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魔装機譚  作者: たまき親方
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第九話 一宿一飯の恩

ゆったり、たっぷり、のーんびり。

さて、ヒナタ様に村人達の喝采を持っていかれましたが、機兵の回収も無事済みましたし、村に戻って村長のロベルトさんに今後の方針の相談をしないといけませんね…

機兵のあった場所に興味津々で近づく村人達の向こう、波打ち際では子供達に囲まれるヒナタ様が無い胸を張って踏ん反り返っております。


「なぁヒナタ、スゲェ魔法だな!オイラにも教えてくれよ‼︎」

「ねぇねぇ、ヒナタちゃんのお国のお話ししてよ!」

「ヒナタお姉ちゃんスゴいねぇ…」

「…カッコイイ…」

「うむうむ、凄かろうすごかろう!まぁ『回収』なんぞは大した事無いがな‼︎ はっはっはっ。」


…ヒナタ様…妙に子供達に懐かれましたね…

っていうか呼び捨てにされているので、ガキ大将あたりからは仲間と認識された様ですね。

村長のロベルトさんと薬師でエルフのミゲルさんが喧騒を離れ、声をかけてきました。


「しかし、本当にお前たちは凄いな!そんななりで成人しているのも認めないとなぁ…。まだ15歳だったよな?その歳でこんなに魔法に精通しているとは、国は違うが同じ人族とは思えなくなってきたぞ。」

「そうだね。内陸にある学園都市(アカデミア)の魔法使いでもこの歳で詠唱無しに空間魔法を使える人物なんていないかもしれないね。」

「あ、ロベルトさんにミゲルさん。僕たちにとっては必要な術ですので、褒められると恥ずかしいですね。まぁ、魔装機兵乗り全員が使えるわけでもないですし、『巫女隊』に所属している人間はある意味特殊ですからね〜。特にヒナタ様の様な方はヤマトノ国でも滅多に居ませんよ?僕は至って平凡です。」

「…いや、君も十分特別な方だと思うよ?攻撃的な魔法で凄い使い手は知ってるけど、空間魔法自体使える人はこの国には滅多にいないからね。」


あれ?おかしいな…巫女隊三番隊で唯一の常識人だったはずがいつしか人外の仲間入りに…いやいや、そんな馬鹿な…この国では珍しいだけです。ええ。

僕は平凡に生きたいんです。

ヒナタ様を囲う子供達の中に陶然としているトニーニョ君を見つけたアントニオ老が来ました。


「まったく、トニーニョのやつ…『異国の娘』にヤられおったな?ボーッとしおって。」


あ〜、ヒナタ様は見た目だけは小柄で華奢でお綺麗ですからね。

お気持ちは解ります。

本性はアレですが…。


「アントニオ老は元傭兵なんですよね?ヒナタ様はともかく僕みたいな人は普通にいますよね?ね?」

「いや、鍛治師で機兵乗りで魔法も使えると言うのはのぅ…かなり珍しいと思うぞぃ?今まで会うたことも無いのぅ。」

「なんですと⁉︎」

「まぁなんだ。回収も終わったんだろ?いっぺん村に戻って話をしよう。」

「あ、そうですね。今後の事も昨夜、ヒナタ様と方針を固めましたのでご相談しようかと思ってました。」

「薬草茶なら出せるよ!ミゲルさんもアントニオさんもウチで2人の話を聞いてっておくれよ!」


そうです、「この国では常識外」なんです。

僕は決して「世界の常識外」では無いんです。

あ、マリアさんが気を利かせてお二人を誘ってくださいました。

元傭兵に旅の薬師、村の中でも知識人のお二人の意見を聞かせていただけるのは有難いです。


「おーい!皆んな、いいかげん村に戻るぞ‼︎子供達も村に帰ってから遊べ!」


皆、思いおもいに帰路につくなかヒナタ様は相変わらず子供達に囲まれております。


「ヒナタ!村に帰ったら俺たちと遊ぼうぜ、とっておきの場所に案内してやるよ‼︎」

「え〜ダメだよ!ヒナタちゃんは私達とお話しするんだよね?」

「すまんの。帰ったら私たちは村長と大事な話があるでの。遊ぶのは終わって時間があったらじゃ。」


お、ヒナタ様。村長との話し合いの事を覚えておりましたね、流石です。

え、何ですか?別に失礼な事は考えてませんよね?

<「無い胸を張って踏ん反り返っていた」とは面白いことを…>

<あれ?おかしいな、『銅鏡』は使って無いのに…>

<認めおったなうつけめ!後で覚えておくが良いの‼︎>

<汚ねぇ!謀りやがった⁉︎>


「おい!どうしたタケオ⁉︎急に小刻みに震えて…」

「イ エ ナ ン デ モ ナ イ …デス…」


いけませんね、光の向こうで知らないはずの両親が手を振っています。




村に戻った僕たちは、食堂で村長達と今後についての話をする事にしました。

食堂にはロベルト村長・マリアさん・アントニオ老・ミゲルさんが対面に座り、マリアさんが淹れた薬草茶をいただいております。

ヤマトノ国で親しまれている『緑茶』とは違い、鼻に抜ける清涼感と爽やかな香りが気持ち良いお茶ですね。


「この茶に使われている薬草は料理にも使われているのさ!気がついたかい?」

「うむ、料理の臭み消しに使っておられた物だの。臭み消しの時と違って飲み物になると風味が変わるのう。面白い。」

「お貴族様が飲む様な紅茶なんて手がでないけど、自生している薬草や各家庭で育ててる薬草類なんかで数種類楽しめるんだよ!」

「良いですね〜。ヤマトノ国ではもっぱら緑茶か麦茶、後は蕎麦茶でしょうか。こんな風に香りを楽しむ、清涼感のある飲み物は無いかもですね。」


薬草茶で一息入れた後、ヒナタ様が今後の相談を切り出しました。


「さて、ロベルト殿。タケオから聞いてはおるかも知れんが、昨日の夜に私たちの今後の方針について決めたので、相談させていただきたい。」

「わかった。まずはお前達が決めた事を教えてくれ。」

「うむ。ロベルト殿達も知っての通り、私達は『禍ツ神』との戦の最中であるので一刻も早く帰国の途につかねばならんと考えておる。」

「そうなんだよねぇ…アンタ達、戦争中だったんだよねぇ…。」


マリアさんが哀しそうに眉尻を下げております。


「しかしながら帰国するにもこの国とは国交が無いものと思われますので、先ずは『ヤマトノ国』と『ルトゲイラ王国』との位置関係など色々な情報を調べないと帰るに帰れない状況です。」

「なので、ロベルト殿・ミゲル殿・アントニオ御老にはそう言った情報を得るにはどうすれば良いかご助言いただけると有難いのじゃ。」


ロベルト殿は村長で村外とのやり取りをしておられますし、アントニオ老は元傭兵として、ミゲル殿は薬師として旅をしていたと聞いておりますので、情報を得るための場所など知っているものと期待しております。


「そうじゃのぅ…町あるいは都市まで出れば冒険者組合(ギルド)など情報が集まる場所があるのぅ。」

「そうですね、王都にある商人組合(ギルド)であれば行商人や商隊の旅団なども利用しているでしょうから、ヤマトノ国との国交のある国の商人が来ている可能性はありますね。」

「なるほど。組合(ギルド)で情報を集めるのが今のところ良さそうじゃの。では商人組合(ギルド)がある王都を目指すのが良いか。して、王都まではどの様に行けばよいのかご存知だろうか?」

「まてまて。お前達は2人で王都まで向かうつもりか?いくらなんでも危険だぞ!機兵があるとは言ってもまだ整備してないだろう。」

「それに、旅費もばかになりませんね。お金を稼ぐ手段が無いと厳しいでしょう。」


そうですね、いかにヒナタ様がお強くても旅には魔獣に盗賊等の危険もありますから、しっかりした準備は必要です。

お金の稼ぎ方に関しては僕に一案がありますが、厳しいかもしれません。


「うむ。急ぎたい気はあるが、早急に出立するつもりは無いの。機兵の整備もあるし村長達への恩義も返しておらん。しばらくは御厄介になるがよろしいだろうか?」

「御迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。」


ヒナタ様と2人で頭を下げます。


「よしとくれよ!この家にいる間はアンタ達もウチの子だよ‼︎」

「そうだとも。しばらくすれば行商人も来る。町に行くならこの商隊に付いて行くのが安全だ。いつまでも客間と言う訳にはいかないが、この村としてはこのまま住んでもらっても構わないと思っているぞ。」

「そうだね。機兵が動くようになれば、護衛として商人に雇ってもらう事も可能だと思うよ。何より見知らぬ土地を君達の様な若者が旅するのは危険が多い。」

「ロベルト殿…感謝する。おっしゃられた行商人の方と同行の交渉をさせていただこうかの。」


本当にこの村の方々には足を向けて寝れませんね。有難いことです。

とりあえず、村長のおっしゃられていた行商人が来るまでお世話になる事になりました。


「ところで、マリアさん。台所や加工小屋で金物をお借りしましたが、かなり使い込んで痛んでましたね。」

「ああ、この村には鍛冶屋がなくてね。どうしようもなくなったら行商人に頼むか、近くの町の鍛冶屋まで行ってまとめて頼んでるんだよ。」

「では、不肖このタケオ!村の奥様方の為に従軍鍛治師の力を発揮いたしましょう‼︎」

「どういう事だい?」

「恩返しも兼ねまして、村の水場をお借りして僕が皆様の金物を修理および整備いたします。」

「うむ。こう見えてタケオは腕の良い鍛治師であるからの。きっと皆様のお役に立てるであろう。」

「そうかい?アタシ達にしたら本当に有難いけど…鍛冶屋の設備なんて無いよ?」

「そこは『神層領域』の出番ですよ!従軍鍛治師ですので、自前の鍛冶場は持って来てます‼︎」


この村で僕にできる事は限られてますが、得意な鍛治仕事で村人達へ貢献できそうです。

旅の資金稼ぎの一案も僕の鍛治師のとしての稼ぎです。


「う〜む。私にも出来ることがあれば良いのじゃが…小屋では失敗したからの…。」

「ははは!まだしばらくは滞在するんだ。気長に探せばいいさ。荷運びの手伝いも草むしりだって立派な仕事さ、気にすることないよ!」

「…かたじけない。」


お、珍しくヒナタ様が消沈してますね!希少ですよアレは⁉︎

おっと、僕としてはもう一つ解決したい問題があります。


「ところでロベルトさん。この村の近くに小川でも池でも良いのですが真水の多くある場所はございますか?」

「ああ、川なら船着場がある入江の先の砂浜に川が流れ込んでいる場所があるぞ。たまに女子供に地引網をしてもらっている。」

「そこでは小魚や貝も採れるでのぅ。浅瀬も多く子供達のかっこうの遊び場じゃて。」

「それは有難い!機兵の洗浄でそこを使わせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」

「ああ構わないぞ。だが、子供達が興味本位で近づいて来るから安全には配慮してくれ

「了解です!」


これで、機兵の洗浄・整備の目処が立ちましたね!

作業は大変ですが、水が多く使えるのは助かります。


相談を終えた後、僕はマリアさんと共に村の奥様方に出張鍛冶屋の連絡と使用できる水場の下見。

ヒナタ様は子供達と遊びに行きました。


…ヒナタ様…10代に満たない子供達に囲まれてもこの国ではいっそう違和感がありませんね…

車の手洗いも大変なのに、機兵の手洗いなんて…

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