
犬っころの真似をするとは猫の風上にも置けぬ。にゃ。
「ぐるぐるぐる……」
そもそもお前らは、望むと望まざるとに関わらず、ボクの配下にゃろ?
いつの間にか、ボクはこの街でも猫たちのドンになっていたので。
煮え切らないボクたちの態度――意味が分からなくて立ち往生してただけなのだが――に我慢の限界に達したのだろうか。事態は動く。
「「「にゃああああああーー!!」」」
奴らは何を血迷ったのか、一斉にこちらへと駆けてきたにゃ。
その圧は、正に波。
本物の波がにゃにを表すのかは分からないけど、川にアイズと遊びに行った時、あのバカが飛び込んで撒き散らした水の流れに似ているらしいにゃね。
襲い来る猫たちを止める手段は、ボクにはにゃい。
隣の高ランク冒険者なら容易いのだろうが、不要に傷つけたくないのか、特に動きを見せなかったにゃ。
……後で聞いたら、戸惑ってただけらしいけどにゃー。
まぁ、突然の意味が分からない事態と、それでも尚、大して危機ではない状況に困惑するのは仕方にゃいか。
「にゃにゃにゃァ!!(行かせやしねェ!!)」
「にゃららぁァ!!(ボスさんを返せ!!)」
何を言ってるんにゃ、こいつらは。
流石に黙ってられぬと迎撃の体勢を取ると、釣られて隣のいそーろも構える。
それを見た猫たちは、一匹でも辿り着かんと何匹かを鉄砲玉に見立てて一直線となったにゃ。猫が槍のようなフォーメーションで猫まっしぐら。
その光景はまるで、昔アイズの話で聞いた列車にゃ……。勢いが凄い。
「ふしゅ……にゃああぁぁああー!!(止まれ猫列車ァ!!)」
喉も裂けよと大喝する。
決して止まりはしにゃいが、速度はかなり鈍った。ここが狙い目だにゃ。
「ンニャォーンッ」
お前が元凶か。きっとそうだろう。そうじゃなくてもお前のせいにゃ。
そんな気持ちを込めて、先頭のすぐ後ろを走っていた黒ブチ猫に猫パンチをお見舞いする。
一発で奴はダウンした。
こいつは元々、この街のボス猫だった。
街をぱとろーるして、コウモリを狩っていたボクに因縁をつけてきたので、のしてやった。
そうしたら他の猫共々、僕の後ろをついてくるようになった。
黒ブチは今でも、他の猫に比べてそこそこの立場を持っている。
だからこそ、一撃の元に葬……首謀者と断定して見せしめに殴ったにゃ。
そうして問答をしようとしたのにゃが、ダメだった。
やはり、あいつがこの集団を扇動してきたようで、急に統率が取れなくなっている。
それは、烏合の衆ならぬ猫合の衆だったにゃ。にゃんと読むのかは知らにゃい。
「ふしゅる……ヴゥナァーン」
怒りを吐き出し、これはどういう事だと他のボス格の猫の胸ぐらを掴み上げる。
猫合の衆はまだ混乱極まれど、そいつはなんとか返答を返してくれた。
「るるる、にゃあ……(だって、ボスがこの街を出てくって聞いて……)」
「ニャッ?(は?)」
いや、ボクは此処を出ていかんよ。隣のいそーろがそろそろ出ていくらしいから、只の見送りにゃ。
そう伝える。
お前らが何を勘違いしたのかは知らにゃいが、ボクはこのイルネストの街は出ていかないにゃよ?
だって火竜の子供ユウニャはまだ幼いし、一応はボクが親認定されているので、居なくなったらどうにゃる事やら。
せめてユウニャに物事の分別が付くようになって、そこら辺の魔物になら簡単に勝てるようになるまでは、滞在するつもりにゃ。
「あー、つまり、こいつらはお前の事を慕って此処まで来た感じか? なんで急にこんな街中の猫が群れを成して来たのか分かんねーけど」
「ふしっ」
鼻息で肯定する。
まぁ、そもそも原因はお前の格好にゃ。完全に今から旅に出るところにゃろ。
隣の男がこの街を出ていくのは、あくまでそろそろで、今日行く訳じゃないらしいから、ボクもその格好に驚いたのにゃが。
めっちゃ旅装纏めて、屋敷を出たらそうだと思ってしまうよね。
そもそも、こいつは妻子を連れて旅をしているらしく、今連れていない時点で今日はまだ出立しないのは、当たり前の話であった。
こいつの子供が「猫あれるぎぃ」なるものらしく、ボクは会わせてくれなかったから、知らないのも当然だったにゃ。
……ふん。良いもん、ボクにはユウニャが居るから。これ以上手の掛かる子供の相手は沢山にゃ。
拗ねてなんかにゃいもん。
紹介すらされなかった程度で、そんな。
ボクだったら、その「猫あれるぎぃ」なんてボコボコにしてやるのにっ!
そんな怒りを元に、たしったしっと後ろ足を地面に叩き付ける。
取り巻きの猫たちが動きを止める。
……はっ、これはウサギどもがする所謂ストンピングじゃにゃいか。
落ち着けボク。周りの猫も怖がらせているにゃ。
何事も無かったかのようにしれっとした顔で周りを見渡すと、猫たちはようやくボクが何処にも行かない事を悟ったようだった。
「にゃ、ニャニャぁー!(あ、兄貴ぃ~!)」
「るるる、るるるぅぅ(良かった、良かったよぉ)」
「…………」
直後、付近にまで迫ってきていた猫たちが再び津波の如く動き出し、ボクを飲み込んだのにゃ。
止めろ! 体格差はあれど数が数にゃんだから耐えられるわけがない。
あと、誰が兄貴にゃ。ボクは誰も舎弟にした覚えはないぞ。
それに最後の奴! サイレントニャーしながら顔面に突っ込んでくるニャ! 地味に怖いっ。
「えーっと、ニャイト坊。助けはいらないよ……な? ジャレてるだけ……だろ? よな?」
それだけ疑問符付けるなら今すぐ助けろにゃー!
今日の教訓、数は力。
それは、ボクがどれだけ普通の猫を超越した力を持っていても、抗いようのない「猫の波」という名の暴力だったにゃ。
「ミギャーーーー!!」
まるで胴上げでもされるかのように、ボクの体は行ったり来たり。
あっちこっちに回されるその光景を「俺は何も見なかった」とでも言うかのように目を逸らして佇んでいたお前は絶対に許さにゃい。
お前の事にゃよ、アイズの冒険者友達いそーろ。ホントにホントに、許さにゃいからな!
「グルル、ニャー!!」
ぐぬぬ、力が欲しいにゃ。
大変お待たせしました。
また頑張るぞ!!




