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二つ目の鍵

少年期スタート

 オレはアイザック・フェイロン。

 相変わらず魔物食以外でステータスがロクに伸びない、不遇な少年だ。十歳になった。

 前世でネトゲをした経験はあまり無いんだけど、不遇職ってこんな感じなのかなって思う事もある。

 いや、不遇職ってのでも成長くらいするか……。自力成長ほぼゼロよ、オレ。


 今オレは悩んでいる。

 本格的に自分の強化に奔走してから、三年と少し。

 非才だったなんて嘘に思えるくらいには、強くなる事ができたんだよ。

 けれど成長はやっぱり魔物食限定だから、伸びる速度に限界が来ている。

 食える量なんて大して増えないからな。吐くと効果無いし。デブも嫌だし。運動量が多いから、その分は常人より多い食事量だけども。


 ステータス的には大分高くなったが、このまま同じ成長速度で冒険者の枠を超えれるのかって話だ。

 オレがしたいのはあくまで主人公的な無双であって、ただの冒険者じゃないんだよ。

 まぁ、冒険者らしく世界を見て回りたいってのもあるから、無双が全てって訳でもないんだけどね。


 それに、実戦経験は結構積んでる筈なのだが、如何せんステータスに準拠した動きができない。

 例えるなら、VRMMOを題材とした小説とかで良く見る、ステータスだけ高い素人やごり押し厨だろうか。

 こう、熟練した動きや反応ができないんだよな。薄皮一枚の見切りとか。

 剣技はオクタゴンのメンバーや他の冒険者にも鍛えてもらってるから、悪くはない筈なんだけど……。

 やっぱり凡人には無理なんだろうか?


 頭部や魔力を司る丹田のステータス上昇が、他より極端に低いのも気になる。

 他の筋力値は平均的に上がるのにな。

 魔力は、魔法を使うモンスターを狩ってないからか? 多分そうだろう。

 頭って言うと……思考速度? 上げるためには……脳を食べるとか?

 うわ、嫌だ。オレサマ、オマエ、マルカジリは嫌だ。


 謎は解けないけど、全く上がらない訳じゃないから頑張るしかないな。

 二年ちょい前くらいに偶然仕留めたグレイトディアーを食べた時は、ウサギ肉と比べて全体的に上がり幅が大きかった。

 つまりは、高位モンスターの血肉程、ステータスは大きく上がる訳だ。相応の危険と体への負荷が伴うけども。

 要するに、今よりもう少し強い獲物を狙うか否か迷っているんだよ。


 取り合えず、魔力も上げたいし今日はゴブリンウィザードがいるらしい、奴らの集落を強襲しようかな。

 血のソースはあんまり美味くはないけど、肉より手軽にステータスが上がるからね。魔法が使えるなら魔力値も上がる筈だ。

 これが、また一段強くなる足掛かりになる。多分な。

 最近は基礎ステータスが伸びたから、ゴブソースは使ってなかった。またあの味に苛まされると考えれば、ちょっと憂鬱な気分。


 オレはこの時、こんな風に安直な見通しを立てていた。

 最近はそこそこの強さを手に入れた事で、何とかなると驕っていたのだ。

 ……違うか。それよりも、そこそこの強さ止まりにならないようにと、焦っていたのかもしれない。



 ◇◆◇◆◇



 今日も今日とてオレは一人で森に侵入している。

 この森を左方向に分け入ると、ポツポツと開けたところが出てくる。

 その一つにゴブリンどもが集落を作ってるらしい。

 ソロで来ている理由は、人目を忍んでゴブリンウィザードの血やら心臓を回収できる気がしないからだ。

 ……ぼ、ぼっちちゃうわ! 最近は強なったから臨時パーティーぐらい組む時もあるっちゅーねん! う、嘘じゃないぞ!


 複数相手はまだそこまで得意じゃないけど、普通のゴブリンなんてもう相手にならない。

 ゴブリンウィザードだけに注意すれば問題は無い。少し前に偵察に行った斥候タイプの冒険者情報では、上位種はそいつだけみたいだしね。


「取り合えず魔法で奇襲とかやりたいところだけど、射程がある魔法なんて使えないからなぁ」


 オレも魔物食による魔力値増強で魔法が使えるようになったのだが、あまり得意ではない。やはり才能が問題なのかとは思う。

 イメージが魔法の構築に影響を与える面もあるから、そこまで酷くはないのが救いだ。

 けど、ラノベみたいにアニメで見た魔法とかは再現ができない。

 虚像じゃない現実のイメージ限定、みたいなところがあるからだ。故にテレビ越しはオーケー。……出来心でフランベをイメージして魔法を使った時は面白かったなぁ。ジェスが珍しく取り乱していたし。


 オレが積極的に伸ばしているのは雷魔法だ。

 この世界には電気という概念が無いからか、雷魔法は存在しない。

 だが、前世で友人が持ってたスタンガンを悪ふざけでくらった事があったので、それを強くイメージして発現してみたら、ほんの少しだけ電流が生まれたのだ。

 ハンターな漫画に出てくる殺し屋の少年みたいに、指先の間がバチッとなった時は感動したね。

 力を伸ばした後の彼みたいに、雷ドーン! ってできれば良いんだけど、残念ながら今のオレには魔力的にも魔法を使う技能的にも不可能だ。いつかやりたいけど。

 最大出力でも、精々スタンガンより強いくらいの威力しか出ない。しかも近距離限定。


(見張りは二匹か。雑魚に用は無いから、ボスだけ仕留めたいんだけど……)


 巡回中のゴブリンも何体かいたが、森で音を立てながら歩く奴らの存在なんて筒抜けだ。遭遇する可能性は非常に薄い。遭っても消すし。

 スニークスキルを狩人程度には身につけたオレだが、流石にこの集落の中に侵入してゴブリンウィザードだけ暗殺するのは不可能だろう。

 因みに、スキルって言ってもゲーム的なものじゃないぞ。


「となると、陽動かね」


 ボソッと呟き、もはや七つ道具ばりに洗練された道具類を漁る。

 いつぞやの爆竹擬きは未だに愛用している品だ。今回は使わないけど。

 オレが取り出したのは、この世界では高価なレンズがはめられた棒状の物体。

 そう、望遠鏡だ。


(んー、やっぱ日本のそれと比べると、倍率ひっくいし不鮮明だなぁ)


 前世で高校生だった頃、学校行事で行った林間学校でプラネタリウムを見たのだが、その後の長い自由時間に、希望者限定で手作りの望遠鏡を作ったのだ。

 それを思い返して四苦八苦しながら作り上げたのが、この不恰好な望遠鏡である。

 遠くを見る時は便利なのだが、壊しても替えは無いし倍率はオモチャと大して変わらない。

 それでもこの世界の中では、有用なアイテムであると言えた。


 木の上に登り高所から眺めているのだが、ゴブリンウィザードらしきゴブは見えない。

 だが、粗雑とすら言えない棲み家が並ぶ中、竪穴式住居紛いのものが一つだけある。

 歴史の教科書などで見たものより大分ショボいが、表現に困る程残念な他と比べればかなりマシだ。


「多分あん中だなぁー。よっし、作戦開始っと」


 集落と言っても、別にあいつらが切り開いた訳じゃない。

 元々開かれていた空間を利用して住んでるだけだ。ここら辺にはデカい洞窟なんて無いしな。

 つまりは、集落と森の位置はかなり近い。

 一番近い木が倒れれば、端にある棲み家は簡単に潰れてしまうだろう。そもそも、ここらの木は長寿すぎてかなり背が高いからな。


 一番効果的な場所と方向を選定し、作業に入る。

 身体能力強化(フィジカルブースト)を軽く使って、音が出ないように気を遣いつつ準備を整えた。

 ゴブどもの状況を観察するが、別段先程と変わらないように見える。

 近くの木に登り、魔法で小さな火を作り出すと、細工をした木の上で生い茂る枝葉に当てる。

 生木は中々燃えないが、可燃性の油を振りかけていたので労せず発火させる事ができた。


(下見るとかなり怖いな……。まっ、落ちても足で着地すれば骨が折れたりまではしないんだけど)


 鉤ヅメロープと自前の身体能力を駆使して登ってきたが、今いる場所はかなり高い。

 音を立てないように着地してから、オレは小石を投げて見張りのゴブリンを釣った。


「ギャッ? ゲギャアアアアァ!!」


 釣ったゴブリンになるべく大声を上げさせるようダメージを与え、トドメを刺してから今尚燃えている木に打撃を加える。

 事前に手を加えていた木は、ギギギッと音を立てながらゴブリンの集落目掛けて倒れていった。


 ――バダァァァンン!!!


 凄まじい音を立て、巻き上がる土煙。

 燃え盛る火が集落に燃え移り、先程のゴブリンの悲鳴も相まってこちらに駆けてくるゴブと慌てるゴブの二種類に分かれている。

 オレはと言えば、既に現場を離れ、集落の外縁を旋回するようにして反対側に向かっていた。遭遇したゴブは一刀のもとに斬り捨てた。

 手頃な場所で木に軽く登り、望遠鏡で集落内部を把握する。


(……いた! 他の雑魚と違って服みたいなのを着てるな。魔術師の癖にデカい体しやがって)


 他のゴブリンとは見た目も雰囲気も違う個体を発見し、フルスピードで集落に侵入する。

 周りのゴブリンはオレの速度について来れず、ただ声を上げる事しかできない。

 だが、その声を聞きつけたのか、背後から飛び掛かったオレの奇襲は奴が持っていた長物に防がれた。


「おいおい、こいつどう見てもただのゴブリンウィザードじゃないよな」


 オレの剣撃を防いだのは、魔術師(ウィザード)が使うような杖などではなく、粗雑な造りをした幅広の長剣だった。

成長した主人公の、少しはマシになった戦闘が始まります。狩人(仮)だから、良く言えば戦略的、悪く言えば小賢しいものになる感じですヾ(o゜ω゜o)ノ゛


私の好きな作品で、ある主人公が言いました。

小細工がダメなら、大細工だと。

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