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4-15 王女様が来たぞ。

4-15 王女様が来たぞ。



 ノッカーというのはちょっとあこがれがある。

 なんというかクラッシックな浪漫があるのだ。

 この国では竜にちなんだノッカーが多い。


 そのノッカーが『コーンコーン』とよい音を響かせた。

 どういう理屈か三階の部屋まで響く音だった。


 だが三階から、玄関まで出て行くのは大変だ。『はーい』という訳には行かない。さすがにキャンプ道具の中にエレベーターはなかった。

 

「やはり従業員は雇わないとダメか?」

「うん、そうだね…」


 一階が商店と工房なのだがこの世界にはショーウインドウがない。店とはいっても入り口は普通の玄関になっている。まあ普通の家屋よりは立派で大きいというのはあるのだが。


 中に入ると少しお店らしくなる。

 最初のフロアは大きめの部屋で、そこに商品がしまわれた棚や、商品を飾り付けた人形などが置いてある。

 さらに少し奥にはソファーがあって、普通のお客様はここで対応する。


 これから先、シャイガさんが工房で仕事をする様になるだろう。

 エルメアさんは主婦なので基本三階で仕事をするのだが、あの人のことだからたぶん多くの時間を狩りだの修行だのに費やすことになる。

 ルトナとフフルはフリーダムなので考えるだけ無駄。

 俺をアテにされても困る。と言うのが現状だ。


 状況を鑑みればどうしたって接客要員は必要になる。お店部分に常駐してお茶などをだす人と言うことだ。


「すまないお待たせした」

「あっ、クラリス様」


 玄関に立っていたのはクラリス様だった。

 ええのんか次期国王!


「あらあら、おジャマしますね」

「ようこそ、いらしぇられました」


 シャイガさん噛んだ。


 すぐに店内に案内する。彼女の目的はやはり第一にサリア姫だろうけど、店内に入ってその作りにしばし心を奪われた様だ。

 胴体だけのマネキンが置いてあり、それがブラジャーと、そしてセットになったパンツをはいている。

 見栄えのよいものばかりだ。

 さらにはキャミソールやベビードールなどもディスプレイされていて、女の人ならちょっと目を奪われるかも知れない。


 他にも外の窓から見えるマネキンは抜群のスタイルで綺麗な洋服を着せるようにしている。


「わあ…大分形になってきましたね…」


「はい、入れ物だけは」


 と俺が言う。


 クラリス様はふむと頷いてにっこり笑った。


「やっぱりディアちゃんは賢いわね…従業員の手配はどうなっているのです?」


「はい、一応考えてはいるのですが、自分達は王都では新参ですので」


 冒険者ギルドや服飾ギルトに人を紹介してくれるように話はしてあったらしい。しらなかった。

 だがやはり見たことも聞いたこともない商品に全く知らないヤツがやる店。しかも俺達は冒険者であって職人として活動してきた訳ではない。

 冒険者ギルドが紹介してくるのは日雇いのような低ランク冒険者。服飾ギルドは今は人手がない。と言う返事だったようだ。

 やはり馴染みの店を優先させるのは当然で、しかもこの世界何も無いところから新たに職人を目指そうなどと言う人は珍しい。

 なぜならこの世界の就職のほとんどが縁故採用だからだ。

 職人になりたい若者が居ても親の紹介や親類の紹介で、すでにある店に縁づけられる。なかなかここまでは回ってこない。


「分かりました、そちらは任せてくれる? 実はそういう人に心当たりがあるの」


 クラリス様の頼もしい言葉にシャイガさんは頭を下げた。 

 後日送られて来るのが生活の術をさがしていた下級貴族のご令嬢だったり、引退した高名な執事さんだったりするのだが、そしてかなりビックリするのだがこの時点ではそんなこと夢にも思っていなかった。


 ◆・◆・◆


 その後三階にあがってサリア様をお見舞い…しようとしたのだが現在入浴中でした。

 我が家は二十四時間何時でも風呂には入れるんだ。


「えー、うらやましい」


 とクラリス様はおっしゃる。王宮もお風呂は当然あるがさすがに二十四時間沸かしっぱなしにはしない。もったいないから。


 で少し邸内を案内することにする。


「これひょっとして給水の魔道具?」

「ハイそうですよ」


「これ魔導コンロよね」

「あたりー」


「こっちは?」

「魔導レンジと言って、料理などを温める道具ですね」


「これは?」

「ティーメイカーといってお茶などを入れると自動的に最適な味、温度に整えてくれる魔道具?」


「これは?」

「供魔機という道具で魔石を放り込むとこういった魔道具に魔力を供給してくれる機械です」


 おい、昔の人、お前らキャンプを根本的に勘違いしているぞ。

 こんな物使うんならおとなしくホテルに泊まれや!


 説明しててなんだか理不尽な怒りを覚えたよ。


「ねねねねね、これどうしたの?」


 クラリス様の顔が好奇心に輝いている。

 それを見た俺は閃いた。

 うん良い考えた。


 俺はクラリス様をおいてみんなを呼びに走った。


 ◆・◆・◆


「こここ、これどうしたの?」


「もらいました」


「だだだ誰に?」


「彼に」


 俺はモース君を紹介した。


『お初にお目にかかるであります、モースと申すであります』


 今日はスーツを着ていない象さんモード。背中に小さな翼の生えたぬいぐるみの像みたいな格好だ。蝶ネクタイだけしてぱたぱた飛んでいる。

 俺のイメージの影響を受けて少しずつ変異しているみたいだ。


 そして精霊というのは普通は見えない存在なのだがモース君は実体化できるほどに能力が高い。実体化すれば誰にでも見えるし話もできる。

 ちなみに触ることもできる。


 俺はモース君のお腹をプニプニともんだ。もちもちしたぬいぐるみみたいで非常によい。


「ええっと…」


「上級精霊です。友達になりました」


「えええっ、神様じゃない…」


「は?」


 ここで衝撃の事実が判明。

 この世界の国や地域は守護神という物を持っている。信仰の対象である神とは別に、身近で自分達に協力してくれる力ある上位存在を神として祭っていたりするのだ。


 話を聞くと上級精霊や英霊を祭っているようだ。


 そこでつらつらと考えてみる。

 モース君は水と地の精霊で豊穣とか利水とかに大きく関与できる力がある。


 なるほど、これなら土地神として祭られてもおかしくはないかも知れない。

 はー、ほー、モース君は神だったのか…

 まあ地球で暮らしていた俺が想像するような無謬で絶対の存在と言う訳ではなくもっと身近な田んぼの神様とか、泉の神様とかそんな身近な存在なんだろうけどね。


 一応拝んどくか?


『何を言っているでありますか…』


 モース君から秘匿回線で連絡があった。


『マスターもそういう意味では神でありますよ?』


『は?』


『地獄を持ち歩き、咎人を直接地獄に落とし、哀れな魂を冥府に送り届ける』立場的にはアメノメイヤノミコト様の従神と言う扱いですか?』


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・マジか?


 ものすごい衝撃だった。

 英霊ってそんな存在(もの)なのかよ、聞いてないよ…


 でも考えてみたら大した事はできないからどうでもいいかと立ち直る。俺のできることなどやはり人間のレベルを超えてないよ。


 その間、モース君は以前の打ち合わせの通りに説明をしてくれた。

 対象は魔導車、コンテナの前につける自動車部分だ。


 内容は地中に埋まっていた物を俺に譲ったという物で、そのときに封印されて消滅しかかっていたところを俺に助けられたのだと説明をかました。 まああながちウソではない。


 そしてしばらく俺に取り付くことにしたのだと。

 神様が身近なこの世界は神様の意向というのは重要で、モース君が俺に取り付くというのであればそれを妨げるようなことはない。らしい。

 かくしてモース君の存在はアリオンゼール王家の知るところとなった。公認とは言わない。モース君の方が立場が上だからだ。

 これに関してクラリス様も何も言わない。だが何か考えてそうで怖い。


 さて魔導車の方だがこちらも高性能だ。

 と言うかこちらこそは高性能だ。


 先ずジェネレーターが搭載されている。

 かなり上質の魔石が必要だが少量でかなり効率的にエネルギーを精製できる。効率で言えば現在使われているどんな物よりも高性能。

 王家なら用意できる物だし、ビー玉ぐらいの魔石で一〇年ぐらいはフル稼働できるらしい。


 デザインはレトロで、まあここの人から見ると最先端なのかも知れないが重厚な箱馬車のキャビン部分をそのまま車にしたような形で、後輪は棘の付いたカバーで守られた大きな物で、前輪は前に張り出したフレームっぽい小さめの車輪で、御者台の所にハンドルがあって、自動車のようにうごく構造だ。


 御者は屋根はある物の外で操縦するのか…たいへんだなあと思っていたら御者台、なんかバリアで守られてました。

 というか車全体がうっすらバリアで包まれてました。


 内部はコンテナと違って一つの部屋で大きさはたぶん四十畳とか五十畳とかそういうレベル。

 そこにキッチンやバーカウンター、ソファーにテーブル。直に座ったり寝転んだりできるスペースがパーテーション切って配置されていて、一つのマンションのような構造になっている。もちろんトイレもシャワーもお風呂もある。


 モース君のことを振り切ったクラリス様大はしゃぎ。


 さらに後部には俺の空間収納と同じような構造のトランクルームがあり、00番から99番までの100のボックスを切り替えで開くことができて、ボックス一つの大きさは幅二m(これは車体の幅)、奥行き三m、高さ二、五m程で、時間停止機能付き。


 これはかなりの収納力だ。

 まあ輸送力ならコンテナの方が上なのだが、向こうは時間停止機能がない。なんと言っても人間が中に入って活動できる倉庫だ。

 たぶん用途の思想が根本的に違うのだろう。


「てぃあちゃん…」


 おれは『てぃあ』では無いのだが…


「これ本当にもらっちゃって良いの」


「良いですよ」


 と言うか押し付けたいので持っていって下さい。こんな物平民がーーあっ、一応貴族かーー持っていると絡まれるに決まっている。

 使えない物を死蔵していても邪魔なだけだ。

 こっちの空間収納だって一〇〇個しか収納できないんだから…それに時間停止機能のある異空間収納は同じ異空間収納の中だとまともに機能しないらしいのだ。

 なにかが干渉するんだろう。


 俺はこの大物と一緒に余っている魔道具をクラリス様に押し付けた。シャイガさん達もこんな物どうしようも無いと思ったようで反対はなかった。

 ただフフルはおしがっていた。

 何でもこの魔導車に乗って荒野をホライゾンに向けで爆走したかったらしい。旅猫はそういうのに浪漫を感じるのだと言っていた。

 エルフがカッ飛んでいるのを見てうらやましかったのだとか…

 妖精族ってまともなの、いねえんじゃねえのか? 困った奴らだ。


 さて、魔導車に頬ずりするクラリス様を引きはがしてサリア様の容態の説明をしょうかね。


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― 新着の感想 ―
[一言] 「ティーメイカーといってお茶などを入れると自動敵に最適な味、温度に整えてくれる魔道具?」 敵ってなんですか的ですよね?
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