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同日 横須賀線車内
第二特別区中央駅から出発したと電車内は、女子高生たちの声で溢れていた。
本日、花菱女学園では球技大会を開催され、午後の早い時間にはすべての競技が終了し、今は鎌倉や横浜まで出向いて打ち上げをしようというクラスや、グループが多い。
かくいう私もそういった中の一人で、本来なら友達と楽しいおしゃべりをしたいが、さっきの出来事が頭の中で何度も繰り返されていて、周りの声が全然耳に入ってこなかった。
「それでさぁ、沖田先生がさぁ、って聞いてんの星良」
「…えっ!?えっと……ごめんなさい、聞いてなかった」
「もうっ!どうしたの?さっきからぼーっとしてさ」
「えっと…ちょっとね」
おしゃべり好きな友達の京子ちゃんに問い詰められたが、私は何と言っていいか分からなかった。
「それがさぁ、星良ってば一目惚れしちゃったみたいでさ」
「ち、違うから、そういうんじゃないから」
私は隣に座る真理愛ちゃんの言葉を、慌てて否定する。
「え、ウソ、誰、誰よ!?」
「だ、だから違うんだって」
「えっとねぇ、さっき電車乗る前に―」
「真理愛ちゃん!」
「いいでしょ、別に」
「ダ、ダメじゃないけど、なんか恥ずかしいし」
結局その後、真理愛ちゃんに駅前での帽子を飛ばされた時の話をされてしまった。
「へー、新しい教官ねぇー」
「そ、そう、教官なの。だから、ちょっと挨拶しただけだから」
「でも、あれからずっとあの教官のこと考えてるんでしょ」
「いや、そんなことは、ない、わけじゃない、というか、ちょっとはあるかもしれないけど…」
確かに、あの人の優しそうな、それでいてどこか悲しそうな、そんな笑顔が頭の中に焼き付いて離れないが…これが一目惚れというものなのだろうか?
まだ、ちゃんと恋もしたこのない自分には、わからなかった。
「へー、禁断の恋だねぇ」
「こ、恋とかじゃないから、多分…」
「あーあ、ついに星良にも春が来たかぁ」
「もう、違うんだってばー」
私はこの後も、打ち上げが終わるま友人にいじられ続けた。