3-16 第四階層到達
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3-16 第四階層到達。
坂道は滑りやすく、何度か転んだすえにやむなく飛行に切り替えることにした。
空を飛んでいれば滑って転ぶ心配はないからね。
穴は一階層の天井近くにつながっているようだ。
その位置からはすぐ近くに大きな柱のように下まで届く巨大鍾乳石があり、キャットウォークのようなものでその鍾乳石まで移動できるようになっている。
そのままそのキャットウォークは柱の周りをまわる螺旋階段のようになっていてちょっと見分からないが一階層の床まで続いていた。
そしてそのすぐ近くに二階層への階段があった。
「前回見た階段と違うなあ」
おそらく下に続く階段は一つではないのだろう。
「それにしてもまっすくで…見事な柱だ」
まっすぐな柱を長い年月をかけで鍾乳石が覆ったように見える。
俺はちょっと興味を聞かれてその周りを廻ってみて…
ピコンピコンと視界の中で注意を引く何か。
「なんだべ」
『案内図を取得しました』
「・・・・・・」
意識に直接メッセージが届いた。
どうやらピコンピコンはそれを知らせるアラートだったみたいだ。
送られてきたのは驚いたことにマップだった。この施設の全容を記載した案内図。
なぜこんなものが表示されるのかわからないがそれを見る限りここは巨大なショッピングモールだったらしい。
七階層に及ぶ直径数百メートルの巨大なビル。
どうもそれがこの迷宮の前身であるらしい。
「つまりこの施設が地面に埋もれて迷宮化して空間とかいろいろ歪んじゃったと…」
ということなのではないだろうか。
現在の迷宮とは大きさがけた違いだがたぶんそうだろう。
そして俺が今いるところは地図によれば中央エレベーターシャフトの位置だった。
「うーん、このエレベーターが使えれば楽なのに~」
ピコン。『アクセス』
そんなメッセージが脳裏をよぎる。
そしたら次は柱が喋った。
『アドミニストレーター権限を確認。エレベーターのサスペンドモードを解除。・・・緊急事態を確認。権限に基づき施設の制御を一時管理者に預けます』
メキッというう音がしてガラガラと柱の一角が崩れたかと思ったらエレベーターのドアが口を開けた。
メインシャフト管理者用エレベーターであるそうだ。
マジか~・・・
「し・・・しかしあれだな、これで四階まで降りられればすぐに仕事が終わるんじゃないのかな?」
今回は一応下見という意味で…もし駄目そうならいったん戻ってと考えていたんだよ。
やっぱり各階層突破で四階層までというの大変そうだしね。
でもエレベーターが使えるなら話は簡単かもしれない。
「うーん、どうしよ…行っちゃう?」
こういうことを言うこと自体すでにその気になっている。
だってシャイガさんたちをごまかすにしたって限界はあるしね、もう日にちもない。目標の一週間まで今日を入れて三日だ。
今日帰ったとしても明日には何とかしないとまずいのだ。
「まあとりあえず乗ってみようか」
三階層以降はなんか長い時間いると死んじゃうそうだから、チャっといってチャっと帰ってこないと…
あれ? これが使えなかったらどうなってたんだ?
いきなり任務失敗か?
いやー、しかしメイヤ様が出来もしないことを頼むとは思わないしな~
そんなことを考えながらエレベーターに乗り込んだ。
制御方法は思念入力とでもいうのだろうか、四階まで行くように指示を出すとドアは閉まり、エレベーターは静かに動き出した。
「うん、どうやらこの施設自体はまだ生きているようだな」
案内図の説明を見ると施設の主要な部分は何か魔力的なコーティングが施されていて、魔導災害の際も完璧に保護されるようなことが書いてあった。
なんだよ魔導災害って。
しかしそんなことを考えていられたのもつかの間のことだった。
エレベーターは結構な速さで下に降りていく、そしてその表示が地下三階になった時それは始まった。
怖気だ。
あの嫌な感じがまたやってきた。
それは目には見えない何かだった。まるで空気そのものでもあるかのように忍び寄る。
そしてそれは明確な悪意を持っていた。
生に対する悪意だ。
冥精の持つ正しい循環のための死ではなく、生を憎むが故の破滅のみを求める悪意。
「なるほどな…」
俺は納得した。ここが第三階層であるなら、そして第三階層に来たものがこの悪意にさらされるならそりゃ長い時間いれば死ぬよ。
いや、違うか、死ぬことすらできずに終わるだろう。
この悪意に食い散らかされて、魂を凌辱されて、破壊されて、間違いなく終わるだろう。
「なるほどなるほど」
よくわかった。
これは存在を許してはいけないものだ。
だが同時に俺に耐性があることもわかった。
俺のまとう魔力のせいだ。それがどういう理屈なのかわからない、性質のせいなのかそれとも量の問題なのか。ただこの悪意は、邪壊思念は俺には取り付けない。
俺から数十センチの距離を置いてこの悪意は俺の魔力とぶつかり合い、対消滅を起こしている。
なるほどメイヤ様が俺に頼むわけだ。
俺でなかったら絶対に四階にはたどり着けない。
チーン。
と音がした。まあここまではいいのだが、その後で…
ガリガリ、ガラガラ。バコン。とか音が聞こえる。
ドアが開く際に何か邪魔になるものをぶっ壊している音だろう。
っていうか凄いなこのエレベーター。どんだけパワーがあるんだ?
そして開いたドアの向こうに見えたのはなかなかにスペクタルな光景だった。
◆・◆・◆
「これはまたおどろおどろしい…」
そう言えば一階層は明るかった。地下だからどこからか光がはいってくるわけではないのだが、とにかく物を見るのに支障はなかった。
だがここは真っ暗だ。
真っ暗な、そして大きなフロアの中に四角くエレベーターのドアから漏れる明るい光。すっごくホラーっぽい気がする。
そしてその光で浮かび上がる光景がまたキモイ。
天井から極彩色のつららのように鍾乳石が伸びている。天井の高さは数メートルという所だろう。そしてこの鍾乳石。極彩色で描き出された模様が人の顔のように見える。苦しみにもがく人の顔だ。
いや、それだけじゃない。
内臓のような模様や形、歪んだ女性器のようなもの。一もつのようなもの。数々のおぞましいもので埋め尽くされている。
これに対するのは床だ。
床から伸びるのは円柱の柱のようでそれが太く、細く、まるで上から来るそれらを迎え撃つように伸びている。
天井があのようなさまなのに地面はまともに土で出来ている。
そしてそれらの柱の間を飛ぶように流れる細い水の流れ。空中であるのに水が放水のように流れでまるでロープででもあるかのように形を保っている。
「そうか、これが結界か…」
俺は唐突に悟った。
よく観察すれば水のロープは柱を支えに空中に図形を描き出している。魔法陣のようだと思いつけばあとは簡単だ。
これがかの『ソウルイーター』という魔物を封じ込める結界なのだろう。
だがその水は弱々しく細く、今にも途切れそうでもある。
「少し補充してみるか?」
俺は異空間収納から大量の水を出して床にぶちまける。
それはあっという間に地面の浸み込み、そして水の流れ場少し太くなったように見えた。
「おお、やった。水が復活したぜ」
「よい水であります。良い魔力に浸され、ほとんど聖水と化しているでありますな」
うわっ、吃驚した。
いきなり後ろから話しかけないでよ。
俺は思いっきり飛びのいてけつまずいてこけた。
まだまだ修行が足りないな。




