表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/24

第八話:男児、甘やかされる!

 エマ先生には、父と母には魔法が使えることを黙っておいて欲しいと伝えた。


「え〜、なんで?」


 と当然の質問が出たので、


「い、いつか大きくなったときにびっくりさせようと思って!」


 と答えた。


「あらぁ、意外と子どもらしいところがあるのね! 可愛い!」


 といって抱きしめられた。

 先生の胸はとても大きいので、僕の顔はすっぽりと包まれてしまう。


「あ〜、エマ先生、ずるい!」


 といってリリィ姉さんも後ろから抱きついてくる。

 とても恥ずかしいし、息も苦しい……。


 けど、同時になんだかとても気持ちが良かった。


 ……こんなのほのぼのとした事、前世では経験なかったからね。

 きっとそれだけだよ!



 ◇ ◆ ◇



 それ以降、週に二、三回、リリィ姉さんが魔法を練習する日々が続いた。

 エマ先生はやっぱり色んな経験があるので、基本的な教え方は上手だった。

 僕はたまに気がついたことがあれば口を挟むだけで良かった。


 おかげで姉さんの魔法もぐんぐんと上達していった。


「さぁ、リリィちゃん! これに回復の魔法を使ってみて!」


 風魔法で枝に大きな傷がついた木の前で、エマ先生が指示を出した。


「はい!」


 リリィ姉さんがその木の前に立ち、両手を前にして開く。


「照らす力——聖なる光……癒やして、癒やして——このもの癒やして!」


 ぱぁっと明るい輝きが枝を包み込み、切られた傷を治していった。


「リリィちゃん! 上手! 完璧よ!」


「えへへ!」


 一緒にいて分かってきたことなんだけど、エマ先生は生徒を褒めるのが得意だ。

 たぶん、もとからそういう性格なんだと思う。

 ちょっと大げさなところが、この仕事に向いている気がする。


「これで、光属性の軽い薄光治癒(ライトヒール)はマスターね! 魔法難易度Cってところ。でも、光属性は持っている人が少ないから、これだけでもかなり凄いのよ! そして、光属性の高い女性は聖女とも呼ばれるようになるの」


「わぁい! レイくんもありがとうね!」


「ううん! たいしたことはしてないよ!」


 少し習得に苦労していた姉さんにアドバイスをして、魔法詩(スペル)の一部を、姉さん向けにアレンジしてみたのだ。

 後半の句は、自分が一番イメージしやすいようにした方が良い。

 平易な言葉に代えてみたら効果があった。


「さすが、レイルズ先生ね!」


「そ、それはやめて下さいって……」


 何度も止めているのだが、たまにこうやって呼ばれてしまう。


「ふふふ……可愛いわね……」


 エマ先生の顔が妖艶なものに変わった。

 これは嫌な予感だ。


「……ご褒美……いる?」


 つい、ゴクリとつばを飲み込んでしまう。


「い、いりません!」


 といって、先生は胸に手を入れてブラジャーを取り外した。


「え〜、まだ暖かいわよ?」


「そういうことじゃないです!」


「わ、私も!」


 といって胸に手をやる姉さん。


「姉さんはつけてないじゃん……」


「むむむ……よく知ってるわね」


 そりゃ、毎日一緒だしね。

 というかいつも抱きつかれてるし、お風呂だって……。


「ふふふ……じゃぁこっちにしようかしら……」


 といって今度は、自分のスカートの内側に手を入れる先生。


「いや、もうそういうのは——」


「じゃ、じゃぁ〜ん!」


「「んんっ!?」」


 スカートの中から出てきたのは二つのペンダントだった。

 な、なんだ……パンツとかじゃないのか。


「あ、がっかりしたわね!?」


「してません!」


 というか、どこに入れてたんだ……。


「そう? 残念ね……。まぁそれは良いとして、これは魔法を貯めておけるペンダントなの!」


「効果をためる?」


「そう。このペンダントの魔石が魔力を蓄える役割を果たすから、事前にここに使いたい魔法を込めておけば、自分の体内の魔力が尽きてたり、自分では使えない魔法でも使えるのよ!」


「へぇ〜」


 千年の間にそんなものが開発されていたんだな。

 便利そうじゃないか。


「ふふふ……レイルズくんもこれは知らなかったようね!」


「先生の年の功ですね!」


「ふふふ……人に言われると傷つくわね……およよ」


 言いながらエマ先生が落ち込んだ顔をみせた。


「す、すいません、つい……」


「まぁいいわ。それで、このペンダントを二人にあげる」


「いいんですか? そんな凄そうなもの」


「確かに貴重な物だけど、いいのよ、二人とも頑張ってくれてるし、プレゼントよ!」


「「ありがとうございます!」」


 僕とリリィ姉さんは深く頭を下げてペンダントを受け取った。


「そんな、いいのよ……月謝も貰ってるしね!」


「み、身も蓋もないですね……」


 と、ちょうどその時——


「ただいま〜。あら、エマ先生、こんにちわ〜。こちらで、お茶でもいかがですか?」


 母さんが、ちょうど買い物から帰ってきたようだ。


「あ、はい、こんにちわ! ありがとうございます! 頂きま〜す。 二人もいきましょ」


「あ、はい、すぐに行きます!」


 先生は先に家の中へ入っていった。

 僕は、どんな魔法を込めようかなと考えていた。


「どうしたの、レイくん?」


「う〜ん……」


 姉さんのために、強力な魔法を込めて一つ渡しておいた方がいい気がする。


「よし!」


 せっかくだし、魔王を溶かして倒したあの太陽術にしておこう!

 あれなら、どんな相手でも困らないだろう。


「人の操り火の力――遥かに超えしは()の力……」


 魔法詩を唱えながら魔力を練って、握った魔石に込めようとするが——


 ピキピキ……


「レ、レイくん!」


「うわわ!」


 な、なんてことだ、魔石にヒビが入ってしまった。


「ストップ! ストップ!」


 すぐに魔力を込めるのを中断した。


「どうしたの〜!?」


 家の中からエマ先生が顔を出す。


「「あは……ははは。なんでもないです!」」


 ヒビが入ってしまった魔石を、あわてて体の後ろに隠した。


 リリィ姉さんがこっそりと僕に話しかけてくる。


「レ、レイくん……す、すごすぎ……」


「あ、あとでなおしておくね……」


 多分なんとななるだろう……。



 ◇ ◆ ◇



 ——その日の夜——


 二人でお風呂に入ったあと、リリィ姉さんが突然、


「レイくん、耳かきしてあげる〜!」


 と言い出した。


「い、いきなり、なんで?」


 今までこんなことはなかった。


 いつも母さんにやってもらっていたのだ。

 いや、それもどうかなと思っているのだけど、なんとなく甘えてしまっている。


「難易度Cの光魔法をマスターできた記念とお礼!」


「あ、ああ……そ、それはいいけど……」


 ちょっと心配だ。

 リリィ姉さんはまだ六歳……。

 いや、僕が言えることじゃないんだけど。


「だ、大丈夫かな? その、鼓膜を破ったりとか……」


「だ〜いじょうぶよ! 破れても、薄光治癒(ライトヒール)で治せるわ!」


「ええ〜〜!」


 確かに、それはそうかもしれないけど……。


「さぁ、やるわよ!」


「う、うん……」


 何故だか姉さんが頑固なので、観念した。


「うにゅ〜」


 姉さんは良く分からない声を出しながら、僕の頭をふとももに押しつけた。

 お風呂上がりでちょっと熱をもった体温が僕に伝わってくる。


「むむむ〜!」


「だ、大丈夫?」


 気合いが入った声で逆に心配になる。


「心配しないで! 行くわよ!」


 ゴソゴソ……


 と僕の耳の中に綿棒が入ってきた。


 おお!

 ちょうど良い感じに、耳の中を棒がタッチしてカキカキしてくれる。

 まさに、かゆいところに手が届くというやつだ。


「じょ、じょうずだね」


「へへ〜ん、母さんと練習したのよ」


 わざわざそんなことまで……。


「念のため、ちゃんと回復魔法が使えるようになるまで待ってたんだから」


「そ、そうなんだ」


 姉さんは優しいなぁ……。


「レイくん、気持ちいい?」


「う、うん」


「えへへ……」


 耳かきの気持ちよさと、姉さんのふとももの柔らかさに癒やされて眠くなってきた。


 このまま寝ちゃおうかと、うとうとしていると、


「はい、反対よ」


 と言って逆側の耳の番になった。


「は〜い」


 と言って反対になると、僕はすぐに眠ってしまったのだった……。



 ◇ ◆ ◇



 四歳になった。

 母さん、父さん、エマ先生、リリィ姉さんの甘やかしの毎日が続いて、幸せな毎日なのだけど、少し自分のことが少し心配になってきた。


(……このままでは、完全にダメ人間になってしまうのでは!?)


 そう思った僕は、両親にあるお願いをすることにした。



【あとがき】ポイント評価、ブックマーク登録、ありがとうございますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ