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いきすぎた健康は異世界チート。行きつく先は・・・  作者: ぼん@ぼおやっじ


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5-09 静かな異変。

5-09 静かな異変



 世の中には何かの拍子に人が変わる人間というのがいる。

 例えばハンドルを握ると人が変わるとかだ。

 

 危ない人で言うと拳銃のトリガーを握ると人が変わるというやつもいたりするらしい。幸い日本では見かけないが。

 どうやらクレオは『刃物』を持つと人が変わるタイプの人らしい。


 獲物の首を切り飛ばし、シュパッと血振りをして刀に頬擦り。マジやめてほしい。

 刃の形状が細かい波型なのでこのタイプは下手に擦ったりすると切れるのだ。自分が。

 しかしなぜか平気。

 こういう人は何か感覚的に刃物の扱い方を知っているんだろうな。


 よくテレビなどでナイフをぺろぺろしている変態さんが出るが、ああいう変態さんは変態さんなりの特殊技能のようなもので自分が切れたりはしないのだろう。

 たぶんそう言うものなのだ。


 しかもクレオは能力が高い。

 たぶん知覚系のスキルを持っているのだと思う。


 自分を中心として二mか三mぐらい。その範囲内で動く物を正確に察知しているように思われる。

 実に頼もしい。

 頼もしいのだが…この子に(カタナ)を預けてはいけない気がする。


「あーん、あたしのかたなーーーーっ」


 いや、君のじゃないから。

 取り上げるのに苦労したよ。


 ただ危ない人なりに良識ある様で、必要が無ければ刀を振り回さないということが分かったので翌日また刀を貸し出した。

 クレオが獲物を切り、俺が回収して解体する旅は続く。

 いつの間にか立場が逆になった。


 ◆・◆・◆


「ディア様、何かいるよ」


 刀の一件以来すっかりフランクになったクレオがそう言って前を指す。

 俺も当然気が付いている。


「なんだろう…石でてきた案山子かな…」


「精霊だよ。モース君のような高度な精霊じゃないけど、下位精霊ぐらいかな…」


「え? あれが精霊なんだ…」


「まあ、あれがっていうか、環境や本人の趣味で形とかすごいまちまちだからあれがというのは変なんだが…まあ精霊だよ。土属性だね。

 敵じゃないから刀から手を放そうね」


 いつでも抜けるように鯉口切っているし。


《ノゾム オタスケ キュウエン コノサキ ハハ ホロブ》


 一応意思の疎通ができるから下位精霊。で、コミュニケーションがかなり怪しいのであまり力の強くない子だ。


 助けてほしいという意思が伝わってくる。

 ただ通訳が居るから心配はいらないのだか…


《どうもこの精霊の親にあたる精霊がピンチの様であります。救援を求めているのでありますな。なんでも力が枯渇してこのままでは崩壊しそうなのだそうであります。

 このあたりもその精霊の勢力範囲のようで、この精霊は親精霊から分化した子株でありますな。吾輩たちの力を感じて助けを求めに出てきたようであります》


「了解した、どこに行けばいい」


《アンナイ スル スル》


 大地の下位精霊は案山子のような一本足でゆらゆらと揺れながら俺達を誘導していく。

 進行方向からは右にそれた道だが、精霊が助けを求めるということは世界のバランスに何かがあるということだから行かないわけにはいかない。


 モース君もわきまえたもので背高牛を操ってゆっくりと付いていく。

 行くのだが…


「遅いな」


『まあ、下位精霊ですし、しかも形状があれでありますから』


 知性も人間の子供か犬猫みたいな感じでとにかくだーっと行ってしまう。

 以前あった下位精霊は球形に近かったからものすごい勢いで走って行ってしまった。それを追いかけるとそれが面白くて目的を忘れたりする。下位精霊というのはそう言うものだ。


「しかしなんだな、造形的にもうちょっと…」


 形は案山子、スケアクロウマンなのだからこう顔が丸くて、へのへのもへじで、手は両側にまっすくで、その時に五本指の手袋感があって…

 胴体もこう巻藁みたいに膨らんだ感じて…足は一本で…ピョンピョン跳んだりするとそれっぽい。

 

 俺は勝手な想像でくすくす笑った。


《偉大なる方~感謝を~我は~少し確立した~》


「あれ? ちゃんと案山子になってる。イメージ通りの麦わら帽子までかぶってる」


《マスターが定義したせいでありますよ。精霊は長い年月で自然や人に少しずつ定義されて形をなし、形が決まっていくと知性も高まっていくものであります。

 マスターが妄想したせいで成長が早まったようでありますな》


 マジか!?

 精霊にそんな性質が…


『あれ、それじゃひょっとしてモース君のかわいらしさやかっこよさに磨きがかかっているのって…』


『マスターのせいでありますな』


「マジか!?」


 いや、少しずつデザインが洗練されていくような気がしていたんだ。ただ漫画家だって画風が変わるっていうのはよくあるから、デザインが良くなっている分にはいいかなと放置していたのだが…

 その漫画家が俺だったとは…

 するとあれか? もっとかっこよくして、新機能を搭載したりとかできるのか?


《いえ、そこら辺は勘弁してほしいであります。ただ吾輩も成長しているでありますからあと一〇〇〇年位で大精霊に進化できるかもしれないであります》


「おおーって気が長いな」


《あっという間でありますよ》


「それじゃあ、あの精霊虫もその内進化するのかな?」


 俺はわさわさした可愛い奴らを思い出した。


《吾輩たちがよく呼び出す連中は、すでにかなり成長というか変化はしているでありますよ。ただ見た目が変わらないのはその見た目をマスターが是としているからであります》


「そっかー。あれは可愛いものな~」


《まあ…そう言うことであります》


「あのー、置き去りにしないでほしいんだけど…」


 モース君と話し込んでいたのでクレオが所在無さげだった。

 モース君が姿を現しているので俺が会話をしているのは分かるのだろうが声に出さなくても会話が通じるので半分ぐらい思念会話になっているからな。会話自体は分からないのだろう。


 一応理解できるかどうかは別にして説明をしてみたらすごく感動していた。知らないことを知るというのは素敵なことだと言って。

 まったく同感ではある。未知によってもたらされるsense of wonderは素晴らしいのだ。


《マスター…》


 しばらくするとモース君が厳しい声を発した。

 俺も気づいている。

 このあたりは変だ。


 スケアクロウマン(名前は確定でいいや)も不安げに周りを見ている。


《少し前 より変》


 うん、確かに変だ。

 平たく言うと大地の持つ生命力がだいぶん減っている。

 なのに道の脇にある畑は青々とした実りをこれでもかと湛えている。


「おじさん、豊作だね」


 俺は畑で働くおっさんに声をかけてみた。


「おう、旅の人かい、見事だろう? ここ三年この村は豊作続きさ」


「なにか秘訣でもあるんですか?」


「そりゃー…分からん。ワシには分らん。がまあ、領主さまのくれる肥料を巻くと豊作になるんだわな…」


 ふむ、ここの領主はだれだったか…


「確かキルトム男爵だったかな…男爵領だからせいぜい町内レベルの大きさだったと思ったけど…」


「そんなに小さいんですか?」


「小さい小さい。このあたりは魔物も少ないし土地も肥えているから貴族といっても農家の親玉みたいなものなんだよ。国から爵位を貰って食料生産に勤しむ、そう言う人たちだ。

 男爵位とか准男爵位に上がってきた人たちの最初の御奉公みたいなものだな」


 伯爵だの侯爵だのになると国の重要な拠点の運営などを任されたりするのだがこういった小さい領地はひたすら農業だ。

 こういった穀倉地帯で作られた農作物が国中に送り出されていく。

 俺が最初に訪れたアデルカ周辺も有名な穀倉地帯だったがこのあたりも生産量はかなりのものだ。


 そんな農地をゆったりと進んでいく。


《村が見えてきたであります》


「よし、あそこでとりあえず聞き込みだな」


 これは放っておいてはいけないものだ。



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