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第十九話:逆転、一発!

ここ数話のストーリーは割と二転三転する感じで仕上げてみました。


【前回までのあらすじ】

突然、モンスター退治大会に出場することになった主人公レイルズと姉リリィ。

そこに、周りから天才と持ち上げられているサクルという子どもが現れて、彼らにつきまとう。

サクルの後ろに迫っていたのは、レッドスライムとブラウンスライムだった。


その二匹が一斉に彼に飛びかかった——


「はぁっ! 炎流壁フレイムウォール!」


サクルの前に火の壁ができあがる。

火属性に弱いブラウンスライムが、飛びかかった勢いで壁にぶつかり、そのまま消滅した。

属性が同じレッドスライムも勢いをとめられたものの、ダメージはあまりなく、火の壁を強引にズズズっと通り抜けようとする。


水連弾(ウォーターバレット)!」


サクルは火の壁を解除して、水属性の攻撃でレッドスライムを狙った。

ドドドっと複数の水の球が強い勢いでレッドスライムを貫き、消滅させた。


後には魔石が二つ残って、サクルはそれを拾っていた。


「へぇ〜……」


少し感心した。

僕と同い年ぐらいの子どもにしては、かなりの魔法を使う。


「いかがでしょうか。僕は火属性の難易度Bまで、水属性の難易度Cまでは使いこなすことができます。もちろん気属性もそれなりに鍛錬を積んでいます。この年で、このレベルは天才だと周りからは言われているのですが……」


「い、いや〜、すごいと思うよ!」


僕は頑張って褒めてみた。

ここは、おだてて帰ってもらう方が得策だと思う。


「本当ですかね? 本当に、そう思ってますか?」


「ほ、本当だよ! もう天才!」


「そ、そうですかね!?」


サクルの顔がにやついていた。

おだてられると意外と弱いタイプだな。


僕はたたみかけた。


「あはは、だからさ、僕たちと一緒にいても学ぶことなんて何もないよ! さっさと一人でモンスターを倒して優勝しちゃったほうがいいんじゃない?」


「う〜ん……そうですねぇ……正直、そういうのにはあまり興味はないんですけど……」


サクルは少し考え込んでから、


「じゃ、じゃあ僕が優勝したら、そちらのお姉さんとその……デ、デートしてもらう……てのはどうでしょう!?」


とのたまいだした。


「「はぁ!?」」


僕とリリィ姉さんは、素っ頓狂な声をあげる。


「な、なんでそうなるのよ!」


「そ、そうだよ、このませガキ!」


女の子とデートなんて一万年早いぞ。

僕だってしたことないんだ。


「……そうは言っても……なんというか、モチベーションがないと、あなたたちの尾行をやめようという気がおきないもので……」


「もう! 勝手な子ね……」


僕もうなずいて、姉さんに激しく同意する。


「まぁ、いいわ!」


僕もうなずいて、姉さんに激しく同意——じゃない!


「えっ、え!? 何言ってるの姉さん!」 


「大丈夫よ! レイくんと二人なら私たちの優勝に決まってるわ!」


まだ勝ってもいないのに、Vサインを決めるリリィ姉さん。


「はぁ!? ちょ、ちょっと待って!」


僕が姉さんをなんとか止めようとしている間に——


「じゃ、じゃあ、そういうことで! 二言はなしですよ!」


ラッキーと言わんばかりにサクルは、とっとこ駆けていった。

後ろ姿を見ているとスキップしているような、ウキウキ感があるな。


「……姉さん……」


「な〜によ。レイくんなら余裕でしょ〜?」


「まぁ、モンスターを狩るだけならね。ただ、モンスターの数に限りがあるからなぁ……」


「どういう意味?」


「いくら大量発生しているからって、僕たちに都合良くモンスターの群れが向かってきてくれるとは限らないってことだよ。他の参加者達のほうにたくさんいたら、どれだけ効率よく倒していっても、最後は運次第になっちゃうってこと」


今だって、この場所はそこまでモンスターが多くない場所のようだ。


「……あーっ、そっかぁあああ!! どうしよぉおおお!!」


突然、あわて出す姉さん。


「もう……しょうがないなぁ……」


僕は溜息(ためいき)をつく。

とはいえ、僕も姉さんが他の男とデートするなんて嫌だ。


「……ま! なんとかするか!」


そう言って、やる気を出した。



 ◇ ◆ ◇



「姉さん、ボーンウルフの群れだ!」


僕らの目の前に、骨だけになったオオカミのようなモンスターの群れが現れた。

木々の中から僕らを襲おうとうかがっている。


一匹一匹はそこまで怖くないが、全部で十匹以上いる。


「あわわわ……」


ボーンウルフは見た目が少し恐ろしい。

骨だけになったまま動いている生物なんて、なかなか見ないからな。


姉さんも怖がっていた。


「落ち着いて! 群れのボスはあのダークボーンウルフ」


僕が指さす方向を姉さんが見る。

ひときわ黒いオーラをまとっている体の大きなのがボスだ。

圧倒的な闇属性の強さを感じる。


周りには人がいないから僕も魔法がつかえる。

だけど、僕が全部を倒すよりも、ここはぜひ、姉さんに自信をつけてもらいたい。


「姉さんの光属性がよく効くはずだ! 僕が周りをやっつけるから、姉さんはあいつに集中して!」


姉さんの手を握って落ち着かせる。


「……う、うん!」


すぐに、震えが止まった。

さすが姉さんだ。


「クケカカカ!!」


「「「「クガガ!」」」


ボスが群れのメンバーに指示を出したようだ。

一斉に僕らに向かって飛びかかってくる。


「きゃぁ!」


「任せて!」


僕はその前に立ち塞がり、


「滅ぼす力――裁きの火……」


ヒュゴォォォォ!


「……守りて、守りて――金城鉄壁(きんじょうてっぺき)蒼鉛(そうえん)にて!」


僕たちの周りに青い火がついた土の壁を球の形で展開した。


「「「クカァァ!!」」」


飛びかかってきたボーンウルフたちが土の壁に跳ね飛ばされ、そいつらに火がついた。

その火は骨すらも一瞬で溶かして消滅させる。


()ぜろ!」


さらに、火がついた壁から土の塊を弾にして、飛びかかってこなかった残りのボーンウルフに放つ。


ドガガガガガ!!


狙ったモンスター全部に命中した。


「よし! 残りはボスだけだよ!」


「うん!」


「クカァ!?」


一瞬にして群れの仲間を失ったボスは、混乱で足が止まっている。


「照らす力――聖なる光……」


まばゆい輝きがダークボーンウルフを包み込む。


「……送れよ、送れよ――このもの天に!」


ジュワァァァ!


まるで蒸発するように骨から煙がでて消えていく。


「ク……カ……!」


小さなうめき声を残して死んでいった。


「やったあああ!」


姉さんが満面の笑みで跳びはねている。

敵が怖かった分、その緊張から解放された嬉しさが大きいんだろうな。


「レイくん! いぇーーい!!」


そして、僕と勢いよくハイタッチした。


「ねぇねぇ、さっきの魔法は、火属性と土属性を混ぜてるの?」


「え? うん、そうだけど」


魔石を拾いながら、姉さんと話す。

難易度的には火属性のAランクに土属性のBランクと言ったところだろうか。


「やっぱりすごいね! さっきのサクルって子より全然すごいよ!」


「あはは……ま、まぁね……」


とはいえ、サクルもあの年を考えたらかなりのものだ。

周りが天才とはやし立てるのも分からないではない。


「まぁ、それは置いておいて、そろそろ夕方だね。終わりの時間が近いよ」


あかね色の夕日が沈み始めていた。

日が完全に沈めば、大会の終了だ。


「そうね、これなら優勝できてるんじゃないかしら」


「どうだろうなぁ……」


今の戦いで一気に魔石が十個も手に入った。


これまでに、いくつか単独のモンスターも倒しているから、これで僕らが持っている魔石は二十個といったところだ。


「一応、念を入れておこうかな……」


「えっ? どういう意味?」


僕の言葉に困惑する姉さんをつれて、別の場所に向かった。



 ◇ ◆ ◇



Side: サクル


「いや〜、調子良いなぁ!」


僕は魔法を放って、目の前のスライムの群れを倒しながら、つい口を開いてしまう。

なぜか分からないけど、僕の前にどんどんモンスターが出てくる。

運が向いているとしか思えない。


さらに、他の冒険者も僕を見かけると避けていくので、一人でモンスターを刈り放題。

恐らく、僕が貴族の上に、天才児として名前が知られているので争いたくないのだろう。


まぁ、それは良いとして、あの美人のお姉さんとデートできるかと思うと心が躍る。


「これで魔石三十個かぁ」


おそらく、リリィさんとレイルズくんにも勝っているはずだ。

モンスターとどれだけ遭遇できるかという、運勝負の面はいなめませんが、勝ちは勝ち。

思わずにやけてしまう。


「お?」


そんなとき、ちょうど彼らを発見した。



 ◇ ◆ ◇



Side: レイルズ


僕とリリィ姉さんが目的地の小さな岩山についたとき、近くにサクルの姿があるのを見つけた。

……あの様子だと、ずいぶんと調子がよさそうだな。


しょうがない。

探りを入れてみるか。


「よお!」


僕の方から声を掛けた。


「どうも!」


サクルの声は明らかに浮かれていた。


「結構、モンスターを倒したみたいだね?」


「はっはっは! まぁそうですね!」


「どれぐらい魔石もってるの?」


これから、僕たちがすることが必要なのかどうかを知りたかった。


「え〜、それは秘密ですよぉ!」


子どもといっても、さすが天才と言われている奴だ。

浮かれていても、そこは口を割らないか……。


「お願い! 教えて?」


「三十個です!」


天才といっても、美人なお姉さんに言われれば弱いみたいだな……。

姉さんが、キラリンっとした笑顔で聞いたら、あっさり口を割った。


「そうか……じゃあ僕たちは負けてるな……」


「え? そうなんですかぁ??」


サクルがにやけていている。


「ねぇ、今何個ですか? 今何個?」


完全に調子に乗ってあおってくる。

子どもとしては、かわいらしいと言えばかわいらしいけど……。

やっぱムカつくな。


「僕たちは二十個ってところだね」


「勝った!!」


天を見上げてガッツポーズをしているサクル。


「はぁ……仕方ない……か!」


姉さんのために、負けたまま終われない。

こいつに魔法が使えることがバレてしまうけど……。

僕は覚悟を決めた。


「は? どういう意味ですか?」


魔力を練って——


「育む力——母なる大地……開けよ、開けよ——抜山蓋世(ばつざんがいせい)の力にて」


近くの岩山を魔法で破壊した。


グゴゴゴゴォォォx!!


切り開かれた山の中で、


ジャラジャラジャラ————


魔石が大量に転げていた。



【あとがき】

「はぜろ、リアル! はじけろ、マウンテン!」


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