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魔装機譚  作者: たまき親方
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第三話 目覚めてからの

今回は主人公視点で語られます。

 第三話 目覚めてからの

 

 禍ツ神に異界へ飲み込まれ、何処とも知れない海へと投げ出され、かろうじてヒナタ様の機兵を担ぎ岸辺へと辿り着いた所で意識が途絶え…

 

 気が付けば知らない天井…

 

 意識を無くし機動を停止した所で強制脱出機構が働いたらしく、たまたま様子を見に来ていたアントニオ老人に救助していただき。

 優しい漁村の皆さんに保護されて、村長宅にお世話になっているのが現在の状況のようです。

 

 「ふむ、人心地ついた。礼を言う。」

 「ごちそうさまでした。マリアさん大変美味しかったです。」

 「美味しそうに食べてもらえてコッチも嬉しいよ。」

 

 そう言うとマリアさんは食器を洗いに厨房へと向かいました。

 落ち着いて話せる様にと白湯をいただき、村長達から話を促されます。

 

 「それでは、お前達の話を聞かせてくれるか?どうして機兵で海からやって来たんだ?」

 

 保護されている身の上ですし、村長さん達に事情を説明しないといけません。

 従者の私より隊員のヒナタ様の方が適任であろうと伺うと、腕を組みどこから説明しようかと思案している様子でしたがやがて目を開け…

 

 「私たちは先ほども申した通り、軍籍に身を置いておる。」

 

 村長さんは頷き話の先を促します。

 

 「わが国はヤマトノ国と言い、日々『禍ツ物』と呼ばれる魔物の脅威に晒されており、いくつもの村や街が滅ぼされていった。それに対抗するべく軍部と神部が協力し『魔装機兵』と呼ばれる機械仕掛けの巨兵を作り国家一丸となって長年対策を講じて来たのじゃ。」

 「この国にも機兵はあるが…街まで滅ぼされたとなると『魔物の大暴走(スタンピート)』が頻発する様な過酷な国なのか?」

 

 『魔物の大暴走(スタンピート)』とは自然発生した魔物の巣窟で許容を超えて発生した魔物が大挙して移動する現象でその先には餌となる村落に向かう場合が多い。

 

 「いや、大暴走では無い。各地の大名が私兵や街に配属されている国軍、傭兵組合の連中を使い定期的に魔物を狩ってその様な災害が起こらぬ様に調整するのが義務であるゆえ。」

 「『大名』と言うのはこの国の領主や貴族と同じか近いものでしょうね。その『禍ツ物』とは普通の魔獣や魔物とは違うのですか?」

 「うむ、『禍ツ物』とは不浄の気配『穢れ』を纏い、紅い呪の描かれた白面を被り、魔物を統率して組織的な侵攻をしてくる魔物達のことじゃ。」

 「なんと…そんな魔物がおるのか…おとぎ話や伝説にある『魔王の軍勢』の様じゃのう。」

 

 どうやら村長達の国でも大昔に現在のヤマトノ国で起こってるような組織的な魔物の侵攻があったようです。

 現在ではこの国の機兵はもっぱら自然発生した大型の魔物の対抗策および国家同士の戦の兵力として使用されているのだそうです。

 禍ツ物が発生しないとは平和で良い所です。

 おかげさまでこの様に保護される事ができたという所でしょうか。

 

 「長年に渡り禍ツ物の情報を収集してきた諜報部は、ヤマトノ国の東の大海の先にある島に元凶有りと断定し、調査隊を送り、ようやく禍ツ物の親玉と言える『禍ツ神』の存在を確認したのじゃ。」

 「『禍ツ神』…神様なのか?こっちで言う魔王みたいなものか?想像もつかねぇな。その禍ツ物ってのは普通に倒せるものなのか?」

 「ふむ、倒せなくは無い。普通の魔物が強化され狡猾になったと考えて間違いはない。だが、高位の禍ツ物ともなると穢れの影響が大きく我々の様な神職の者の力が必要となる。」

 「神職?浄化の能力と言うことは、僧侶や回復術師(ヒーラー)とかかのぅ。おぬしは神官か?」

 「いや、私は『アマテラス』様をお祀りしている社の巫女じゃ。」

 「アマテラス様…聞かぬ神様の名前じゃのぅ…」

 「国や種族によっては信仰が変わりますからね。我々エルフは精霊王を、この国と周辺国家では女神『アレイア』様を信仰している教会が1番勢力が大きいね。」

 「それと職業によっても祀っている神や精霊が違っているな。ドワーフとか鍛治職の連中は火の神様とか祀ってるし、ウチはアレイア様も祀っているが漁村だから海神『セイダン』様をお祀りしている。」

 

 ヤマトノ国は多神教で様々なものには神が宿るとされており、食品や雑貨、果ては魔獣や魔物ですら『荒神』として祀る風習 がありましたが、この辺りの国は代表的な神様をそれぞれ祀っているようです。

 

 「ふ〜む…巫女と言うのは神職で戦を生業としている者達のことなのか?」

 「いや、基本的に巫女とは神事における宮司の補佐や神様達への奉納をしたり神託を受けるのがお役目じゃ。私たちは加護を得て『魔装機兵』を駆る事ができる故、軍部に招集されたもの達の集まりじゃ。」

 「なるほど、ではタケオ君も『巫女』と言うことかね?」

 「ブフォ!…ゲホ、ゴホッ」

 

 ミゲルさんの突拍子も無い発言に白湯が気管に入ってしまいました。

 …ヒナタ様…肩を震わせて笑わないでください。

 

 「クク…『巫』は『かんなぎ』と読み神意を民に知らせる役割を持つ者の事を言うのじゃ。『巫』の『女』で『巫女』であるので、基本的に女性の職業よの。たまに巫女の女装しておる酔狂な者もおるが…」

 「ゴホン、巫女隊の方々と同じだなどと滅相もない!迷わk……恐れ多い……」

 

 美人揃いだけど脳筋で凶悪などS集団の1人として見られるなんて…女装もあなた方が面白がって…

 スッ…

 ゾクッ…

 

 「タケオや…何かあるのかぇ?ん?」

 「いえ、何もございません。」

 

 ヒナタ様の殺気のこもった流し目をいただき、何故か室内の温度が下がりました。

 村長さん達も口を噤んでしまいましたね…。

 話をもどしましょう。

 

 「僕の本業は鍛治師です。僕もアマノマヒトツ様やカグツチ様の加護を得る事が叶ったので魔装機兵を駆る事ができます。」

 「加護と言うのは君たちの様な若者や誰でも受ける事ができるのかね?」

 「いや、各方面で修練を積み神様に気に入られた者が受けれる恩恵である。私や巫女隊の面々それにタケオの様に複数の神様達から加護を受けれるのは希少なのじゃ。」

 

 ヒナタ様がその薄い胸を張り……お綺麗なお顔でドヤ顔…誇らしげにしておられます。

 

 …ごめんなさい…その氷点下の視線は物理的に刺さりそうです。

 

 「そ、そのお前達が所属していた巫女隊と言うのは精鋭部隊だったのだな。」

 「うむ!諸先輩がたの隊には及ばず、我が隊の隊員は5名と少数ながら自慢の仲間たちじゃ。『禍ツ神』の特殊な術により知らぬ地へ飛ばされた様であるが、私たちも無事だった様に彼女らも無事であろう…。」

 

 僕たちはこの漁村の近くに飛ばされたため無事に保護されましたが、他の方たちは無事でしょうか…。

 ヒナタ様も気丈に振舞っておられますが心配している様子です。

 

 「まぁ、あの連中は殺しても死なんから心配するだけ無駄と言うものよの。タケオや側で観ていたお主が『神討遠征軍』について説明するがよい。」

 

 全く心配していない上に丸投げしましたね…。

 仕方ありません。

 ここは1つ日頃の修練の賜物をお目にかけましょう。

 

 「かしこまりました。僭越ながら私がご説明させていただきます。」

 

 水を一口含み喉を潤したのち、演台と台掛けと扇子を取り出し…

 

 「え〜…本日はお三味線はございませんが、我々が従事した『神討遠征軍』について語らせていただきたいと存じます。…古来より!(パン!←扇子で演台を打つ音)、禍ツ物達との戦いに終止符を打つべく!(パパンッ)京の都に御坐す帝のの名により…」

 

 気持ちよく語り始めた所でヒナタ様から「待った」がかかります。そこは「待ってました」と言っていただく所かと思いますが…。

 

 「まてまてまて、タケオや最近お主がハマっておる『浪曲』で語られた所でここには『掛声』を知る者はおるまいよ?それに独特の言い回しでは理解もされまい?ん?」

 

 言われてみれば…村長たちは唖然とされておられます。

 こりゃ失敬…。

 

 「それは…何処から出した?」

 「空間魔法でしょうか?」

 

 どうやら神層空間から演台などを取り出した事に驚いておられた様子です。

読みづらいかと思いますが、生暖かく見守ってくださいまし。

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