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魔装機譚  作者: たまき親方
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第七話 機兵との再会

のんびり進めま〜す。

外で鶏の鳴き声が聞こえます…よその国でも鳴き声は一緒なんですね…。

おはようございます、タケオです。


今日も快晴のようですね。

朝餉でしょうか?良い匂いがします。

隣ではヒナタ様が『小刀』で形稽古をしております。


ゆっくりした動作ですが、頬を伝う汗を見るに入念に稽古していたことが伺えます。

…全然気がつきませんでした。


「む、ようやく起きたか。弛んでるぞ!タケオよ。」

「おはようございます。相変わらず早いですね…。」

「軍人たるもの訓練は欠かせぬからの。それに、村長達はすでに漁へ向かわれた様だ。マリア殿は朝餉の支度をされておる。」

「それはいけませんね、急いで支度をしてお手伝いしませんと。」


僕は訓練してないので、『神層領域』から作務衣を取り出し、ヒナタ様には直垂をお渡ししました。

やはり着慣れているものの方が楽ですね。

なぜ、ヒナタ様のお着物を持っているかって?押し付けられたに決まってるじゃありませんか。

ちなみに、一部ですが巫女隊の各員のお着物もお預かりしております。


「うむ、お借りしていた服も動きやすかったが直垂の方が落ち着くの。」


視線を向けると、手拭いを濡らして汗を拭ったヒナタ様が直垂に着替えておりました。

年頃の男性が居るのに堂々とお着替えなさるのはどうかと思いますが…まぁ、訓練や行軍の時など寝食を共にしてきましたから今更感がありますけど、少しは慎みを持っても良いかと思いますよ?

身支度を整えて食堂へ向かいます。


「おはようございます。マリア殿、良い匂いだの。」

「あら?おはよう2人とも、まだ寝てても良いのに。漁村の朝は早いでしょう?」

「おはようございます。マリアさん、何かお手伝い出来る事はございませんか?」

「タケオは偉いねぇ、そこに重ねてある食器を並べてくれるかい?ダンナとエジーニョは漁に出てるから私らの分だけでいいよ。」


マリアさんの朝餉の支度を手伝っていると子供達が起きてきました。


「おはよう。エレナ殿、エンリケ殿。」

「おはようございます。」

「…おはよぉ…」

「おはよう、2人とも早いね!エンリケは顔洗ったの?」

「う〜ん〜…」

「早く洗っておいで。もうすぐ朝ごはんできるよ!」

「はぁい…」


エンリケ君は朝が苦手みたいですね。

支度が整い朝食をいただきます。

マリアさん達はお祈りを、僕たちは「いただきます。」と唱えて感謝を示します。


「朝食はこの間食べてもらった、硬パンと魚介のスープだよ。」

「このスープは魚介の出汁が効いてて好きなんですよね〜。」

「嬉しい事言ってくれるね!量はあるからたんとあるから遠慮なくお食べよ。」


素朴ですが、美味しい朝食をいただき、洗い物を手伝いながらヒナタ様がマリアさんにお聞きします。


「マリア殿、これからの事について昨晩タケオと確認を取ったゆえ村長殿とも相談したいのだが、戻られるのは夕方かの?」

「それなら水揚げの手伝いとお昼の支度で船着場に行くから一緒にくるといいよ!」

「それは有難い。私でもやれる事があれば手伝おう。」

「そうかい。助かるよ。」

「マリアさん。お借りしていた服ですが洗濯をして返したいのですが、汚れ物がありましたら一緒に洗いますが…」

「え!ちょっと、やめてよ‼︎洗うんなら男物だけにしてよね⁉︎」


お顔を真っ赤に染めたエレナさんに怒られてしまいました。

巫女隊で女性たちに囲まれて過ごしている中、隊員の肌着も何も関係なく洗濯するのも従者の勤めと半強制的に押し付けられているので感覚が鈍っておりました。

失敗しっぱい。反省しますが、年頃の女性はこうですよね本来は…ねぇ、ヒナタ様?


「そうだぞ、タケオ。お前は配慮が足らん!」


……えぇ〜〜……


「すみませんでした。では、男性陣の汚れ物を担当いたしましょう。」

「そう言えば、アンタたちの今着ているのって祖国のものかい?」

「うむ、私が着ているのは遠征中の平時に着ている平服で、タケオが着ているのは職人が良く着ているものだ。」

「履物は『藁草履』と言いまして、ヤマトノ国の主食であります『米』の草で編んだものです。草といっても軽くて丈夫なんですよ。」

「へぇ〜、夏場とか涼しそうでいいわねそのサンダル。」


朝食の片付けを終え、子供達とヒナタ様は掃除のお手伝い。

僕はマリアさんのお昼の下拵えを手伝い、支度が整った所で船着場に向かいます。

集落を出て潮風で少し傾いだ林の中の道を、皆で荷物を持って歩きます。


「タケオのお陰でお昼の下拵えがはかどったよ!アンタは随分と料理に慣れているね。」

「ええ、鍛治師ですので調理器具にも精通しておりますし、巫女隊では遠征中の料理番としても従事しておりましたので。」


そりゃぁもう…巫女隊の面々は一部を除いて壊滅的な調理の腕前を誇っておりましたので…

『ヨイチ』さんは悪い意味での探求者。

『ホオズキ』さんは『焼く』以外は知らない野生派。

『キミ』ちゃんは料理屋の娘で、料理の腕も天下一品。

『チヨ』ちゃんは食べる専門。

そこに居られるヒナタ様なんかは、味覚は鋭いのになぜか料理をするとこの世の物とは思えなi…


…ホントゴメンナサイ…その笑顔で殺気を僕だけに向けて放つの辞めてもらえませんか?

殺気に指向性を持たせるとか才能の無駄遣…イエヒナタサマハスゴイナァ…ハハ…


「タケオお兄ちゃんは何でも出来てすごいなぁ…」

「本当ね、私よりも料理できるんだもの、何だろう…もの凄く悔しいわね。」

「ははは、アンタもお手伝いに本腰を入れないと差が開くよエレナ!」


エンリケ君の賞賛の眼差しは照れますね…こう成らざるを得なかっただけなんですが…


「巫女隊の1人に料理屋の娘さんがおりまして、その方に習いましたので上手にできるんですよ。」

「うむ、『キミ』の料理は格別じゃったの。」

「そうかい、また食べれる様になるさ!あ、2人ともアントニオの話しだと、この先の浜辺にアンタ達の機兵があるはずさ。」


傾いだ林を抜け、視界が拡がりました。

晴天のもと潮風の気持ちいい浜辺には集落の女衆や子供たちが地引網で漁をしている姿が見て取れます。

林伝いに延びる道をしばらく進むと砂浜に小山の様なものと数人の村人の姿が見えました。


「この先が船着場だね。ほら、あそこの小山になってるの、アレがアンタ達の機兵じゃないかね?」

「うむ、その様じゃのう。幌が被されてるのか、ここからでははっきりせんが。」

「マリアさん!ちょっと見てきてもいいですか?」

「構わないよ心配だろうし、荷物は構わないからいっといで!エレナは2人についていって後で船着場まで案内してやんな。エンリケは荷物持ちだね。」

「はーい。」「え〜…僕も機兵見たいのに…」


荷物をエンリケ君に渡して機兵の確認に向かいます。

近づくにつれて概要がハッキリして来ましたが、村人の厚意により布が被せられている様です。


「やあ、タケオ君にヒナタちゃん。身体の調子はどうだい?ヒナタちゃんは後で怪我の経過を見せてくれるかな。」


村人の1人は、エルフで薬師のミゲルさんでした。


「うむ、食欲も申し分ないし軽い訓練も問題なかったゆえ、外傷だけであると判断できよう。」

「僕も変わったところはありません。」

「そうか、それは何より。それで2人はこの機兵の様子を見に来たのかな?」

「はい。機兵の状況を観てみたいと思いまして、マリアさんに連れてきていただきました

。」

「雨よけに布地を掛けてもらった様だの。あなた達にも感謝する。」


ヒナタ様が頭を下げると、村人達は気にするなと言ってくれました。

この村の人たちは良い人ばかりですね。


さて!機兵の状態を見てみましょうか。


村人の手を借りて、かけられた布を取り除きます。

布の下から現れたのは僕の機兵『一筒(マヒトツ)』でした。

強制解放された胸部は魔装がはだけ、ポッカリと空き内部が嵐のせいで砂まみれになってました。

解放時に吹き飛んだであろう装甲を探して視線を巡らせると波打ち際に刺さって、海水に晒されてました。


「う〜わっうわうわうわ〜〜…これは思っていたよりも酷い状況かもしれませんね…潮でベタベタですよぉ…砂も入り込んじゃっても〜…。」


操縦席周りの確認をして、無事に『三種の神器』を回収。


「良かった…盗まれて無かった…。」


『小刀』『勾玉』『銅鏡』3つともありました。

収納箱に入れてたから気づかれなかったんですかね。

とりあえず、『銅鏡』の動作確認もしておきますか…。


<ヒナタ様。私は今、貴方の心に語りかけています…。タケオに暴力を振るっている場合ではありません…。優しく接するのです…優しく接するのです…>

<何を馬鹿な事をやっておるか、戯け者め!『銅鏡』の動作は正常のようじゃが、隊員との連絡が取れないのは距離の問題の様だの。それはともかく、早う私の機兵の状態を確認せんか‼︎>


ちっ…御神託を装って対応を甘くさせる作戦は失敗か…。

ヒナタ様の機兵『鬼首丸』の布も取り除き、確認していきます。


「ヒッ⁉︎…骸骨?これ魔物じゃなくて機兵なの?」

「うむ。ご先祖様が退治した鬼神の頭部を使っているそうだから、あながち間違いでも無いかの。」


エレナさんが怯えてますね、無理もありません。

対『禍ツ物』仕様状態の『鬼首丸』はその名の通り、鬼の髑髏をその頭部に使用しておりますので、魔物に見間違えられても仕方がありません。


ヒナタ様のご先祖『セイメイ』様。

神道術式の開祖にして魔装機兵製作の第一人者。

現ヤマトノ国で使用されている機兵の基礎を創り上げられた御仁でございます。

『鬼首丸』は『セイメイ』作10機の内、現存している物の1つで鬼神を討伐した際に落とした首と骨格を使って製作された曰く付きの初期型機兵です。


「う〜ん…。こっちも酷いなぁ…破損・故障の部分は精査が必要ですね。彼の意識は強制解放の影響で休眠状態になっている様ですね。丁度いいので、『鬼首丸』には洗浄が終わるまで眠っててもらいましょう。」

「そうか…復旧にはどれくらいかかるかの?」

「そうですね〜、洗浄に使える真水の河川か水辺が近くにあれば2〜3日で稼働まで行けると思いますが、『禍ツ神』との戦闘の影響を精査するとなると時間がかかります。」

「わかった。私には何とも出来ないから機兵に関してはお前に任せるとしよう。できる限り万全にしてくれ。」

「畏まりました。精査は後日という事で村長に回収開始の連絡とマリアさんのお手伝いに船着場へ向かいましょうか。」

「うむ。」

「え!もういいの?」

「はい。今はどうにもなりませんし、回収はロベルトさんに報告をしてからの方がいいでしょう。」

「わかった。それでは私たちはまた、機兵に布を被せて見張っておこう。」

「ミゲル殿、かたじけない。感謝する。」


機兵の回収・洗浄の段取りを考えつつ、エレナさんに案内してもらい船着場へ向かいます。

近くに川か真水のある場所があれば良いけど、井戸水では村に迷惑かけてしまいますね…今から手仕事で洗浄する手間を考えてしまい憂鬱になります


はぁ…神道術に『洗浄』の術式なんてあったかなぁ…?こちらの魔法でそう言ったの無いかな?












次回もよろしくお願いします。

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