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いきすぎた健康は異世界チート。行きつく先は・・・  作者: ぼん@ぼおやっじ


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4-07 始まりの迷宮② 吸血蛇さん

4-07 始まりの迷宮② 吸血蛇さん



 俺の目の前で首を切られた飢犬が血を搾り取られていく。なかなか残酷な光景だが、狩猟などで生きていると考えれば普通なのだろうし、そう言うことは気にするとここでは生きていけない。

 だからいいのである。


 これが普通なのだ。だが普通でないものも見える。


 この世界にあるどんな存在ものもエネルギーを持っている。魔力とか源理力とか呼ばれるものだが死んだ魔物の身体からそのエネルギーが抜けて周囲に広がっていくのがみえる。

 しかもその一部がそこにいるみんなの中に吸い込まれていくのも見える。いや、見えるようになった。

 経験値的な物だろうか?


 この世界にはレベルなんて便利なものはないのでそれにどんな意味があるのかわからないがそう言うこともあるということだ。

 それに魔物から溢れた力はそのまま薄く広がり、出口に向けて流れていく。


 この迷宮の中で感じた風のような流れはこれであるようだ。

 こうしていのちは巡っていくのだろう。


 ただ違うものもある。

 この迷宮の中にある力の流れの一部が俺に向かってきているのだ。

 俺の中に流れ込んで、そして俺の中のフラグメントに流れ込んでいく。

 この流れは何だろう?


「よし、結構絞れたな」


 シャイガさんは革の手袋に付いた血をはらいながらそう宣う。

 足元のバケツにはそれなりの量の血がたまっているようだ。

 この作業はシャイガさんとフロリカさん、ロッテさんが従事していた。エルメアさんたちはフロリカさんの血を使って『葉化蟲おびき出し作戦』を継続中。

 俺は運んできたバケツを出したきり表向きは役立たず。


 ここはやはり血抜きに貢献するべきではないだろうか?


『どう思うねモース君』

『ンゴ』


 寝てるし。


 まあいいや、血を抜く…血を抜く…注射器?


 うん、血を抜くというとそれが思い浮かぶな。入院中によくやられた。病人からこんなに血を抜いて大丈夫なんかいなとよく心配したものだ。

 つまりだ、中空になっている針をブスッとさして、こちら側の気圧を下げれば血は吸い取れるわけだよ。


 俺はデザインの魔法を起動して色々と形を作ってみる。エディターのような画面でいろいろとデザインをいじってみる。

 まずは形だ。構造は注射器でいいとして、あんなものを持っていってブスッというのはちょっと危ないかもしれない。

 となると…フレキシブルアームかな?


 幸いというかなんというか俺の左手は義手だ。しかも変形自在の液体金属。未来からやってきちゃってもいいレベルだ。


 しかも最近はモース君サポートのおかげでかなり普通の手と変わらないぐらいに動くようになっている。これも練習のたまものだろう。


 可動範囲を限定して動かす練習をしているとちゃんと動くようになるのだ。まあ人間も赤ん坊の時は思うように動かなかったものが成長すると動くようになる。その動きに即した神経系が構築されるからだ。

 この腕には当然神経などは通っていないがモース君に言わせると魔力の流れによる情報のフィードバックはあるらしい。つまり使えば使うほどよく動く様になっていくと言うことだ。


 つまりモース君と協力すれば自由に動くフレキシブルアームとかも作れるのだ。先端にに吸引用の針がついていて、獲物にブスッと刺さって、ずこーっと血を抜く形状の腕も作れるわけだ。


 こう自由にグネグネと…

 あれ、蛇みたいだな?


マスター面白いことをやっているでありますな』


 おおっ、起きたんかい。


『はい起きましたであります。なかなか秀逸な発明であります。これなら弱い魔物なら直接刺さって血を抜いてしとめることもできるであります。一度に三本ぐらいなら現状、完璧に動かせるでありますよ。

 あとはデザインでありますな。

 蛇なら…もっと生物っぽくするのはどうでありますか?』


『いやー、それはどうだろ…銀色のリアルな蛇…それが腕の先に、しかも三匹、うねうねと…ないわ~、どこのホラーやねん。逆に魔物と間違われて攻撃されるわ』


 もうちょっと幾何学的なデザインにするべきではないだろうか? 機械的とか…それなら何とかSFっぽくまとまるのではないだろうか?

 デザインをごちゃごちゃいじるがなぜか蛇っぽくなる。


『なかなか良いでありますな』


 うん、そうだよね、でも手自体がなくなるのも不便だからクローアームを兼ねるのはどうだろうか? こんな感じで…


 俺が提案したのは一見普通のクローアームだ。

 ひじから先が太くなって筒状で、先に三本の爪が付いている。


 これなら殴ることも掴むこともできる。


 太い前腕の一部外板が展開するようになっていて、これが展開するとそこからロッド状のフレキシブルアームが伸びるのだ。

 アームの先端は…結局蛇に似た形状で、獲物に食らいつきその牙を突き立てる。

 牙は注射器のように中空で、フレキシブルな本体は真空ポンプ。


 牙が刺されが一気に血をズコーッと引き抜けるのだ。

 うん、なかなかカッコイイ。


 SFだな、ロボだわこれ。嫌いじゃない、嫌いじゃないよこれ。


 さてあとは…


『お任せくださいであります』


 モース君の言葉と同時に左手のガントレット風の義手が変形を始める。形さえ決まればあっという間だ。普段はただの義手と化したクローアーム、三本の爪が凶悪にカッコイイ。そしてその外側から伸びるスネークロッド。


「ふっふっふっ、なんて凶悪な腕でしょう…」


 ぜひ試してみたい。


「あっ、なんか出た!」


 ルトナの声が聞こえた。どうやら撒いた血の匂いにつられて隠れて居た魔物が現れたらしい。俺はさっと左手を伸ばす。

 スネークロッドがスサッと伸びて数メートル先の魔物に襲い掛かる。


 ぱくんっ!


「草だね」


 スネークヘッドが咥えていたのは根っこを足代わりにして動く草様の魔物だった。あとで調べたら『五葉草』と呼ばれる大変レアな魔物だった。

 動く魔樹トレントの一種で、五枚の葉っぱを持ち、その五枚がそれぞれ違う魔法薬の素材となるという大変高価な魔物だった。

 噛まれた状態で『きゅぅぅぅぅっ』『くうぅぅぅぅぅっ』と動いていたがスネークヘッドで圧迫しつづけていたらすぐに動かなくなった。

 貰っておきましょう。


「ディアちゃんどうしたのそれ!」


 それ? どれ? これ?


 ああっ、周りが静かだと思ったら俺の腕にびっくりしていたのか…ロッテさん蛇苦手なのかな? 腰の剣に手をかけてシャイガさんに抑え込まれている。

 フロリカさんもびっくりしたのか固まっているようだ。まあ人間の腕から蛇が伸びていれば大概はびっくりするだろう。あまり生物っぽくならないように気を使ったのだが効果はなかったな。そもそも人の腕が蛇というのがいけないのだ。


 でも今まで俺の左腕の変遷を見てきた家族はなれたもので、シャイガさんは二人に俺の腕が変形自在の義手だと説明していた。


「おおーっ、ディアちゃんかっけー!」


 さらにルトナは拳を握って喜んでいるしエルメアさんはパチパチと手を叩いている。なれというのは素晴らしい。


「ちょっと改良してみました。今回のミッション攻略用です」


 俺は左腕をふらふらと振ってみせた。これを一も二もなくカッコイイと言える慣性が好きだよルトナ。


「蛇さんだね」


「いや、その名前はやめて」


 ガサリと音がした。

 俺は再び左腕をさっと伸ばす。二匹の蛇がシャッと伸びで獲物に食らいつく。

 獲物は兎だった。


「モノ・ミラージです!」


「気を付けて、危ない魔物よ」


 アルミラージと呼ばれる兎様の魔物の一種だ。別名突進兎。頭に一本の角が生えていてだから『モノ』。このタイブは気性が荒く、すぐに、誰にでも喧嘩を売る危ない魔物だったりする。戦闘力も低くない。

 この二階層の最強魔物。だからフロリカさんたちが警戒するのは当然なのだが、彼女たちが声を上げた時には俺の左腕のスネークロッドがモノ・ミラージに食らいついてその牙を喉と腹に打ち込んでいた。なんか動きも蛇っぽいな。


 そして蛇の胴体を構成する部分、その中にある空洞がピストンの原理で一気に真空に近いほどに気圧がさがる。

 モノ・ミラージがビクンと一度痙攣してぱたりと倒れた。


「毒なの?」


 ロッテさんの疑問もわかる。即効性の毒で死んだようにも見える。だが体内の血液を一気に失ったことによるショック死だ。

 しかしこれいいなあ…ものすごく便利かもしれない…


 俺はもう一つバケツを出してそこに吸い出した血を吐き出させる。みんな目を見張っている。モース君との合作、実にいい出来だった。満足のいく出来だ。


「うわーすごい、吸血蛇さんだね」


 いや、うん、そうなんだけど…その名前はね…

 ルトナ凄いぜ。


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