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思い出
思い出がある
白い光の照らす赤い玄関 白い廊下
そこに腰かける一人の少女
誰にも見向きもされず
大人に抱きかかえられ 階段を上って行く
ただ一人
大人に抱きかかえられ 学校を去っていく
「何故、一人で出来ないのだろう」
深く考える事もせず
ただ見ているだけだった
少女は死んだ 心臓の病で
あの時
深く考えなかった自分を悔やんだ
「麗子微笑」
岸田劉生のその絵を見る度に
少女の事を思い出す
仏にも似た、その横顔と共に…
永遠に小学校六年生の少女は
唇が、紫色だった